恋愛感の変化 | 思い出の彼方

恋愛感の変化

大学生活にも慣れてきた頃、
私の恋愛感は、大きく変化していった。

それには、いくつかの伏線があった。

ひとつは、成就しなかった恋の反動。
熱い思いが、たった一瞬で壊れたこと・・・
恋愛に無防備だった自分が、
人生で初めて、
現実を受け入れた。
そして、無意識に、
防御する手段を求めていた。

もうひとつは、母親の不可解な行動。
経済的に不安定だった私の家庭では、
夫婦喧嘩が絶えなかった。
そんな環境の中で母親は
常に、無条件で、絶対的に、
正しい存在だった。
そう信じて、疑わなかった。
パートに出ていた母親は、
あるときを堺に、
早朝、父が出勤したあと
電話でこそこそと、話をするようになった。
夜の帰りも、遅くなった。
息子の視線が気になったのか、
公衆電話で人知れず長話をしていた。
母親の女性としての側面が、
こんな形で認識されるとは、
夢にも思っていなかった。

そして、
私の純白な恋愛のキャンバスは、
何のためらいもなく、
鮮やかな彩りを求めて、
自由に走りはじめた。