一般的に「遠近感ある平面構成」という課題について、作品を紹介します。
この生徒は、背景を白い紙のままにしようとしたようです。
20年ほど前の作品で、紙が黄ばんだから修正した白が目立つようになりました。
この生徒は背景も含めて、色を作って均一に塗っています。
かなり細かな作業をしています。
問題は、2作品とも、消失点が画面の両端にあることです。
そんなことをすると、両端付近はデストーション(ゆがみ)が大きくなりすぎて形を描くのが困難になります。
四隅付近は絶望です。
この問題を避けるためには、左右に紙を継ぎ足して、それぞれ継ぎ足した紙に消失点を描かなければなりません。
下の写真はこのようなことを説明するための掲示物です。
左側の掲示物は画用紙を3枚、横につないでいます。
二点透視の消失点は(中央の)画用紙の外に取らなければならないことを示しているのです。
でも、中学校の机はB3サイズの画用紙とほぼ同じ大きさですから、画用紙の外に消失点を取ろうとすると、その点は画用紙からはみ出すばかりでなく、机からもはみ出してしまいますから、これは中学生にとってかなり困難な作業になるのです。
だから、ここに紹介した2点のように、かなり優れた生徒でも、消失点を画面の端っこに取ってしまいます。両端の図の歪みが大きくて描きにくく、不自然になっているのはそのような事情なのです。
さて・・・・。
20年ほど前、私は、このように正確に作図し、緻密に着色させることを重視しましたが、その後あまり正確さや緻密さにこだわらなくなりました。
明度や彩度等、色の組み合わせには疑問が残りますが、中学生にしては、面白い工夫だと思いました。
今までの作品と異なり、廊下の写生を元にした構成になっています。
実は、この作品が出た頃、生徒は、単なる「遠近感ある平面構成」ばかりでなく、「遠近感ある写生」を選択しても良いことにしていたのです。
写生を試みて、その後平面構成に切り換えた。そんな生徒の作品です。
「遠近感ある平面構成」の代わりに、「遠近感ある写生」をテーマとして描いた生徒作品です。
外へ出て写生しても良い。
こんな制作を認めるためには、事前にかなりの授業規律を作っておかなければなりません。
「先生。外で描いても良いですか」
「良いよ。授業が終わる5分前に帰ってきてね」
これで事故や事件が起こらない自信がないと許可できません。
この話題は、別に書きます。
この生徒は、多分、人物を描きたかったのだと思います。
鉛筆で人物を描くに当たって、机の形に遠近法の知識を応用しています。
さて、発展段階の問題です。
画用紙3枚綴り。
左端の図です。
y=-ax+bのグラフを描きなさい。
x軸、y軸、グラフの3つの直線で直角三角形ができます。
この斜辺(グラフの線)に任意の点を取り、x軸、y軸に垂線を降ろして
x軸、y軸、並びに二つの垂線でできる長方形を描きなさい。
斜辺上に一つの頂点があり、隣の長方形に接する相似な長方形を順に作図しなさい。
このような問題です。
こうして描かれた長方形は、同じ大きさの窓が
遠くになるほど小さくなるように並んだ形になります。
というわけで、私はこれを「窓の遠近法」と呼ぶことにしています。