民主党への提言その1―米国債の利用について | 王道日本:佐野雄二

民主党への提言その1―米国債の利用について

【民主党への提言その1―米国債の利用について】

今回から何回かに分けて、政権与党となった民主党への提言を行っていきたい。

第一回目は、「来年度予算についての埋蔵金利用についての提案」である。

民主党は麻生政権時に国会で成立した補正予算約15兆円の見直しにより、

3兆円近くの執行停止を行うことを決めた。官僚もあきれるほどの麻生政権末期のバラマキ予算の一部が政権交替で停止されたのは、初めての体験であり、結構なことである。


続いてすぐに来年度予算の策定に入るが、景気後退による税収減もあり、マニュフェストの実行財源の確保が早くも危ぶまれている。


そこで第1に、埋蔵金としての外貨準備の活用を提案したい。具体的には予算のうちアメリカ政府などに対するドル建て支払の分は、すべて外貨準備として保有している米国債(あるいはその売却代金)を充てるようにするのである。


例えば、在日米軍駐留経費を負担している防衛省の「思いやり予算」は年間2千億円ほどあるが、これをすべて米国債で支払うことにする。

あるいは兵器や護衛艦、潜水艦、輸送鑑などは、どれも1機100億円前後するが、ほとんどはアメリカからの輸入であり、その支払分を米国債で支払うことにする。

国連分担金(約400億円)拠出やIMF出資、ODАの対外支払いなども、米国債での支払いを大いに交渉すべきである。


特に日本の国連分担金は2006年から下がったとはいえ、依然としてアメリカに次ぐ16.624%を負担している。常任理事国5カ国のうちアメリカを除くイギリス、フランス、中国、ロシアの4カ国の合計が16.81%であるから、日本は常任理事国4カ国分近くを払っていることになる。


日本は分担金以外にも国連平和維持活動(PKO)予算に約450億円、世界保健機関(WHO)やユネスコに約300億円と、こまめにお金をばらまいて相変わらず「世界の貢ぐクン」をやっている。こうしたキャッシュデスペンサー的行為はもう止めて、「公平な負担」を各国に求めた方がよいのだが、当面は、これらを皆、外貨準備の米国債売却分で支払うのである。



こうして積み上げた金額は約1兆円になるが、これらは元々がドル建てで支払う予定のものであるから、米国債を売却して払ったからと言って、円高ドル安になることはない。



この米国債売却の効果は金額以上に大きい。何故なら、日本はこれまで外貨準備を100兆円近く有し、その内の約9割を米国債で運用している(明細は公表されていない)。この米国債は、買い増すばかりで売ることができない。97年、当時の橋本龍太郎総理はニューヨークの講演で「私は何度か米国債を売りたい誘惑に駆られたことがある」と発言したら、ダウは一時的に暴落し、米国要人を怒らせた。彼の米国での評価は大幅に下がり、それ以来、米国債売却の話はタブーとなっている。



だが、もはや遠慮している場合ではない。ドル安傾向のまま米国債を持ち続ければ、日本の財産が大幅に目減りする。購入価格を平均1ドル138円とすると、現在時価は1ドル88円であり、すでに35%以上目減りしている。これは明らかに不良資産であり、立場が逆であったら、米国民は絶対に日本を許さないし、すぐに売却するだろう。


米国債やその金利を一般会計に繰り入れる方法でもよいが、米国債の有効活用のためにも、ただちに必要な法律を変えて、対外支払いに使うべきである。


 米国債売却での支払いは、日本から見れば埋蔵金の活用であり、もし、アメリカが文句を言うなら「そもそもあなた方の勧めた変動相場制の為替システムは、外貨準備を要らないはずだった」と言い返せばよい。


1973年に導入された変動相場制は、「国際収支が自動均衡するから外貨準備は不要である」という振れ込みだった。だが、輸出が増えれば円高となり、輸出競争力が落ちることを嫌った日本政府は、ドル安を嫌うアメリカの意向もあって、せっせと黒字をため込み、そのお金で米国債を買ってきた。

変動相場制下の外貨準備は、理論的には輸入額の3ヶ月分を保有すれば良いとされる。その計算では約20兆円で充分となる。


米国債は、特に02年10月から04年3月の1年半の間に約47兆円を、外貨準備として買い増している。現在の残高の約半分であるが、これは小泉・竹中政権が、外資企業の手持ち米国債を意図的に買って外資に資金を与え、それが日本企業買いの資金になった可能性が高いという指摘がある(元早大大学院教授・植草一秀氏のブログより)。事実とすれば恐るべき売国奴ぶりである。


米国債を売却してアメリカから圧力を受けたら、こう言えばよい。

「米国債を持っているだけで売却できないのでは、なんら外貨準備にはならない。米国債の評価損の原因はドル安傾向にあり、その責任はひとえに米国にある。

だいたい中央銀行のFRBをロスチャイルド系が7割を握る私有銀行のままにしていることがおかしい。世界に金融危機をもたらしたサブ・プライムローンも、意図的なインフレ政策で通貨供給を増やし、バブルを演出したFRBの責任が最も大きい。私有銀行のまま通貨の発行益には一切課税されず、国際金融資本に都合の良い金融政策をやるから、他国が大きく被害を受けることになる。


日本が今後、ドルを基軸通貨として支えていくにしても、FRBを国営にして通貨供給量を公開するなど、通貨政策を明瞭かつ公平にすることが前提である。」というのである。こう言うと、多分、アメリカは何も反論できないだろう。


事実、アメリカの中央銀行たるFRBは、ニューヨーク連銀がほぼ実権を握っており、それをさらにファースト・ナショナル・バンク、ナショナル・シティ・バンクなど5つの民間銀行でほとんどの株を握っている。さらに、その奥をたどるとイギリス・ロスチャイルド家と密接につながっており、アメリカ政府は一株も持っていない(参考『民間が所有する中央銀行』面影橋出版)。



かってブッシュ・小泉時代には9.11テロを演出するなど、「悪の枢軸関係」を対米従属で築いていた。それがオバマ・鳩山両氏に代わり、これを機会に「自立と共生の、対等な日米関係」に代える必要がある。時代はそれを求めており、絶好のチャンスの到来である。



FRBを今までのように国際金融資本の利害優先とせず、事実上、ドル基軸国の中央銀行として衣替えしていくことは重要である。それは日本として今後もドル基軸体制を守ることの条件でもある。同時にアメリカにとっても国際金融資本の支配から脱却して、より公平な価値観で世界の政治や経済を主導していくチャンスである。


実際、基軸通貨を多極化しようと、どこかが責任を持って管理することが必要で、アメリカ・FRBが公平性と明瞭性、信頼性をもって運営されるなら、中国なども歓迎するはずである。

そのための有益な提言であることをアメリカに主張して、同時に日本の国益を実現していくべきと考える。



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