民法改正問題①~法定利息の変更と明文化される中間利息控除の齟齬~ | 弁護士・大村真司の日々雑感

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民法の120年ぶりの改正に関する中間試案がまとまったという報道がありましたね。まだ中間試案なので、改正にこぎ着けるまでにはしばらくかかると思いますし、実は、今も、そもそも改正自体必要ないのではないか、と言う意見もあるのです。


ともあれ、しばらく、この「中間試案」をネタに、ブログを書かせてもらおうと思います。


さて、この中間試案の中で、私が大きな問題と考えている点が2つあります。その1つが、報道にも上がっていた「法定利率の変更」というものです。

その中でも、問題は2つあると考えているのですが、今日は、報道には全く現れていない「中間利息控除」の問題を取り上げたいと思います。


まず、用語の説明からしないといけませんね。

民法では、利息や損害金を取ることが出来るけどその利率が決まっていない場合に、一律5%にすることになっています。これは、バブルの時代も、今の0金利時代も一緒です。これを「法定利率」といいます。

今回報道されたのは、これが今の実情からすると高すぎるから、3%にしよう、と言う案になっているということですね。

まあ、ここだけなら、分からなくもないわけですが・・・。


もう1つ、「中間利息控除」という概念があります。今の民法には条文がありませんが、改正法では明文が置かれる方向で中間試案が作成されています。

これは、一言でいうと、将来もらうはずのお金だけど今もらうのだから、利息分差し引きましょう、ということなんです。

・・・といっても、この説明では、知らない人が聞いてもピンと来ないと思うので、例を挙げて説明すると・・・。例えば、交通事故などで死亡した場合、損害の中で、「もし生きていればもらえたであろう給料」(逸失利益)というものがあります。これは、来年もらうものもあれば、10年後にもらうものもありますよね。こういう場合に、1年後、10年後に初めて満額もらえるものだから、1年あたり5%(法定利率)分差し引きましょう、ということになります。例えば、1年後に10万5000円もらえるはずだったのであれば、10万しかもらえない、という感じですね。給料などは毎月もらうものですから、こういう計算が積み重なっていきます。


今は、この法定利率も、中間利息控除も、年5%で計算されています。


ところが、現在の民法改正中間試案では、なんと、

法定利率は3%にするけど、中間利息控除は5%のままで行きましょう!


というとんでもないことになっているのです・・・。


どういうことになるかというと、例えば、先ほどの死亡事故の例でいうと、平成21年に亡くなった人の事件が、平成24年に解決したとします。先ほどの逸失利益は、平成21年を基準に5%ずつ差し引かれるのに、支払が遅れた分の3年分の利息は、3%しかつかないことになるわけです。

実際に待たされた分は利息が少なくなるのに、将来の部分フィクションとして差し引かれる金額は5%のまま。被害者に支払われる金額は、確実に少なくなります。


実際に経過した期間の遅延利息より、将来もらうはずだったから、という理由で便宜的に差し引かれる方が利息が高いというのは、どう考えてもおかしい


ですよね。もし利息を変更するのであれば、こちらもそれに合わせて変更すべきでしょう。

一応、こういう取扱の意見について理由はついていますが、完全に学者さんの考えた机上の空論としかいいようがありません。


こんなの、喜ぶのは、常に加害者側に経つのが宿命の保険会社くらいでしょう・・・。