ただ今、仕事中で
新しい本を読み終えられないので、
少し前に読んだ(読み直した)本のことなぞ。


以前、ジャンヌの列聖までを含む
ジャンヌをめぐる裁判についての新書を読んで、
ジャンヌ・ダルクにハマった時期がある
と書きましたが、
その新書が下の写真の左側の
『ジャンヌ・ダルクの神話』です。

$圏外の日乘-ジャンヌ・ダルクの神話
(写真左:講談社現代新書、1982.1.20
 写真右:岩波新書、2005.9.21)

これは古本屋で買ったものですが、
(いつ、どこで買ったのかは忘れました)
異端者として火刑されたジャンヌが
復権され、列聖され、
果ては生存説まで生じたことが
コンパクトに紹介されていました。

これを読んだ時は、
まさに巻措くをあたわずという感じで
一気に読み終えました。

そのとき驚いたのは
ジャンヌ・ダルクが聖人として認められたのが
20世紀に入ってからだということでした。

聖人として認証されるためには、
まず福者として認められる必要があり、
そ列福が認められるためには
奇跡を二回起こしていることが
「証明」されねばならず、
また列福後は
さらに二回奇跡を起こしていることが
「証明」されなければならない、
という教会側の規定があるようです。

そんな規定があることもさることながら、
そんな規定をクリアして認められたことが
チョー驚きだったわけです。

そしてもうひとつの驚きが、
ジャンヌは王家の血を引く者で、
火刑台に上ったのは別人であり
その後、幸せに暮らし、墓まである
という生存説があることでした。

このジャンヌ生存説は、
いわゆるトンデモに等しい説のようですが、
源義経はジンギスカンだったという
有名なトンデモ説を彷彿とさせ
印象に残りました。

で、この本に感化されて、
『ジャンヌ・ダルク処刑裁判』(白水社)
という、火刑になる時の裁判記録
(映画の裁判場面のネタ元)の翻訳まで
買っちゃいました。

当時は(ちなみに、1992年。
伝票が本に挟んでありましたw)
ネットで本を買う環境なんて整っておらず、
神田にある白水社の本社まで
買いにいった記憶があります。

書店注文だと一週間ぐらいかかることは
目に見えてたので、
とにかくすぐ欲しかったんでしょう。

それほどまでして買ったにもかかわらず、
いまだに読んでないけど(^^;ゞ


写真右の岩波新書
『ジャンヌ・ダルク
 ——歴史を生き続ける「聖女」』の方は
新刊で出たとき買いましたが、
読んだのはついこの間です(^^;ゞ

講談社現代新書と
内容的にはほとんど変わらないのですが、
より丁寧な記述になっているのに加え、
日本におけるジャンヌの受容史
(ただし明治まで)と、
ジャンヌの肖像画をめぐる話が
岩波版だけの新しい情報として
盛り込まれています。

特に、肖像をめぐる話は
とても興味深かったです。

講談社現代新書はすでに絶版ですので、
岩波新書しか入手できないわけですが、
こちらは当時の史料、特に
いわゆる「復権裁判」
(正確には「処刑判決破棄裁判」。
 異端者であるという判決を覆す裁判の記録)
からの引用が豊富で、
火刑後のジャンヌの受容史を追うのに
便利な一冊だと思います。

歴史学の研究者らしく
記述の根拠を註で示しているあたり、
一般的な受けはともかく
個人的には、いいなあと思いました。
(講談社版はここまで厳密では
 ありませんでした)

で、『処刑裁判』に続き、
『ジャンヌ・ダルク復権裁判』(白水社)
という本が翻訳されているんですが、
出ていること自体は
岩波新書を買ったとき知ってたんですけど
何となく買いはぐってましたので、
よい機会だと思い、買いました。

『処刑裁判』ともども、
老後の楽しみにせず
(て、すでに老後だろ!
 というツッコミは、なしねw)
読むことがかないましたら、
こちらに感想を書きたいと思います。


裁判記録の原典の翻訳読むなんて、かったり~
という方には、岩波新書がおススメですよん。