テレビアニメ『UN-GO』の劇場版
『UN-GO episode:0 因果論』を観てきました。

2週間限定レイトショー
ということでしたんでね。

月曜の夜に行ってきたんですが、
意外と人が入っていまして、
別に川崎だから
という訳でもないんでしょうけど
(TOHOシネマズ川崎で観たのです)
ちょっとびっくりしました。

パンフは制作されておらず
入場特典も在庫切れだったようで
もらえませんでした。残念(>_<)

以下、ややネタ割りありの感想です。


原案は『明治開化 安吾捕物帖』の
第3話「魔教の怪」と
長編『復員殺人事件』とのこと。

『復員殺人事件』(1949-50)は
巨勢(こせ)博士という名探偵が登場する作品で
掲載誌が廃刊になってしまい
安吾の生前にはついに書き継がれないまま
未完に終わった中絶長編です。
後に高木彬光が解決編を書き足して
『樹のごときもの歩く』(1958)という
タイトルで刊行されました。

後に角川文庫に入った時に
元題の『復員殺人事件』に戻されています。

$圏外の日乘-『復員殺人事件』
(角川文庫、1978年10月30日)

もちろん安吾全集などで読めますが、
自分は角川文庫版が出た時に読んでいて
それっきり放り出しておいたのを
今回、三十何年かぶりに読み返してみました。

そしたら、映画と同じなのは
ボランティア・グループの青年が
紛争地から傷を負って戻ってきた
というところだけでした(苦笑)

要するに、戦地から復員してきた、
というところだけなわけですが、
兵士として戦地に行っていたとするのではなく
紛争地のボランティアに行っていたとしたのが
今風のアレンジですね。

ボランティア・グループの一人で
新十郎と深い関わりを持つことになる
女性キャラの名前が、原作から取られています。


紛争地から帰ってきた男が
新興宗教の教団を立ち上げ、
その教団内で連続殺人事件が起きる
というストーリーは、
「魔教の怪」をベースにしたものです。
こちらは例によって
ちくま文庫版の全集で読みました。

原作では三十代の女性教祖・別天王が
映画では少女キャラになっており、
信仰の足りない信者が狼に食い殺される
ヤミヨセという宗教儀式は、
原作では本当の怪異現象ではないのですが、
映画では本当に妖しのものを出していました。

ここらへんの
アニメらしい伝奇的なアレンジには
最初、とまどいましたが、
ちゃんと最後は謎解きに落としていて
なかなか見事でした。

別天王会を取り仕切るのは大野妙心という男で、
やはりボランティア・グループの一員で
新十郎の中学・高校時代の友人だった
世良田蒔郎が追いつめる、
と見せかけて、実は……というお話に
映画の方はなっています。

大野、世良田は原作にも登場しています。
原作での世良田の下の名前は摩喜太郎で、
こちらが別天王と組んでいて、
大野は教団の地盤をそのままに
乗っ取ろうとしている
という設定になっています。

映画は、原作のこの設定を
うまくアレンジしていて、
やっぱり世良田と別天王とが
組んでいたことになっているのがミソ。

別天王の特殊能力によって
トリックが成立しているのですが、
最後に世良田が破れるあたりの展開は
これもなかなか見事でした。


最近は望月守宮(もちづき・やもり)のように
非合理で伝奇的な要素を前提として
本格ミステリのような
謎解きを展開する作家もいますが、
そういう作家の作風を
連想させるような映画でした。


別天王は、
テレビ版の第6話「あまりにも簡単な暗号」で
自称・小説家の後ろに出ていたキャラ
(OP映像で、風守に囲まれているキャラ)
かと思われます。

とすると先日の第7話「ハクチユウム」の設定も
なるほどそうかと、頷かれるんですが……さて?