借地権シリーズ第3弾です。
前回は、借地権を設定した場合の所得税の節税について見てきました。
今回は、相続税の節税についてです。
これ、論点が多すぎてかなり長くなります
対象となる土地が高額なため、それくらい慎重にやらなければいけない、とご理解いただければと思います。
【借地権に要注意! 第3回 相続税の節税について復習しよう】
相続税の計算時において、土地の評価は2段階で実施されます。
ここでは、1段階目の「財産評価基本通達」(以下、このページで「通達」)にのっとった評価から。
2段階目の「小規模宅地等の特例」を使用した評価は、次回に回します。
土地は、原則的には路線価を使って評価されます(=路線価方式)。
(奥行補正率などの各種調整はありますが、本筋から外れるので割愛)
自宅用の土地だったり、遊休の土地の場合は、路線価で求めた価額の100%で評価されます。
自分の土地の上に賃貸用ビルを建てた場合は、「貸家建付地」として、以下の算式で評価されます。
貸家建付地の評価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
(通達26項)
東京23区内であれば、大体以下のようになります。
貸宅地の評価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 0.9 × 0.3 × 1 = 自用地としての価額 × 0.73
大まかですが、自用地価額の7割程度の評価ということですね。
一方、同族会社が賃貸用ビルを建設したときは、借地権が発生し、その土地(底地)の評価は以下のようになります。
底地の評価額 = 自用地としての価額 - 借地権の評価額(= 自用地としての価額 × 借地権割合)
(通達25・27項)
東京23区内であれば、大体以下のようになります。
底地の評価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 0.9 = 自用地としての価額 × 0.1
なんと、自用地価額の1割の評価となりました。
ただし、上記の「借地権の評価額」は、同族会社の株式の価値に上乗せされます。
土地の価額100%を、土地 = 10% ・ 株式 = 90% に分割した格好ですね。
これだけなら、単なる分割ですから、節税にはなりません。
しかし、同族会社の株式を、(極端な例として)全て配偶者が持っていたらどうでしょうか?
自分の財産は10%部分のみ、配偶者の財産は90%部分です。
相続税は、財産が少ないほど適用される税率が低くなりますので、財産を分割した方が節税になります。
また、相続が2回であれば、当然基礎控除も2回分ですので、財産を分割した方が有利です。
株式全てではなくても、出資の段階で配分しておけば、その比率で財産を分割できるということですね。
(さらに、株式の評価額を下げる方法もありますので、上記90%部分も実質的にはもっと下がる可能性があります)
次回は、2段階目の評価について見ていきたいと思います。
早くリスクについて書きたいのですが、しばらくは前提知識の整理にお付き合い下さい。
高額な土地の評価は、それくらい慎重にやるべき、と思いますので。
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東京都中央区の若手公認会計士・税理士