1年前のゆいた君。まだ幼い感じがします。最近、少し大人になっています。


読んだ本

スマートシティはどうつくる?

山村真司 監修・著

工作舎 NSRI選書
2014.12

ひとこと感想

都市計画関連書。コンパクトにまとまったノウハウ本。ただし「スマート」の定義などいくぶんあいまいな表現が多く、本のつくりも、図の文字が小さくて読みにくい。工作舎の本の割には読者への意識が薄い印象。

1962年山口県生まれ。東京大学大学院建築学専攻修士課程修了。89年日建設計入社。2006年から日建設計総合研究所理事、上席研究員。各種建築の環境計画、都市の環境配慮・低炭素計画及び評価を専門とし、国内外のプロジェクトで実績を積む。技術士、中小企業診断士等。

NSRI選書の「NSRI」とは日建設計総合研究所のことである。

***

スマートシティ(スマートコミュニティ)とは何か。

エネルギー、水資源、情報通信、交通、廃棄物、緑など私たちのくらしを構成するすべての機能がつながり、循環する都市、コミュニティのことである。

だが、それはなぜ「すべての機能がつながり」あっているのか、本書ではうまく説明しきれていない。

肝心の「スマート」の意味があいまいなのである。

「スマート化について汎用的な定義はとくにありません」(12ページ)

嘘である。「スマート化」とは、端的に、IoTもしくはM2Mをインフラとする情報のネットワーク化、ということにほかならない。

事例的に「スマート」の意味をたどると、1992年にはじまった米国のスマートグリッドに端を発することになる。送電のネットワークのことをスマートグリッドと呼び、そして、その端末がスマートメーターである。

スマートシティについては、経産省の定義をひいている。

「ICT技術を有効活用して、基盤インフラ、生活インフラ等の都市関連インフラを効率的に運営し、生活を快適かつ利便性を向上させることが可能となる都市」(経産省)

確かに「スマートシティ」「スマートコミュニティ」という構想のなかには、
省エネルギーや創エネルギーを主体とした環境配慮・低炭素を旨とする「エコシティ」「環境都市」といった側面との重複などがみられ、混乱しやすいものであるが、「スマート」という概念は、これまで常に変わらずにきていることを、本書はうまく伝えていない。

事例紹介はとても参考になる。

スマートシティの先行事例は、米コロラド州のボルダー市で、スマートグリッドを2007年以降進めてきた(これはスマートシティ)。

2006年UAE、アブダビのマスダール・シティは、低炭素型都市として世界にアピールした(これはスマートシティ?)。

「欧州では省エネ、低炭素を目的とするいわゆる「エコシティ」という名前で推進されているケースがこれまで多く、「スマートシティ」は、エコシティの次のステップにあたるコンセプトとして捉えられています。」(61ページ)

こうしたまとめかた本質的ではなく、文脈依存的なものである。

事例
1 既存都市改修型

スマートシティ
 アムステルダム
 
マラガス
 日本橋

スマートグリッドシティ
 ボルダ―

離島型スマートグリッド
 宮古島ほか(日本)

スマートコミュニティ4大実証地域
 北九州、横浜、豊田、けいはんな(日本)

2 都市開発型

リヨン・コンフルエンス
ハマルビー・ショースタッド(ストックホルム) *
ロイヤル・シーボート(ストックホルム)
ピーカンストリート(テキサス州オースティン)
マスダール・シティ(UAE) *
天津生態城市(中国)
柏の葉スマートシティ
藤沢スマートサステイナブルタウン

*を付けたのは非スマートシティ

また、「スマート」で大事なのは、電力インフラに再生可能エネルギーを組み込む際に不可避的にスマートグリッドを必要とするということである。よって、必然的に低炭素化が目指されるため、混乱しやすいことがよくわかる。

***

「スマート」に対して「シティ」についても、本書は説明を加えている。

具体的には「コミュニティ」の説明となる。

「スマート化という新たなコンセプトに基づいて誕生するまちやコミュニティが、どのような変化を見せるのか」(108ページ)

これは大切な指摘である。

しかし本書は、定義などを辞書に頼っている。

「人々が共同体意識を持って共同生活を営む一定の地域、およびその人々の集団」(大辞林)

こうした共同生活を営む場は、「古くは宗教施設がその中心となり、近年では小学校を単位とした小学校区などが対象」(109ページ)とされる。

そのうえで「都市」はこうした「コミュニティ」の集合体である、としている。

こうした記述をしておきながら、続いて、次のように述べられている。

「日本では、地域の神社・寺などの宗教関連施設を中心とした集落が一つのコミュニティとして捉えられてきました」(109ページ)

こうした「コミュニティ」と、都市における「コミュニティ」は一緒だろうか。社会学では伝統的な共同体と、機能や目的によって形成される都市とは、明確に区別されるが、ここではそうした観点はない。

ここから一気に「近代」のコミュニティ計画の話にうつる。

 1898年 田園都市構想(E・ハワード)

これはすなわち、近代都市の弊害を克服すべく、伝統的共同体のよさを都市に融合させたもの、とみなすことができる。

 1920年代 近隣住区理論(C・A・ペリー)

多摩ニュータウンに影響を与えた。

 1990年代 ニューアーバニズム(P・カルソープ)

公共交通を中心(TOD)

***

もう少し付け足したいことがあるが、今日は時間切れ。


目次        
第1章 都市の現況―膨張し続ける都市・成熟を超えた都市
 世界的な都市人口の集中
 加速するエネルギー消費
 高齢化する都市;課題解決に向けて期待されるスマート化
第2章 スマート化とは何か?
 スマート化の概念整理;スマート化に関する施策
 都市・コミュニティにおけるスマート化
 スマート化の標準化の動きについて
第3章 スマートシティ検討のプロセス
 スマートシティ開発の現況
 スマートシティ実現のための統合的検討プロセス
 スマート化を実現するための事業の進め方
第4章 スマートシティ技術の導入計画1
 コミュニティづくりと都市計画の方法
 建物の低炭素化の推進
 エネルギー供給系インフラ計画
第5章 スマートシティ技術の導入計画2
 上下水道系インフラ
 廃棄物処理系インフラ
 インフラとしての緑・水環境
 交通系インフラ(道路、公共交通、自動車)
 ICT系インフラ



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