『めぐり逢う朝』に負けず劣らず、
というより、
たとい『めぐり逢う朝』は観なくとも
これだけは観てほしい、
バロック音楽ファン、中でもバッハのファンに
超おすすめの映像が、これ。

(紀伊國屋書店 KKDS-18、2002.5.25)
共にフランス人である
ジャン=マリー・ストローブと
ダニエル・ユイレが制作・監督・編集した
ドイツ・イタリア合作のモノクロ映画で、
1968(昭和43)年にユトレヒト映画祭で
公開されたそうです。
最初に日本で公開された時の邦題は
『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』でした。
バッハの2番目の妻
アンナ・マクダレーナが書いたとされる
偽書(という説が有力な資料)に基づく伝記映画で、
このときバッハを演じたのが
チェンバリストのグスタフ・レオンハルトでした。
現在は指揮者として知られるようになった
リコーダーのフランス・ブリュッヘンが言った
「レオンハルトこそ現代のバッハだ!」という賛辞は
オーセンティックな演奏の素晴しさもさることながら、
この映画の影響によるところも大きいといわれます。
前にもふれたことのある
オーセンティック・ベスト50という
CDシリーズのライナーには、
上のブリュッヘンの言葉が引かれ、
レオンハルトがバッハを演じた映画のことが
書かれてまして、その時から
観たいと思っていた作品でした。
一度、レーザーディスク盤を
石丸電気で見かけたことがありますが、
その時は予算の都合で見送り、
その後、大学院の後輩に
テレビ放送版だったか
レンタル・ビデオ版だったかを
ダビングしてもらったりしましたが、
何となく観そびれているうちに
紀伊國屋書店から出たDVDを見つけたのでした。
たぶん、原作を読んでからと思っているうちに
何となく観はぐったんじゃないかと思うんですが、
(もちろん、原作の翻訳は入手済み【苦笑】)
DVDという使い勝手の良いメディアで出たことと
94分という尺の短さもあって
我慢できずに、するっと観てしまいました(藁
それが2002年頃だったかどうかは
はっきりしませんが、
オーセンティック・ベスト50シリーズが
出た時から数えるなら、
実に10年越しで観ることがかなったわけでした。
それから何度か観てますが、見所は何といっても
レオンハルトのチェンバロ演奏と
カンタータなどの声楽曲の指揮ぶり。
冒頭いきなり、ブランデンブルグ協奏曲
第5番第1楽章の、
チェンバロのカデンツァから始まります。
2段鍵盤を駆使した
華麗なフィンガリングを観た時は
感動しました。
(今でも感動します!)
そのとき通奏低音の
ヴィオラ・ダ・ガンバを担当しているのが
ニコラウス・アーノンクールです。
アーノンクールはバッハが仕えたケーテン侯の役で、
この場面のあと、ガンバ・ソナタを
レオンハルトと演奏する場面があります。
ライナーにもありますけど、
現在ではおそらく不可能な
ものすごく豪華な組み合わせ!
で、アーノンクールの出番はこれだけ(藁
あとはひたすらレオンハルトが
バッハの事蹟を追って演じていきます。
アンナ・マクダレーナが
フランス組曲やパルティータを
スピネット(チェンバロ系)を弾く場面もあり、
これは普通の役者が吹替えなしで弾いています。
だから、パルティータを弾く場面では
演奏の途中で指が止まったりするんですが、
それがまたリアルな感じで、いい。
パルティータを弾く場面では
楽器の足下で幼い娘が人形で遊んでいて、
(これがDVDのジャケの場面です)
これがまた、いいんだなあ。
マタイ受難曲をオルガン階上席
(オルガンの演奏台の両脇)
で演奏する場面もあって、
これがまた、狭いところに左右合唱団と
器楽奏者を詰め込んでの演奏で、
これはいくら何でも狭すぎるだろうと思いつつ、
当時はこんなもんだったのかなあと
何となく納得させられたりもしたり。
ストローブの方は
『ジャンヌ・ダルク裁判』(1962)を撮った
ブレッソンなどの影響を受けたりもしているので、
とにかく淡々と物語(?)が進みます。
唯一ドラマチックなのは
教会合唱団の指揮権を巡って
市参事会と対立したエピソードぐらいなのですが、
これはバッハの伝記をある程度知らないと
何が起きているのか分からないと思います。
その対立に関わるドラマ部分では
レオンハルトも台詞があったりするんですが、
それ以外はひたすら
アンナ・マクダレーナの語りと
バッハ作品の演奏でつないでいる映画です。
喜怒哀楽、すべてが音楽とともにあったことが
(信仰とともにあった、ということでもあります)
非常によく分かる作りになっていると思います。
だから、バッハ・ファン、古楽ファン、
レオンハルト・ファンでなくとも、
ある種の感動を覚えると思いますが、
少なくともバッハの曲や
古楽演奏の背景を知っていると
何倍も楽しめること請け合いの作品です。
28ページのライナーも読み応え充分。
惜しむらくは、声楽曲の歌詞も
字幕で表示してくれれば、
と思わずにはいられないことでしょうか。
というより、
たとい『めぐり逢う朝』は観なくとも
これだけは観てほしい、
バロック音楽ファン、中でもバッハのファンに
超おすすめの映像が、これ。

(紀伊國屋書店 KKDS-18、2002.5.25)
共にフランス人である
ジャン=マリー・ストローブと
ダニエル・ユイレが制作・監督・編集した
ドイツ・イタリア合作のモノクロ映画で、
1968(昭和43)年にユトレヒト映画祭で
公開されたそうです。
最初に日本で公開された時の邦題は
『アンナ・マグダレーナ・バッハの日記』でした。
バッハの2番目の妻
アンナ・マクダレーナが書いたとされる
偽書(という説が有力な資料)に基づく伝記映画で、
このときバッハを演じたのが
チェンバリストのグスタフ・レオンハルトでした。
現在は指揮者として知られるようになった
リコーダーのフランス・ブリュッヘンが言った
「レオンハルトこそ現代のバッハだ!」という賛辞は
オーセンティックな演奏の素晴しさもさることながら、
この映画の影響によるところも大きいといわれます。
前にもふれたことのある
オーセンティック・ベスト50という
CDシリーズのライナーには、
上のブリュッヘンの言葉が引かれ、
レオンハルトがバッハを演じた映画のことが
書かれてまして、その時から
観たいと思っていた作品でした。
一度、レーザーディスク盤を
石丸電気で見かけたことがありますが、
その時は予算の都合で見送り、
その後、大学院の後輩に
テレビ放送版だったか
レンタル・ビデオ版だったかを
ダビングしてもらったりしましたが、
何となく観そびれているうちに
紀伊國屋書店から出たDVDを見つけたのでした。
たぶん、原作を読んでからと思っているうちに
何となく観はぐったんじゃないかと思うんですが、
(もちろん、原作の翻訳は入手済み【苦笑】)
DVDという使い勝手の良いメディアで出たことと
94分という尺の短さもあって
我慢できずに、するっと観てしまいました(藁
それが2002年頃だったかどうかは
はっきりしませんが、
オーセンティック・ベスト50シリーズが
出た時から数えるなら、
実に10年越しで観ることがかなったわけでした。
それから何度か観てますが、見所は何といっても
レオンハルトのチェンバロ演奏と
カンタータなどの声楽曲の指揮ぶり。
冒頭いきなり、ブランデンブルグ協奏曲
第5番第1楽章の、
チェンバロのカデンツァから始まります。
2段鍵盤を駆使した
華麗なフィンガリングを観た時は
感動しました。
(今でも感動します!)
そのとき通奏低音の
ヴィオラ・ダ・ガンバを担当しているのが
ニコラウス・アーノンクールです。
アーノンクールはバッハが仕えたケーテン侯の役で、
この場面のあと、ガンバ・ソナタを
レオンハルトと演奏する場面があります。
ライナーにもありますけど、
現在ではおそらく不可能な
ものすごく豪華な組み合わせ!
で、アーノンクールの出番はこれだけ(藁
あとはひたすらレオンハルトが
バッハの事蹟を追って演じていきます。
アンナ・マクダレーナが
フランス組曲やパルティータを
スピネット(チェンバロ系)を弾く場面もあり、
これは普通の役者が吹替えなしで弾いています。
だから、パルティータを弾く場面では
演奏の途中で指が止まったりするんですが、
それがまたリアルな感じで、いい。
パルティータを弾く場面では
楽器の足下で幼い娘が人形で遊んでいて、
(これがDVDのジャケの場面です)
これがまた、いいんだなあ。
マタイ受難曲をオルガン階上席
(オルガンの演奏台の両脇)
で演奏する場面もあって、
これがまた、狭いところに左右合唱団と
器楽奏者を詰め込んでの演奏で、
これはいくら何でも狭すぎるだろうと思いつつ、
当時はこんなもんだったのかなあと
何となく納得させられたりもしたり。
ストローブの方は
『ジャンヌ・ダルク裁判』(1962)を撮った
ブレッソンなどの影響を受けたりもしているので、
とにかく淡々と物語(?)が進みます。
唯一ドラマチックなのは
教会合唱団の指揮権を巡って
市参事会と対立したエピソードぐらいなのですが、
これはバッハの伝記をある程度知らないと
何が起きているのか分からないと思います。
その対立に関わるドラマ部分では
レオンハルトも台詞があったりするんですが、
それ以外はひたすら
アンナ・マクダレーナの語りと
バッハ作品の演奏でつないでいる映画です。
喜怒哀楽、すべてが音楽とともにあったことが
(信仰とともにあった、ということでもあります)
非常によく分かる作りになっていると思います。
だから、バッハ・ファン、古楽ファン、
レオンハルト・ファンでなくとも、
ある種の感動を覚えると思いますが、
少なくともバッハの曲や
古楽演奏の背景を知っていると
何倍も楽しめること請け合いの作品です。
28ページのライナーも読み応え充分。
惜しむらくは、声楽曲の歌詞も
字幕で表示してくれれば、
と思わずにはいられないことでしょうか。