疾走


人間の心の醜さ、残酷さ、薄情さ、愚かさを、

濃厚でねっちりと描いた、重い重い小説。


重松清「疾走・上巻」。


いじめ、差別、家庭内暴力、借金、精神崩壊、引きこもり、放火、一家離散・・・。


上巻だけで400ページあるのですが、

ただひたすらに重苦しい不幸と悲惨の連続が14歳の少年に起こります。


人間が精神的に極限状態まで追い込まれるとどうなるのか?


作家・重松清は、この重いテーマに果敢に挑んでいます。


読む方にも、タフなスタミナを要求するこの小説、

上巻を読んだだけで、グッタリと疲労困憊してしまいます。


でも、読まずにはいられない小説の底力。


最近、ここ10年くらいで一番ショックな事が起こったオレですが、

そんな落ち込んでしまったオレを精神的に支えてくれたのは、

この小説です。


これまでも、ずっと重松清の著書を愛読してきましたが、

やっぱ、この人はオレにとって本物の作家です。


読むだけで、これほどズッシリとした塊を与えてくれる作品なので、

書く方は、さぞ凄まじい精神力と体力が必要だと思います。


読むのが恐ろしいような下巻ですが、

引き続き読んでいきたいと思います。