【オニオンファイツ】

【オニオンファイツ】

創る!造る!増える!増える!

見渡せばたくさんの・・たくさんのどころではない超大な量の観客が見つめている


勿論自分の事を


トーキック、かち上げ式エルボー、ボディスラム


スパイスとしてドロップキック!それも空中を泳ぐ龍魚の様に美しいヤツを1発叩き込めばそれで、会場の空気は全て俺のものだ


スポットライトの光量を跳ね除けるくらいには俺は光を放っていると言えるだろう


今日も誰を倒したかなんて覚えちゃいない、リングに沈んだ汚物を見下ろすのは嫌いだから


そう情けなく路地裏を這いずる昆虫の様な存在を見ていられないから


昔の自分の様で・・



バーリトゥード系加盟15惑星の一つ中央惑星「ニューサン」のB.Bスタジアムのリングで試合を終えたのは


端正な顔立ちにゴールドのアイマスクと金髪、足の長い長身のスタイルの良いルックスをしている


名前は「インゴッド」と言った


新進気鋭のこの男、宇宙レスラーの資格は持ってはいないが実力、人気共にメインの試合を食ってしまう程のスター性を爆発させている絶賛売り出し中の逸材だ



シャワーを浴びて控え室に再び戻ったインゴッドだったが、誰もいないハズの控え室に気配を感じて首筋に悪寒が走った


インゴッド「俺の控え室に無断で侵入した罪は重い!キサマに・・」


インゴッドが言い切る前に天井からしゃがれた声が遮った


「血の雨を降らせるってかぁ〜?あぁ?どうなんだよ降らせるのかぁ?」


インゴッドが天井を見上げると顎髭を多量に蓄え、卑屈な目つきをした昆虫の様な男が天井にへばりついている


「自己紹介させてもらうぜぇ〜!俺様は魔道!見ての通りバグタイプ(昆虫星人)よぉ〜」


インゴッドの右手から金色に光スモーク状の何かが噴出する


慌てる魔道


魔道「ストーップ!ストップだぁぜぇ〜」


魔道「両手から金粉を出して凶器を精製する特技があんのは知っているぜぇ」


魔道「黄金の剣で俺様をぶった斬ろうってか?あぁ?」


金粉の噴出を止めて控え室のドアを開けるインゴッド


インゴッド「出ていけ。2度言わせるなよ。俺の言葉は無料じゃねえ」


ガンッ!


次の瞬間控え室に立つインゴッドの背後のロッカーから別の男が飛び出して、インゴッドの背中を何か鋭い物を突き刺した!



15の加盟惑星により形成される、闘いの惑星系「バーリトゥード系」


その中の一つ「中央惑星ニューサン」


中核(中央)惑星惑星として、人工的に建造されたこの惑星の惑星誕生より一度も停止した事の無い拡張工事が・・


この日止まった


近年、惑星アイデンティティ、治安係数共に下落の一途をたどるバーリトゥード系


多量に流入してくる不法移民星人達による資源の枯渇や、犯罪件数の増加による宇宙刑務所(コスモプリズン)キャパオーバー、外宇宙からの新略等、数えきれない大事に比べれば些細な事


そう中央惑星の拡張工事が停止した事等、大した問題に映らないかもしれない


しかし、バーリトゥード系に住む一部の者達にとってはそれは計り知れない重大な意味を含む


バーリトゥード系絶対支配者である双頭の絶対王者B.Bチョップ肝入りの政策を途中中断する事は、すなわちB.Bチョップの身に何か良くない事が起きた事を示すのだから


惑星「ニューサン」中央部に聳え立つツインタワーでありるB.Bタワーの東棟43階会議室にて


独り、広い肩幅に横並びの4つの目を持つ、イカに似た男「ゲソ・アレクサンダー」はその大きな体躯に似合わない小さな頭を両手で抱えてしゃがみ込んだ



その背後のドアを開いて現れた三つ目のバイザーにイボだらけの大男はB.Bチョップの実弟にして、バーリトゥード系宇宙警備隊隊長を務める「ジャンボォ」だ



ジャンボォが穏やかな口調でゲソに話しかける


ジャンボォ「ゲソ・アレクサンダー君!分かっていると思うけど、B.Bチョップが倒れた事は非常に非常事態だよ!」


四つの涙目をジャンボォに向けるゲソ


ジャンボォ「しかし、その事は多くのバーリトゥード系星民にまだ悟られてはならない!」


ゲソ「しかし、しかし、ジャンボォさん。ボス(B.Bチョップ)が意識不明の今、バーリトゥード系の基盤は崩壊したも・・」


狼狽えるゲソに対してジャンボォは冷静だ


ジャンボォ「とっくにだ!とっくの昔にこの惑星系は機能を失っている!つまり既に崩壊していると言えるだろう!」


ジャンボォ「兄が聞いているならばと口にしなかった発言だが、先の「宇宙レスラートーナメント予選」にて、バーリトゥード系の治安及び、アイデンティティの要である「宇宙レスラー」の大半を失ったその時から崩壊しているのだよ」


黙り込むゲソ・アレクサンダーに対してジャンボォが続ける


ジャンボォ「ゲソ・アレクサンダー君!兄に、いやバーリトゥード系絶対王者の身に不慮の問題が生じ、統制が図れ無くなった時にすべき事は聞いているかい?」


ゲソが遠い記憶をこじ開け、不確かな記憶を探るように小さな声で呟く


ゲソ「こ・・コードジャイアント・・発動?ですか」


ジャンボォが穏やか笑みを浮かべた


ジャンボォ「それだよ!今我々2人は速やかにコードジャイアントを発動しなければならない!」


ジャンボォが会議室の机に静かに置いた小さな長方形の金属ボックスにはBと刻印された一つのボタンの様な物があった


ゲソ「コードジャイアントとは一体なんなのでしょう?」


ジャンボォ「正直僕もこのボタンを押すとどうなるのか、何が起きるのかは予測もつかない」


ジャンボォ「だからこそゲソ・アレクサンダー君にも立ち合ってもらいたいわけさ」


カチッ。


そう言うや否や、ジャンボォがボタンを押した


ゲソ「え?いきなり?」



宇宙レスラートーナメント予選  終了後

中央惑星「ニューサン」

バーリトゥード系、加盟惑星の中で最も、治安係数が高いこの惑星の舗装された道を、

早朝からジョギングする一人の男が快晴の空を見上げて思う

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ポッキー「(俺、なったんだ「宇宙レスラー」に!)」

ポッキー「俺!とうとうなったんだ!宇宙レスラーに!!なったんだ!なったんだぁぁ」

ポッキー「そして、そして、そして予選まで通過出来るなんて・・なんて奇跡なんだ・・うっ・・うぅ・・」

ポッキーはいつの間にか涙を流しながら走っていた

ポッキーが通り過ぎた後、高層ビルの壁面にもたれかかり一人の男がつぶやく

アンノン「カカカカッ!本戦前に不慮の事故で誰か葬ってやろうと思ったのによ・・」

アンノン「今日は義手の調子がイマイチみてぇだ・・悪運のつぇぇガキだな!」

アンノン「カカカカカカカカ!」


ジョギングしながら、ポッキーがたどり着いたのは

中央惑星「ニューサン」秘密の地下施設

ガンッ!ガンッ!ガンッ!

完全閉鎖独房の壁を、内側から叩く音が響き、巨大な怪物が暴れている様子が防音壁を介しても伝わるようだった

看守が困り顔で訴える

看守A「日に日に酷くなってます・・。惑星「ニューサン」の良心と呼ばれていた人物とはとても・・」

相談を受けたポッキーの表情も困惑気味である

ポッキー「ジャンボォさん・・」






宇宙レスラートーナメント予選  エピローグ2

終了