左翼と新自由主義者が賛成するTPP | 王道日本:佐野雄二

左翼と新自由主義者が賛成するTPP

最近の民主党・菅政権にはあきれるばかりである。政権政党としての自覚がまったく無いと言わざるを得ない。野党も含めて政治の現状を見ると、ペンを持つ手が重くなるが、嘆いていても仕方がない。今回は表題のテーマで書いてみたい。

他党だけでなく民主党内でも慎重論の多いTPP(環太平洋経済提携協定)であるが、それに賛同する勢力を見てみると、①経済界 ②対米従属主義者 ③新自由主義者 ④左翼くずれ

4つに分類できる

そのうち、大企業中心の財界が賛成するのは理解できる。彼らは互いの国の関税をできるだけ低くして国際競争をすれば必ず勝てると見込んでいる。彼らが保護主義を批判するのは、保護主義では他国の市場でのビジネスチャンスを失うからである。


だから保護主義を批判するのは、いつでも勝つ見込みの圧倒的に高い先進国の企業である。だが、国際競争で勝てば貿易黒字が増えて、さらに円高になる。これ以上円高になれば海外に工場を移転せざるを得ず、それなら初めから海外での消費分をその地で生産する地産地消に徹した方が良いという単純なことに気付いていない。

次に対米従属主義者もTPPに賛成する。彼らは、アメリカと規則も商慣習も一体化して、アメリカの51番目の州になることが日本の安全を確かなものにすると信じている。だから、ご主人様の言うTPPに賛成する。かってアメリカが大豆の輸出を止め、世界中が被害に遭ったことなど、まったく忘れている。

また、新自由主義者=グローバリストも賛成する。彼らは国家の壁を低くして、国内取引にも海外取引にも国家が介入しない

「小さな政府」が理想である。だから、国家主権=関税自主権を放棄するTPPは「小さな政府の極限」であるとして、賛成する。


彼らの主張は財界と連携していると思うが、自民党内の小泉・竹中路線の継承者、みんなの党、民主党の菅・前原グループなどがこれに該当する。

ちなみに民主党内の他のグループ、民主党A(日本維新の会・原口氏など)も本質的にはTPPのような自由貿易協定には賛成である。前回の民主党マニュフエストには、「農家への所得保障を行い、自由貿易協定に参加する」と書いてあった。つまり農家への所得保障は自由貿易協定参加のための対策であった。唯一違うのは前農相・山田氏の「TPPを慎重に考える会」のグループであろうか。

次に左翼や新左翼くずれが、何故、TPPに賛成するかであるが、そもそも左翼というのは新自由主義とよく似た構造を持つ。なぜならマルクス主義は、「国家は階級抑圧の道具・暴力装置」と規定する。だから国家主権の発動たる関税自主権を放棄することは、「ブルジョア国家の弱体化」であるから歓迎する。これは新自由主義の「小さな政府」と合致する。


また、彼らは「万国の労働者=プロレタリアート団結せよ」と言うように、たえずインターナショナルを指向する。これは新自由主義者がたえずグローバリズムを指向するのと良く似ている。

さらに社会主義者はプロレタリア独裁を掲げ、それを世界化して、国際共産主義の統一政府を指向する。かってソ連が社会主義国であった時、同時に国際共産主義運動の世界統一政府であらんとして、他国に様々な介入や指示を出していたことを想起していただきたい。この考えは新自由主義運動が,その世界的な推進機関としてWTOやIMF,世銀などを「世界統一政府的な機能」として強化しようとすることと良く似ている。

また社会主義者は国家を階級対立の場ととらえ、プロレタリア(低所得の労働者階級)が権力を奪取することを目標にする。だからプロレタリアが増えることは、社会主義が近いとして歓迎する。


一方、新自由主義では社会格差の存在が競争の原動力ととらえる。だからワーキング・プアが増えても「ああならないように勝ち組に入ろう」と考える。つまり、それ自体が競争の原動力であるから、さほど意に介さない。

ワーキング・プアとは別名プロレタリアと言って良いから、この点でも彼らの増加は両者から無言のうちに歓迎される面がある。だが、ワーキング・プアとはバラバラにされた個人であるから、団結の共通基盤がないので階級闘争の担い手になることは今後もないだろう。

さらに左翼・社会主義者には前官房長官・仙石氏などのように「権力志向」の人物が集まりやすい。なぜなら彼らは労働者階級による権力奪取(プロレタリア独裁)を目指すからである。

一方、新自由主義者にも権力志向の強い人物が集まる。なぜなら「国家介入なしで国際競争をすれば、必ず『勝ち組』に入れる」と信ずるからで、「勝ち組」指向は権力指向と同義である。だからネオコン・グループは新自由主義と相性が良いのである。

以上、左翼も含めて労働組合関係者の多い民主党と自民党・

小泉竹中路線の共通点を見てきた。

アメリカ型の金融資本主義が格差や貧困を極大化する制度であり、同時に個人をバラバラのワーキング・プアにして民主主義を破壊する制度であることが徐々に知れ渡ってきた。お蔭で、すでに亡霊化した社会主義思想が復活しつつある。

今こそ、過剰な格差と貧困を解決し、地域や生活者を真に守る国家像が求められている。

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