鮒与(鰻・志村坂上) | C.I.L.

鮒与(鰻・志村坂上)

オレは冬の鰻が大好きである。個人的に冬こそ鰻を食べるべき時期のような気がするのだが、まあそれはともかくお店紹介に移りましょう。




今回ご紹介するお店は、都営三田線の志村坂上駅から程近い場所にある鮒与という鰻屋さん。周囲にはTOPPANの大きな建物があるくらいで、基本的には住宅と、ちらほらと飲み屋がある程度。




そんな板橋区でも辺鄙と呼んでいい場所にあるのだが、お値段の方はそれなり。土地柄からするとちょっと割高かもしれん。

前に紹介した "うなぎ仲宿" なんかと比べるとメニューが絞ってあり、より専門店的なラインナップである。




とりあえずまずは酒の肴という事で、短冊と肝焼きを頼んでみた。(ちなみにメニューは1本のお値段)

肝焼きは香ばしさとほのかな苦味が楽しめるオーソドックスなタイプ。タレも甘すぎず辛すぎず万人向けのお味。

そして短冊の方はどことなく鳥の皮串を思わせるようなサクサク(カリカリか?) した食感と、香ばしさと脂の旨味が感じられる。こちらは塩焼きなので、より鰻の風味を楽しめる。個人的には肝焼きは普通だったけど、この短冊はかなり美味いと思った。




こちらはメインディッシュのうな重(竹) さん。
お吸い物と新香が付く。




タレはシンプルな甘辛いタイプで、短冊と同じく炭火でじっくり焼いている。一口食べるとまずカリカリのウェルダンに焼いてある部分の食感と香ばしさが食欲をそそり、続いて程よく脂の乗った柔らかい部分の旨味が襲い来る。

丁寧に蒸し上げてから焼いた鰻のようなホワホワとした極端な柔らかさはないが、そういった柔らかさ重視の鰻が苦手な人にはコチラの方が好まれるかも。

そして特筆すべきは米。この店はとにかく米が美味い。びっくりするくらいアルデンテに炊き上げてやがる。こんだけ米が美味いんだから、上に何が乗っててもそりゃ美味いよってなくらい美味い。顎の弱い人にはオススメできないかもしれんが、昔ながらの噛み応えの、一粒一粒がやけに自己主張してくる炊き加減なのだ。

この米とタレだけで充分に美味しくて、オカズとして鰻をつまむ感じだった。いやなんというか待った甲斐(※1) があったわ。

※1 この店は注文を受けてから鰻を捌いて米を炊きます。よって 「さすが鰻屋!」 と言いたくなるほど時間がかかります。(それでも30分強くらいかなあ…)




こちらはお茶漬け。こちらもお米がアルデンテなので、お茶漬けだけでサラサラと美味しく頂ける。ただし米を噛むのに疲れるのと、顎を動かすせいで満腹中枢が刺激されるという点に加え、お出汁がたっぷり入っているので腹の膨れ具合が異常。量的にはうな重もお茶漬けも変わらないと思うんだが、明らかにこっちの方が満腹度が高い。




この店の鰻は身が締まっている感じなので、どちらかというと普通にうな重で食べた方が美味しいかもなあ。お茶漬けにしちゃうとせっかくのカリカリした食感が弱まってしまって、香ばしさも薄れちゃうような。

個人的にはうな重とお椀を別で頼んだ方がいいような気がしないでもない。

っていうか、いっそひつまぶしで食べさせてもらえないかな?それで最後に好みでお茶漬けにする方が、お米の美味しさもより味わえるしモアベターだと思うんだけれども。



■総評
なんだか鰻屋ばっかり紹介している気がしなくもないが、前回のうなぎ仲宿と比べて好対照なお店である。仲宿の方はしっかり蒸し上げてから焼いているので柔らかくてホワホワなんだが、鮒与の鰻は柔らかさもあるんだけどもっと肉感が強く、お上品というより少し無骨な感じがする。これは良い悪いじゃなくて単に好みの問題だろう (それこそ関西か関東か的な)。

それに注文を受けてから炊く昔ながらの歯ごたえの強いお米のせいで、柔らかすぎる鰻は合わないんだと思う。この米にホワホワした鰻じゃ、米が勝ちすぎちゃって調和が取れない気がするし。

そう考えるとこの店はある意味で凄いかもしれん。普通は鰻に合わせてお米を考えるだろうに、お米に合わせて鰻の焼き方を考えてるんじゃないかと思えてくる。

で、オレが最も重視するコストパフォーマンスについてなんだが、この店に関してはこれくらい割高な感じでも仕方ないと思う。というのも、こんだけ手間をかけてたら客の回転が悪いだろうし、いくら土地代の安い志村とはいえ、このくらいの価格設定じゃないとやっていけないんじゃなかろうか。

オリジナリティと良心を感じさせてくれ、多少高くついても大事に通いたいと思わせてくれるので、100点満点で92点差し上げます。ささやかながら応援するので、今のままの手法で頑張って欲しいなあ。



■鮒与(鰻)
住所:東京都板橋区志村1丁目15-7
電話番号:03-3967-8790
営業時間:11:00~21:00
定休日:月曜日
アクセス:都営三田線志村坂上駅のA2出口を出る。目の前の通りとは逆方向の寂れた方(TOPPANの建物がある方向) に進み、二つ目のT字路(だったはず) を右に曲がってすぐ右手。