
(2009/七搦理美子訳、ハヤカワ・ミステリ文庫、2011.1.25)
時に1905(明治38)年、
舞台はニューヨーク州の郊外都市。
上流階級が住む地域で
残虐な殺人事件が起こります。
ある事情があって、
ニューヨーク市警本部から
地方警察に移動していたサイモン・ジールは
この地方始まって以来の
猟奇殺人の捜査に取りかかるのですが、
そんな折も折、コロンビア大学の教授
アリステア・シンクレアから連絡を受けます。
シンクレア教授が研究対象としていた男の語る
殺人衝動の妄想における手口と
今度の事件の手口とが似ているというのです。
シンクレア教授は、今でいうところの
サイコパスの心理を研究し、
その心理を理解することで更正させられないか
という研究に従事していました。
ジール刑事は研究の有効性に疑問を抱きながら、
シンクレア教授とともに捜査を進めていく
というお話です。
20世紀初頭のアメリカを舞台とする
歴史ミステリ(ないし時代ミステリ)で、
初期の犯罪科学を背景として
プロファイリングの興味と歴史ものを
掛け合わせたのが
ミソといえばミソでしょうか。
(先例はいくらでもありそうですがw)
意外な推理の面白さは少なく、
探偵活動の面白さがメインなので、
読み慣れた読者なら、
犯人の絞り込みは容易でしょう。
それでも最後に、
ちょっと意外なところもありましたが、
その意外性自体は
あえていえば蛇足だと思います。
とはいえ、ミステリとして
それなりのプロットを備え、
(というかプロット上の企みがあり)
若い刑事の、その時代なりの
捜査の面白さが描かれているので、
そこそこ楽しめます。
途中にツイストがあるだけマシ、というか……
オビには、ビル・クリントン元大統領の
惹句が載ってますけど、
元大統領には素晴しくても、
甲羅を経たミステリ・ファンには
「素晴しい読書体験」とはならないでしょう。
そこそこ普通の読書体験に
とどまると思います(藁
それでも、歴史ミステリが好きな人には
おススメかな。