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名木田恵子。と言えば、キャンディキャディ、である。

その後、彼女と、作画のいがらしゆみこさんとが、もめた話は、以前書いたが、今回この「レネット」を読んだのは、ここに、「原発事故」が関係したからである。

名木田さんは、実際に、チェルノブイリの近隣の子どもたちを、日本で保養で受け入れるプロジェクトにかかわっている。

そのなかで生まれた「思い」が、この作品には生かされている。

文章は、とてもシンプルなのだが、それがかえって、物語の情景を鮮やかに思い描くことができる。流石である。

単純に読めば、淡いラブストーリーにすぎない、のだが、それだけではなく、「原発事故」が絡むことによって、単純に読むことを許さない、心の襞を、描いているように思われる。

私は、この作品において、日本にやってきて、なかなか最初はなじめず、アイスクリームばかりを食べている男の子とか、そういうディテールの描き方に、心動かされた。

大事なのは、そういった幾多もの「現実」を丹念にたどり、それを「パブリック・メモリー」として形成してゆくことだと思う。

菅谷さんの本もそうだが、「子ども」を通じて「原発事故」を考えることは、「未来」を指向することである。

その重みに、私たちがどこまで耐えられているのか、少々、心もとないが、少しでも前に進まねばならない。

そのようななか、このような作品を読むことで、とりあえずの同情ではなく、ある種の「連帯性」というか、「紐帯性」というか、なにがしかのつながりを強く感じることができる。

だから、もちろん、ないものねだりなのだが、私としては、この、少女と少年との「ラブストーリー」に、もう少し、名木田さんの美しい感性で、原発事故や原発というものとの向き合ってきたなかで少年が不可避的に得てしまった、悲しみや、苦しみ、不安や恐怖などを、描いてほしかった。

レネット―金色の林檎/名木田 恵子
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