相続時精算課税 ~1. 相続時精算課税とは~ | 岡山県遺言相続ネットワークブログ

相続時精算課税 ~1. 相続時精算課税とは~

 こんにちは。税理士の村上心理です。


 今回から3回に分けて「相続時精算課税」についてご説明したいと思います。
 贈与税の課税制度には、前回ご説明した年間110万円までは贈与税がかからない「暦年課税」のほかに、「相続時精算課税」という制度があります。注意すべき点も多いですが、使い方によっては非常に有効な相続対策になりますので、ぜひ検討してみてください。


【相談者 A子】:相続時精算課税ってどんな制度ですか?


【税理士 M上】:相続時精算課税とは、一定の贈与者から受ける2,500万円までの贈与については贈与税がかからないという制度です。


【相談者 A子】:暦年課税なら110万円まで税金がかからない。相続時精算課税なら2,500万円まで税金がかからない。それなら断然、相続時精算課税のほうが得なんじゃないですか?


【税理士 M上】:それが、そうとも言えないんです。
では、相続時精算課税についてご説明していきましょう。



 相続時精算課税の適用を受けた場合、まず贈与時に贈与された財産に対する贈与税を納付します。その際、特別控除額2,500万円を控除することができますが、この2,500万円は暦年課税とは異なり、1年あたりの控除額ではありません。前年以前において既にこの特別控除額を控除している場合は、残額が控除限度額となります。


 相続時精算課税の適用を受けた後、その贈与者が亡くなった時に、相続時精算課税の適用を受けた贈与財産と相続財産とをいったん合計して相続税額を計算し、その計算した相続税額から、既に納付している贈与税相当額を控除した金額を相続税として納付します。



【相談者 A子】:結局相続税がかかるの?


【税理士 M上】:その通りです。
もう少し詳しく見ていきましょう。
まず適用対象者は、贈与者が65歳以上の親、受贈者が贈与者の推定相続人である20歳以上の子(子が亡くなっているときには20歳以上の孫を含みます。)です。この要件に該当しなければ相続時精算課税の適用を受けることはできません。


【相談者 A子】:年齢は贈与時の年齢ですか?


【税理士 M上】:いえ、年齢は贈与の年の1月1日現在の年齢で判定します。


【相談者 A子】:父と母それぞれから贈与をしてもらった場合はどうなるのですか?


【税理士 M上】:相続時精算課税は、父と母それぞれで適用を受けるかどうかを選択することになります。ですから、「父からの贈与については相続時精算課税、母からの贈与については暦年課税」ということも可能です。
また、たとえ父または母からの贈与について相続時精算課税を選択していても、その父または母以外の人から受けた贈与については暦年課税で計算することになります。


【相談者 A子】:相続時精算課税の適用を受けるためには何か手続きが必要ですか?


【税理士 M上】:相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者(子)は、その適用に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(つまり、贈与税の申告書の提出期間。ただし、一定の場合を除く。)に納税地の所轄税務署長に対して「相続時精算課税選択届出書」(贈与者ごとに作成が必要)を受贈者の戸籍謄本などの一定の書類とともに贈与税の申告書に添付して提出する必要があります。



次回は「贈与時と相続時の取扱い」についてご説明します。



税理士 村上 心理