トルーマン・カポーティの「冷血」を読みながら妄想しないわけにはいかない、高村薫さんの「新冷血」(現在連載中)。連載にはまったく目を通していない状態で、ものすごーく勝手なことを書きますので、どうぞ悪しからず・・・。m(u_u)m

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犯人

「冷血」は思ってた以上に犯人側に重点を置いた小説でした。ずる賢く根っからの悪党ディックと知性に恵まれながら鬱屈した闇を心に持つペリー。どちらかと言うと水と油なのに、大きなヤマを当てるためにタッグを組み、そこに奇妙な絆が生まれ実際のところ非常に馬が合っていたのだと思う。本人たちは憎み合っていたけどね。それでも離れてしまうと懐かしさを感じてみたり・・・本当におかしな二人でした。でもこの危うい関係は読んでいてとてもリアルだなと感じていました。おおよそ刑務所で知り合っただけのなんら深い感情も持たない男二人が、犯罪だけで繋がっている。その希薄さが余計恐ろしいのですよ。

そしてもうひとつ。ディックは少女性愛者、ペリーは同性愛者。どちらも幼少期に受けた心の傷から深い深いコンプレックスを持っているんだよね。この辺はペリーの方が丁寧に描かれていて興味深い。調べてみるとどうもカポーティ自身、同性愛者のようなので思い入れが強いのではないかとのことでした。

こういう風に書くと、ものすごーく妖しいものを期待できそうですが、「冷血」では萌えはないです!この辺、高村さんの「新冷血」では犯人たちがどのように描かれるのか非常に楽しみです。被害者側、加害者側双方ともにかなり突っ込んで描かれるんじゃないかな。

刑事

事件を担当するデューイ捜査官は合田刑事ということになるでしょう。彼は容姿端麗で理解のある妻と二人の息子の家庭にも恵まれた、精神的にも非常に安定したキャラとして登場します。えー、合田さんとはかなり違いますねあせるあ、でも、事件のこととなると頭がそれで一杯になってしまって周囲に心配されるなんてところはちょっと似てる?!

まあ残念なのは、デューイはそれほど出てこないという点で、ここは高村作品の方に期待するしかありません!一応合田さん主役ですからね。「冷血」でも4人の部下を使って色々捜査に手を尽くしておりますので、その辺「新冷血」ではどのくらい部下との絡みがあっててこずるのかって感じです。「冷血」では意外と犯人の逃走期間が長いんですよね。

欲を言えば、デューイと家族とのエピソードの部分を加納さん登場で補ってほしい!!!

裁判

犯人逮捕後は粛々と犯行当時の状況やら精神鑑定やら陪審員やらの話が展開します。ここは一番の力の入れどころでしょう。アメリカらしく犯罪心理学とか精神分析など専門的な知識でもって犯人たちの行動を理解しようとしていきます。このあたり、「新冷血」ではどんな手法で明らかにしていくのかとても楽しみです。

「新冷血」の時代設定だとまだ裁判員制度は始まっていないので、裁判がどのように描かれるのか、はたまた描かれないのか未知ですが、この辺で判事となってる加納さんが事件とは関わりなしにでも合田さんと意見を交わすなんてことがあったりしたら、う・れ・し・い!

ディックとペリーは同じ日に絞首刑に処せられますが、「新冷血」では死刑制度について何か言及されるのでしょうか。高村さんなら何か主張されそうな気もしますが・・・。

和製

さて、最後に、「冷血」を読みながらずっと思っていたのは、高村さんが書くときっと素晴らしく「和製」に変身を遂げ、まさしく「 冷血」となって世に送り出されるのだろうなということです。「冷血」は50年代のアメリカ社会を見事に反映してると思うのですが、キリスト教など宗教的な道徳も絡んできて、犯罪の背景は日本とは全く異質だと感じました。

高村さんの小説には社会の底辺にいる人たちも良くできてますが、ペリーたちのようなアメリカの貧困層の悲惨さっていうのはちょっと現代の日本には当てはまらないよなーと思って読んでいました。加害者たちが犯行に至るまでの経緯、心理、社会的環境、家族関係・・・そういったものが日本ではどういうものなのか、また裁判などではどのように考慮されるのか、その辺、和製「新冷血」に期待したいと思います。

あ、あとですね、「冷血」の読後の虚無感・やるせなさは他の高村作品といい勝負でした!これはどちらに軍配が上がるか・・・んーできればあまり合田さんを沈めないでほしいですが・・・不安。


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