自由貿易協定は日本を破壊する | 王道日本:佐野雄二

自由貿易協定は日本を破壊する

自由貿易協定は日本を破壊する


菅内閣が、関税の完全撤廃を目指す「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」への参加に前向きである。

TPPは06年にシンガポール、ニュージーランド、チリなどから始まった。アメリカも09年に参加表明したために、日本も参加を検討する事態となっている。


内閣府の試算では、TPPへの参加で域内の関税が撤廃され、日本の輸出が増えてGDPが3兆円前後増える。さらにTPP参加をきっかけにEUや中国との貿易・投資自由化も加速するので、GDPの押し上げ効果は7兆円前後に達するとしている。


しかし、この議論で無視されているのは、TPP参加で日本の農業が自給率14%となって壊滅するだけではない。

そんなに輸出が増えれば、貿易黒字の増加でさらに円高になることである。その分、輸出企業は打撃を受けて、将来的には円高に耐えきれず、輸出先に生産拠点を移すことになる。それなら初めから生産拠点を海外に移して現地生産すれば良いわけで、関税を気にする必要など全くないのである。

そういう意味で、TPPという自由貿易協定を進めたい財界も政府も、輸出増加による円高を全く考慮しないのは問題である。


TTPに限らず、関税撤廃の自由貿易協定はグローバリズム=新自由主義の最たるものである。それは小泉・竹中政権以来、顕著に見られた、円高デフレ、ワーキング・プアや失業、自殺者の増加を促進するものである。


なぜなら、新自由主義的政策により、域内のベトナムやペルーなどの低賃金国の労働者と、我が国の若者やパート労働者との賃金を競わせるからである。今でさえ、年収200万円以下の人口が1000万人になっているのに、それをさらに増やすのが自由貿易協定である。

自由貿易協定は、大企業にとっては良いが国内的には貧困層が増え、円高となって苦しむだけだから、止めた方が良いのである。


それにしても、このTPPにつき前原外相は、「国を開くことを本気で考えないと、日本の競争力は低下してしまう」と語っている。なんという近視眼、何という学習能力の無さかと呆れてしまうが、仙石・前原路線が民主党の主流派だから、どうしようもない。

国の役割は国民生活を守ることであり、そのためには雇用と食料安保、治安の維持が最優先事項である。関税撤廃は、その第1、第2の役割を放棄するものである。


農産物について「地産地消」が言われている。これはエネルギー使用や化石燃料の抑制、鮮度の維持などの観点から、農産物について、生産される地で消費することが最も合理性があるという考えである。

似たような観点から工業製品についても、消費される地で生産する地産地消が理想である。その方が省エネルギーで、現地での雇用に役立ち、途上国の自立と南北格差の縮少に役立つことになる。


先進国だけでなく、全人類が工業技術発展の恩恵を受けるわけで、自由貿易協定ではなく、工業製品の地産地消を進めるべきと考える。そうすれば関税ゼロで安心して生産活動を営めるし、日本が「失業の輸出をする」という批判も受けないで済むのである。


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