$圏外の日乘-『ベル デアボリカ』第1巻
(朝日新聞出版 ASAHI コミックス、2010.6.30)

こちらも、先日の黒川さんのイベントを待つ間、
書棚で見つけた本です。

ケルウォースという弱小国の東の谷には
魔術師(魔物)が住んでいて、
物見を立てることができずに困っていました。
若い領主ツヴァスは魔術師を生け捕りにして
王国の守りを固めようとします。

そういう出だしで、
ツヴァスが魔術師ヴァルカナルを生け捕りにしてから、
両者との関係を描いていく作品、というふうに
まとめられましょうか。

ちょっとボーイズ・ラブの要素もあり、
素朴で実直なツヴァスと、
気まぐれなヴァルカナルとの関係が
なかなかいい味わいを出してます。

読み手からすれば、両者の関係は
友情と呼ばれるものでしょうが、
ヴァルカナルが魔物という設定のため、
そしてヴァルカナルが「友情」という概念を
おそらくは持たないため、
ツヴァスは素直に関係が結べないのですね。
そこが読んでて面白い。

だからシリアス一辺倒という感じはしないし、
こういう関係性は坂田靖子の代表作
『バジル氏の優雅な生活』における
バジルとウォールワースを連想させます。

オビに「新境地」とか書いてありますが、
こういったシリアス系の作品は、
現代ものとか、歴史もの、ボーイズものとかで、
昔、よく描いていた気がします。

ダンジョンズ&ドラゴンズ系の作品も
描いていますから、
長年のファンにとっては、
シリアス系は久しぶりかもしれないけど、
今さら「新境地」といわれてもなあ、
という感じですね。

まあ、作者が悪いのではなく、
版元が悪いわけですが(藁

洋ものファンタジー系の話は
あまり好きではないのですが、
この話に限っては、さくさく読めました。
さすが、坂田さん!


ちなみにこの作品、Yahoo! コミックので
第1話と最新作が無料で読めるらしいので、
興味を持たれた方は、まずは
そちらで読んでみてもいいかもしれません。