
(1966/渡 宏道訳、篠崎書林、1976.11.10)
久しぶりに
自転車で行ける距離ですが
あまり行かない方の BOOK-OFF に行き
見つけました。
本自体は
1978年6月1日発行の再版本ですが
これまで見たことがなかったので
そして安かったので、即買いでした。
A・A・ミルンは、世間的には
『くまのプーさん』の原作者として
知られているかと思います。
自分的には、長編ミステリ
『赤い館の秘密』の作者として
知っていただけに
そのミルンの知らない本なら
買わずに済ませられるはずもありません。
表題作の他に
「わらわない王女」という作品が
収録されています。
訳者あとがきによれば
「うさぎ王子」の方は1924年に
「わらわない王女」の方は1925年に
イギリスで出版されたもので、
1966年に両作を合本にして
メアリ・シェパードの挿絵を付けたものが
アメリカで出版されました。
篠崎書林版はそれを訳したものだそうです。
その「訳者あとがき」には
「うさぎ王子」に出てくる
ナンセンスななぞなぞの答が
なぜヤマネなのかという点から
『不思議の国のアリス』の影響に言及していて
それを読んで、なるほどと思うと同時に
ちょっと得した気持ちになりました。
「うさぎ王子」は、
国王に跡継ぎが生まれないため
優秀な名門の若者に様々な課題を与えて
王子を選抜しようということになり
そこになぜか一羽のうさぎが加わって
みごと競技に勝ってしまうというお話です。
うさぎを跡継ぎにしたくない王様は
次から次へと試合を足していって
アンフェアな振る舞いも辞さないあたりは
面白い。
そのうさぎが実は……というオチは
ちょっとお約束すぎますが
だからといってオチに文句をつけるのも
大人げないわけでして(^^ゞ
お世継ぎについて国民が噂をするようになり
「王さまがいなくなり、
国民ぜんぶが平等になるんじゃないか」(p.8)
と言い出す人たちがいて
低い階級の人々はそれは素晴しい解決方法だ
というのに対して
「それよりも上の階級の人たちは、
あるてんでは平等もよいけれど、
ほかのてんでは
あまりよいことにはならないだろう
と感じました」(同)
と書いてある部分は
ミルン自身が階級に対して
どういう考え方の持ち主だったのか
まったく知りませんが
ちょっと興味深いですね。
「わらわない王女」の方は
タイトルから想像がつくように
王女を笑わせた若者と結婚させる
という課題をめぐるお話です。
わらわない金持ちの娘を笑わせて
出世するという昔話が
イギリスにはあったかと思いますが
まあ、それよりは知略に富み
言葉遊びも盛り込まれています。
基本的に
言葉遊びで笑わせることができれば勝ち
という具合で
こちらにもなぞなぞが出てきます。
訳すのがたいへんだろうと思っていたら
訳者あとがきに
たいへんだったと書いてありました(苦笑)
ちなみに
挿絵を描いたメアリ・シェパードは
メアリー・ポピンズ・シリーズの挿絵で
有名な人だそうです。
そんなこんなで
ちょっと珍しい本ではないかと思いますが
どうせなら干支が兎の年まで
紹介を控えておけば良かったかも( ̄▽ ̄)