時貞の吐息が運之丞の身体に電流を走らせた、そのせいで己の象徴が高ぶってしまった。既に立ち上がっていた時貞のものと触れ合い、妙な感じがする。接吻だけでこれだけ反応してしまうほど、時貞は色っぽいのだ、男好きの男にはたまらない者だろう。佐々木の気持ちが少しわかるような気がした。時貞の手が、運之丞の手を取り、時貞の高ぶりに導いた。


「これも、してくれ・・。嫌なのは承知だ。じゃが、頼む。儂は運之丞にされたい。」


そうはいうものの、それは真っ赤になっていて、少し痛そうな感じがすでにしていた、よほど佐々木に弄られたのだろう、触れるとひりひりするのではないかと運之丞は思った。


「四郎様、それは・・・。やれと言われれば、お力をお貸しします。しかし・・・。」


しかめっ面をしながら、時貞の象徴を触れきれずにいる運之丞の手を時貞は自らしっかりと握らせた。握られた瞬間、痛みが走り顔を引き攣らせた時貞を、


「痛いのでございましょう。これは、止めましょう。四郎様は穢れてなどいません。」


「そうじゃない。構わぬ、やってくれい。佐々木の手垢が嫌なのじゃ。」


「しかし・・、私とて男、変わらぬのでは・・。」


「運之丞がいいのだ・・。運之丞にしてもらいたいのだ。信頼できる運之丞に・・。」


赤見の孕んだ顔と少し甘えを含んだような声と目つきで、運之丞に迫った。何もかも、全て吐き出してしまいたかった。もし、それが自分の手でしたとしても身体の中に残っているようで嫌だった。運之丞に施してもらえば全てが吐き出されるような気がしていた。
運之丞の手を己の高ぶりから離すまいと手を添え、そして、動かした。痛みと共に急所くる快感が全身を駆け巡る。もっとその感覚が欲しくて、無意識に腰が動いていた。その淫らな様子に運之丞の理性が少し外れた。ゆっくり、刺激を与えつつ、腕の中に時貞を抱え込みその唇を本能の赴くままに奪っていた。先ほどよりも激しく、貪るようにその口内を探り、そして、握った手を上下に動かしながら、時貞の動きと合わせていた。運之丞の高ぶったままの物が、時貞のわき腹に当たっていた。時貞はそれを開いている手でつかむと、まるで自分の物のように
扱っていた。突然の快感に、運之丞が仰け反った。


「四郎様・・・私のは・せずとも・・。」


「運之丞・・お主も儂を抱きたいと思うか・・・?」


「そのように・・思うたこと・・ござりません。ただ、今は、ああぁぁ・・」


「なぁ・・一緒に・・果てようぞ・・」


そう時貞に言われ、向かい合い互いの物を刺激し合って、果てる一歩手まえで、二人口づけあって果てていた。
他の人から見れば、淫らな行為をしているだけのように見えたが、二人の間では何かの儀式のような感じがしていた。禊(みそぎ)のような、そんな感じさえしていたのだ。


果てた後処理を、運之丞がそっと湯を流して綺麗にしていた。よほどの疲れがあるのか、時貞は暫く動けなくなっていた。湯をゆっくりかけられることすら、そこがひりひりと痛む。身体全身がきしみ始めていた。運之丞としたことで、全てを吐出し、脱力してしまったのだ。そして、話しはじめた。


「儂はな、何もばれておらぬと高をくくっていたんじゃ。じゃがな、お小姓上がりの植野様にも、佐々木にもすぐにばれたのよ。ただ、佐々木には何のつもりで近寄ったのかは、ばれてしまわなかったのは唯一よかった。それと、あやつな、事に夢中になると少し口が柔らかくなるらしい、今日は、鳴滝で歌舞伎者の捕り物があるそうじゃ。それ以外、なにも引き出せなんだ。一番欲しいことはなにも、何一つ引き出せなんだ・・・。なのにこれからも、儂はあ奴の相手をせねばならんのじゃ。馬鹿じゃ儂は、馬鹿じゃ・・・。手玉に取るどころか、手玉に取られてしもうた。」


ボロボロと泪をこぼしながら、運之丞に話した。気位の高い時貞にとって、初めての敗北だったのだ。


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