一昨晩、農業関係の出版社が発刊している“TPP反対の大義”という本を読み終えた。TPPとは、環太平洋経済連携協定のことをいうが、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、ペルー、シンガポール、ベトナム、マレーシア、ブルネイの9ヶ国が参加している。


参加国内で関税を撤廃し、完全な自由貿易を推進しようとするもので、現在参加国でこのルール作りを行なっており、今年の秋には決まる予定だ。日本は二国間では、FTA(自由貿易協定)を締結しているケースが多いが、この米国主導のTPPについて、議論が真っ二つに分かれている。


完全な自由貿易とは、例外がないことだ。つまり、現在米をはじめ農作物や畜産物に高い関税をかけて日本の農業や畜産業を保護してきたが、参加国域内ではその関税を廃止しようとするものだ。そうなると当然、海外から安い米や農作物、食用肉が入ってくる。消費者にとってはとても有り難いことだが、農業関係者が猛反対している。


逆に言えば、参加国内で日本の製品もそれまでかかっていた関税がゼロとなるため、売上げ向上に寄与する。特に、アメリカの市場で、車や電化製品は、欧州先進国をはじめ、韓国、台湾、中国などと激しい価格競争を繰り広げている中で、それぞれ二国間でFTAを締結している国々も多く、日本は不利な状況を余儀なくされている。


実は、このTPPとは何も関税、農業だけの問題ではない。サービスや知的財産、或いは人の往来の自由化や移民政策などについても、かなり突っ込んだルールが制定されることになる。


経団連をはじめ、ほとんどの経済団体は参加すべきとしているが、第一次産業との考え方の違いがはっきりと浮き彫りになっている。民主党も自民党も賛成と反対が二分しているが、共産党や社民党は反対を表明している。


これまで、賛成派の意見について日経はじめ各新聞や経済雑誌に掲載したのである程度理解できたが、今回この“TPP反対の大義”の本をざーっと読んで、反対派の意見を確認した。


20名ほどの論者がそれぞれの立場で意見を述べている。結論からいうと、TPPに反対するが、“何故反対するのか”となると考え方にかなりの開きがあり、違和感を覚えた。論文を書いた学者たちは反米論者が多く、アメリカのこれまでの歴史や政治経済政策に反発している超保守層の学者たち、或いは逆にかなり偏った左派の学者たちだ。しかし、農業関係者や民主党、自民党の政治家のほとんどは反米そのものではないだろう。また、たいへん情緒的、或いは観念的に物事を捉える人も幾人かいた。


その考えると、反対派は一枚岩どころが5,6枚の岩のように見える。今後、世界的な経済競争だけでなく、ますます台頭する中国の軍事力への対応を考えた場合でも、賛成派の方がブレがなく方向性がはっきりしている。


おそらく、日本政府は、TPP参加への舵を切らざるを得ないだろう。例え自民党が政権を奪取したとしてもその流れを決して変えることはできない。そうなれば、日本は、有史以来初めて、国を開き“他民族国家”の体制を好む好まざるを問わず敷設していくことになる。


私たちは、そのための準備を怠ってはならない。



(京都金閣寺の冬景色)

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