この小説につきましては、大河ドラマ「平清盛」の2次小説ということと、私の妄想から生まれ出たものであって大河ドラマ内ではある部分までしかありません。それもかなり後の話となるはずです。


それから、藤原 頼長の男色につきましては、彼自身が残した「台記」という、日記のようなものに、事細かに

綴っているという、史実があります。ゆえに、この2次小説を思いつきました。


男色のお話がお嫌いな方はなにとぞ、読まないでいただきたいと思います。

ファンのかたで、気に食わないと思われる方も、どうぞ素通りをよろしくお願いいたします。

OLAILA


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清濁の渦


賀茂神社の祭り当時、清盛の代役となり家盛が舞を舞っていた。その端麗な舞はある男の眼を奪っていた。その男とこれから関わることになることなど、一心に舞を舞っている家盛は、気づく由もなかった。この男と関わることで、自分の運命が大きく動こうとしていた。


「家盛の舞、なかなかのもの。吾は気に入った。今宵家盛を吾の屋敷にて宴を開こうぞ、使いを」


舞を終えた平 家盛を宴に誘うのは、時の佐大臣の使いであった。今日は、兄 清盛の代役としてこの舞を舞った。幼い頃から父に厳しく仕込まれた平家の舞を褒めて頂ける事はなににおいても嬉しいことではあるが、家盛は訝しんだ、いくら舞の評価が良いとしても、佐大臣である藤原 頼長直々の誘いである。まず断ることなど出来るはずもないのだが、やはり、あまり芳しい噂が聞こえてこない人物。躊躇せずにはいられない。兄の清盛でさえ一目置く人物。しかし、絶好の好機でもあるのだ。先の祇園闘乱の煽りをくらい、平家の朝廷での信用が危うくなっていることは家盛にも良くわかる。ここで、摂関家の後ろ盾を取り込むことが出来れば、平家はこの後も安泰であると思えるのだ。
兄、清盛は貴族に取り立ててもらおうという考えなど、


「くそ喰らえじゃ!!貧しき者を救おうと思わぬ貴族になぞ仕えてなんの徳となろう。」


と言う。そんな破天荒な兄を良く思わない叔父、平 忠正 は、家督を継ぐのは、嫡男である家盛であると、父 家忠に忠告していた。

目の前に立つ、左大臣の使いにこれからの平家の事を想い


「承知仕りました。衣が整いましたら、お屋敷に出向いて参りまする。」


恭しく頭を下げて、左大臣の申し出を受けることにした。この後に、自分の身に起こることなど知る由もせず、家盛は、衣を整えて左大臣の屋敷へ向かっていった。

頼長の館へ着くと、藤原家に従う多くの貴族が家盛の舞を褒めそやした、特に、宴の主催者である頼長は、


「武家の出身というなれど、大祭での舞は優雅であった。真に気品に溢れ、品格さえ漂うておった。」


声高く褒めるのであった。それには、頼長の策略がチラチラと見え隠れしていたのであった。酌をするように己の元に呼び寄せ、そっと耳打ちするのであった。


「そなたが平氏の嫡男というではないか・・。何故そなたがあの無頼者の配下とならねばならぬのじゃ。嫡男がついでこそ、道理・・・。吾の力をもてば、その道理に道筋をたてられよう・・・。それにはそなた次第ということじゃが・・・。」


ゾクリとするような申し出を耳元で囁かれる、この男に取り入るのは難しいと家貞から聞いていただけにもったいないほどの申し出、兄、清盛を凌ぐ位を得るにはその申し出を受けるほかなかった。

頼長は家盛の決意に応えるように、家盛に従四位下右馬頭に昇進するように朝廷に働きかけ、そしてその位を家盛に与えた。

これで、家盛は兄清盛と並ぶ官位を得たことになる、


「兄上、これで私も兄上と同じ官位を得たことになりまする。」


清盛に対して、家盛は堂々と対峙することを宣言した。


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