読んだ本
核セキュリティの基礎知識 国際的な核不拡散体制の強化と日本のとるべき対応
木村直人
社団法人 日本電気協会新聞部
2012年3月

ひとこと感想
「電気」の協会の新聞部から「核セキュリティ」の本が出ている。そして著者は元科学技術庁の官僚である。このことにまず驚きたい。つまり科学技術庁内において「核」のセキュリティが議論されてきたということは、結局は「核」とはすべて原子炉(原発)に由来するということなのである。

著者は、科学技術庁で核不拡散・保障措置をはじめ、基礎研究振興、原子力研究開発などを担当。

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史上初の「核セキュリティサミット」が開催されたのは、2010年4月のことだった。

そのきっかけとなったのは、2009年のオバマのプラハ演説「(核テロリズムは)世界の安全保障にとって、もっとも差し迫った究極の脅威だ」である。

ここで「核セキュリティ」の何を問題としているかというと、以下の4点に分かれる「核テロリズム」である。

1 核兵器が盗まれる
2 核物質を盗み核兵器を製造する
3 盗んだ放射性物質を使った爆弾を製造する
4 原発や放射性物質の運搬船(車両)を破壊・妨害する

そして「核セキュリティ」は次のように(IAEAによって)定義されている。

核セキュリティ(核物質防護)
 = 核物質は密売買や盗取され、不法に使用されないようにすること

近年の動向(1990年以降)としては、旧ソ連やチェコ、ドイツなどで不正取引や蜜やなどがしばしば起こっている。過去15年では、1,500件にのぼる。

「日本に住むわれわれは、まさか自分たちがいつでも核開発をできるという疑惑の目で見られていることにまったく気付いていないし、その気もないが、これだけ多量の濃縮ウランとプルトニウムを保有している国はまれであり、管理の手法に少しでも不手際があれば、国際社会からはすぐに疑念を持って見られることは言うまでもない。」(95ページ)

また、ここでの「核セキュリティ」への取り組みの意義も、同じコンテクストにある。

「だからこそ、可能な限り客観性を持って、誰の目から見ても原子力利用が平和裏に行われているという認識を日本に対して持ってもらうための取り組みを強化することが重要となる。」(101ページ)

本書では完全に「核」という概念において「核兵器」も「核力発電」(原発)も同じように論じられている。

ある意味、とても残酷な、ある意味、とても明解な本であった。



核セキュリティの基礎知識ー国際的な核不拡散体制の強化と日本のとるべき対応/日本電気協会新聞部
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