最初で最後の万華鏡 愛する息子たちへ~Look of the sky~ | 万華鏡&イベントプロデューサー・ゴーがGO!

最初で最後の万華鏡 愛する息子たちへ~Look of the sky~

お久しぶりです。


いよいよ、寒さも本格的になってきましたね。  ちょっと、鈍感な自分。 気がついた時には時すでに


遅し。 風邪をこじらせてしまいました。


皆様は、僕みたいにならないよう、この冬を乗り切ってください。


さて、今回の記事は通常の万華鏡展案内などの記事ではありません。  


タイトルは「最初で最後の万華鏡 愛する息子たちへ ~Look of the sky~」です。 


ある一人のお客様のお話です。


ちょっと、長くなる記事です。 すいませんが、もし宜しければお付き合いください。



僕が万華鏡展の企画を始めたきっかけは、全国の方々に、現代の万華鏡の魅力を伝えるにはどうすれば良いか・・・


銀座に万華鏡の店、ギャラリーを構えていますが(来年で40年になります) 見に来られない方々も大勢いる。 身体が不自由な方もいる。


ならば、こちらからどんどん地方に行って、直接万華鏡を見てもらおう。


これが、スタートしたきっかけなわけですが・・・気がつけば、走り回って今年で15年。


この15年で、大勢のいろんな方々との出会いがありました。

  


僕はお客様との会話の中で、敢えて自分からはお客様の職業とかは尋ねたりしませんが、毎年万華鏡展を

同じ所で開催していると、毎回来られるお客様の顔はもちろん、色んな会話に発展するうちに、


お客様の職業まで、知ることもあります。


お客様の職業まで、知ることがあっても・・・お客様がお買い上げいただいた万華鏡が


通常ならば、その万華鏡が綺麗だから、外観が素敵だから、、、、などの理由でお求めになるわけですし、


僕としても、お客様が選んでいただいた万華鏡を通じて、そのお客様の趣向、好みなどを頭にインプ

ットさせていただき、次回に繋がるよう考えることは年がら年中しているわけですが


お求めになられた万華鏡が、その後どうなるのか・・・  その万華鏡がどういう意味で・・・など、正直

あまり考えたことがありませんが


先月の名古屋松坂屋での万華鏡展の際、かれこれ10年以上のお付き合いのあるお客様からのお話で、


僕自身  とても心に強く熱く響いたことがありました。



その長いお付き合いのあるお客様の職業は看護婦。



その看護婦さんのTさんから、4ヶ月前の8月に電話がありました。 その電話の内容は



Tさん:「私の患者さんに、癌で余命3週間くらいの女性がいます。 その患者さんと仲良くなって、色々話して


いるうちに、私のコレクションの万華鏡をいくつか見せたら、凄く万華鏡に感動してくれて・・・


その患者さんは、まだ小学生の息子さんが3人いるんですけど、自分の息子さん達に何か、形に残る物を


最後にプレゼントしてあげたいと思っていて、この最後のプレゼントを万華鏡にしようと考えてますから、


もしかしたら、ゴーさんのところに万華鏡の注文があるかもしれないので、その時はよろしくお願いします。。。。」




その電話をいただいた時、上手く言えないのですが僕の頭の中は一瞬 真っ白になりました。


これまでに僕は、何千回? と、色んなお客様から 色んな理由で万華鏡のオファーを受けたことはあります



大体、記念品、プレゼント、新築祝い、入学のお祝いなど・・・


ご自分の命がもう  あと  僅かしかない・・・ こういう方からのご注文を受けたことはありませんでした。



僕は、そのTさんに「 解りました。 もし、連絡なりご注文なりあったらそのお客様を最優先して、動

きますよ。」


そうお返事しました。


ところが、そのTさんからの電話があった翌日も、またその翌日もその患者さんから連絡が無いので、


万華鏡でなく、他の物を選ぶことにしたのかな。。。と、思いながらも頭の中で、気になってました。


そして、Tさんからの電話があった、一週間後・・・




我が銀座ヴィヴァンは、楽天に出店しているのですが、ある一人の女性から万華鏡の注文が来ました。


その注文が、3個。  送り先の住所が    病院。


そして、早急に送ってほしい、 と。




僕はTさんからの電話を受けて、うちのスタッフにも、こういうお客様がいるから、もし連絡なり注文が

あったら、急いで早く動くように、と言ってたので


普段なら、うちのスタッフは注文があっても僕に知らせることもないのですが、今回のお客様の注文

のされ方が


もしかしたらゴーさんの知り合いの看護婦の患者さんからかもしれない。。。。と悟ったスタッフが


僕に伝えてくれました。  


僕もそのお客様のオーダーを確認して、確信しました。  「これは、あのTさんが言っていた方だ」


その時でした・・・


そのお客様から直接、僕に電話がかかってきました。


声がとても、枯れていて、  聞き取りにくかったのですが、一生懸命に振り絞るように声を出して・・・


お客様:「私、余命があと2週間あるかないかなんです。 先ほど楽天から注文しましたが、私の注

文、ちゃんと届いてますか? できるだけ早く送ってほしいんです。。。」


か細い声で、一日でも早く送って欲しい  切実な願いが・・・ものすごく伝わりました


僕:「解りました。 本日、発送できるよう頑張ります。」


お客様:「私、、、万華鏡を買うの初めてなんです。  Tさんから、万華鏡を教えてもらって、一週間


ネットで色々と万華鏡を検索しましたが、やっぱりゴーさんの面白いブログでも紹介してたし、ヴィヴ

ァンさんに


注文することに決めました。。。 よろしく   お願い   します。。。。」



僕:「ありがとうございます。 ありがとうございます。ありがとうございます。」




熱く、こみ上げてくる気持ちを抑えるのが精一杯でした。  この時、お客様とはもう少し色々とお話さ

せていただきましたが


ネットであまり、買い物をしたことが無かったことと、万華鏡を買ったことがなかった不安などあった

わけですが、僕なりに真剣に説明させていただき

 

このお客様から電話を切る際に言われた一言が「ありがとう」 でした。



目頭がものすごく熱くなった、あの一言が今でも忘れられません。


僕が電話でお客様と話している間、うちのスタッフは3万点以上ある、万華鏡の在庫リストから、


その万華鏡の在庫の有無をスピーディーにチェックしてました。


チェックすると、オーダーいただいた3つの万華鏡のうち、2つは銀座ヴィヴァンにありましたが、残り

の一つはうちの銀座ヴィヴァンでなく、横浜の百貨店に


送ってしまっていることが判明、ちょうどその日からその百貨店で、その万華鏡も展示展開される予定でした。



僕はその日の夕方に3件予定していた打ち合わせを全てキャンセルにして、会社を飛び出していました。


横浜に向かってました。。。。   横浜の百貨店に電話を一本入れて、返品していただくようお願いすれば


済む話ですが、それでは届くのが翌日ないしは翌々日になってしまう。 そして、もし何らかの配送ミスなり


また事故等のトラブルがあればさらに遅れる、さらには配送途中に破損してしまうこともある。


ここで、僕もうちのスタッフに横浜まで取りに行ってもらえばいいわけですが、、、、


どうにも、、、、できないんです。  自分が行かなきゃ  気がすまない。 だから、地方にも、、、、


僕が行ってしまうんです。

   


横浜まで、その万華鏡を取りに行った時、その万華鏡を両手で持った僕は


まるで、生まれたての卵を大事そうに持つように・・・いつもとは、ちょっと違う感覚になってました。


そして、無事にその3つの万華鏡を電話のあった当日に送ることができました。



その3つの万華鏡とは・・・


度々、僕のブログでも紹介させていただいている


高林 千稔(たかばやし ちとし) 君の人気シリーズの「Look of the sky ルック オブ ザ スカイ」


の黒、白、茶の三種類でした。


ここで、画像で紹介させていただくわけですが、今回は万華鏡の宣伝・・・


と、受け取らないでいただきたいのです。   この注文していただいたお客様がどういう気持ちで


何をどう感じたか、、初めて買う万華鏡、そして悲しくも 最後の万華鏡として選んだ万華鏡・・・


このお客様と画像を通してですが、目に焼き付けていただき、共感していただきたい。 僕からのお

願いなんです。


先ずは

黒バック


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中の映像は


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高林君と言えば


万華鏡のカラーの中でも、白にこだわる万華鏡作家と言っても過言でないくらいです。 


白・・・実は最も表現するのに、綺麗でもあるし、難しい色だと

思うのです。


この作品「Look of the sky」の意味は「空模様」  


空を見上げると、雲一つない快晴もあれば、どんよりとした曇り、時には雲の間から太陽が差し込んだり、


ブルーの空と雲のコントラストが強い時もあれば弱くほんのりとした時もある。 


一日の始まりの強い太陽の日差しや、オレンジ色に輝く、夕日と雲・・・


万華鏡に二度と同じ組み合わせがないのと同じで、空にも様々な表情があり、そして空にも同じ景色は


二度と無い。。。。 この万華鏡本来の特性と  空の美しさの特性に着目し、リンクさせたのが


この「Look of the sky」 


そして、オブジェクト(色具)を通した背面が黒の場合は、白を中心に雲の立体感を巧みに表現し


背面が


ホワイトの場合は


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ほんのりと、ブルーを入れて、ブルーにも濃淡を入れてます。


単純に、綺麗な色とされる ブルーとホワイトだけでなく、ほのかにグレーも馴染むように配合している。


それは、空はいつも綺麗な色ばかりではない、時として 曇りのグレーもあって、初めてブルーが


より生かされる・・・まさに、高林君ならではのセンスを感じさせてくれます。



そして、夕日を表現する

背面が茶色は



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オレンジ色を使った万華鏡自体、、、非常に珍しいのですが、高林君は自分のイメージとする色合いを


考える際、夕日のイメージのオレンジ色は外すことなく、背面の茶色と喧嘩することなく、絶妙に調和させています。

雲の間から、夕日がじわじわと  差し込んでくるようです。



はい、お客様がお選びくださった3つの万華鏡とは、この三種類でした。


自分の最愛の3人の息子たちのために。




もう、自分の命はあと僅かしかない・・・  最愛の息子たちとの別れが迫ってきている


あなたなら、どう思いますか。


癌の治療、痛みに耐えながらも 一日でも長く息子たちの元気な姿を見ていたい


息子達の成長を見ていたい、見続けていたい、見守り続けていたい


それができない、できなくなる 辛さ。。。


僕なりに、色々と想いました。   僕が、思う以上に 想像を絶するほど 辛かったと思います。


そのお客様は、色んな痛み 辛さの中でも  愛する息子たちへ


きっと、様々な想いが交錯してたと思うのです。


 

 世の中には、ありとあらゆる


カタチになる物が存在します。  その数多い中で、万華鏡を選んでいただいた。


看護婦のTさんから、電話を受けて   そのお客様から注文を頂くまでの1週間・・・


母である、そのお客様は悩みに悩んで、色々な万華鏡を必死に探してたそうです。


普通であれば、悩んでも  もうちょっと探してみよう、今はやっぱり止めとこう。 など、思われることも


あると思うのですが、このお客様には悩める時間はありませんでした。


この残り僅かの時間の中で、息子たちのことを想い、一生懸命に万華鏡を探した


お母さん。  お母さん。    頑張りましたよ。 本当に。



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このお客様からの注文があった翌日に


無事に3つの万華鏡は、届きました。


そして、ここからは 先月名古屋松坂屋でお会いした、看護婦のTさんから聞いたお話です。




3つの万華鏡がお客様のところに届き、早速その3つの万華鏡を見るときのお客様の表情は


それまでの暗い表情から一転し、信じられないほどの満面の笑顔に変わったそうです。


Look of the sky は、女性の手でも、持ちやすい 回しやすい大きさ。


そして、木であるがゆえに、自分の手の温度が木の温もりと調和し・・・  優しい色合いの変化とともに、


めくるめく色彩の変化は、それまでの辛さを少しでも忘れさせてくれるかのようで


そのお客様は大事そうに、ゆっくりと  万華鏡を回して見ては


時折、大きく  息を吐いて   そして  大きく息を吸っては


瞼を閉じて   しばらく  何かを想い    窓越しから見上げる空を見ては



万華鏡&イベントプロデューサー・ゴーがGO!


また、万華鏡を見ていたそうです。。。。。 瞼に浮かぶ 涙を拭いながら・・・



その姿を遠目に見つめていた看護婦のTさんに、  


そのお客様は  「ありがとう、これが最初で最後の万華鏡に

なるけど・・・こんなに素敵なものを教えてくれて。」


看護婦のTさんも、こみ上げてくる涙を抑えるのに、精一杯だったそうです。。。


そのお客様の命はもうあと僅か、、、、看護婦と患者という立場であれど、同じ女性、年齢も近く


知り合ってからすぐに仲良くなれて、Tさんの持っている万華鏡を見せてあげて、万華鏡談義に花が

咲き、


感動してもらえる喜びを感じ、美しい万華鏡を共に共感できる時間も


もう残り僅か、、、、お別れがすぐそこに、、、そう思うと「悲しい」 の一言では言い切れないほどの


辛さがあったと思います。


僕が感謝させていただくのは、このお客様だけでなく 万華鏡の良さを教えてくれた看護婦のTさんにも


熱く感謝してます。 何故ならこのTさん、実はこのお客様は違う病棟の患者さんでした。  本来、業務的に


言えば、違う病棟の方は自分の担当ではありませんので、管轄外なら相手にしなくても良いわけですが


余命あと僅か・・・  Tさんは  そんな方を放ってはおけない性分。 看護婦として、自分に何がで

きるだろうか、

してあげれるだろうか・・・


違う病棟の患者さんでも、仕事とは関係なく、接するTさん。  その時間を使う分、自分の仕事も増えてしまうのに・・・

お客様が素敵な万華鏡 Look of the sky と出会えるきっかけと、現代の万華鏡の素晴らしさを伝えてくれた


Tさん。 看護婦以前に、人間として本当に心優しき方だと思うのです。


こういう優しい方が万華鏡を好きでいてくれる。。。。本当に嬉しいことです。



そして・・・最初で最後の万華鏡のLook of the sky を届いた日に見続けていたそのお客様


最初は満面の笑み    が  安堵の表情に変わっていったそうです。



翌日、そのお客様はお亡くなりになりました。


まだ、33才という若さでした。



今、思えば   お客様が僕に電話で、「自分の命はあと2週間もない・・・」と言われましたが、


ご本人は、2週間も生きていられないのでは    と、悟っていたのではないかと思うんです。


万華鏡が無事に届いて、良かった。  その思いだけでなく、激しく自分の心に響くものがあります。


万華鏡展をこれまで開催してきて、  時折、 夜に一人思うのは 「これでいいのかな・・・」


と色んな不安や悩みが交錯する時があります。  でも、今回のこのお客様のために、微力ですが


自分達ができたことを思うと、万華鏡を通して少しは人のためになれたのかな・・・



人生の中で、万華鏡を綺麗と思い、喜べる時間は一瞬にすぎなくとも、その喜びのきっかけ作りに


貢献できている。。。。そう思えると・・・自分の道は間違って無かった。


そして、自分のこれまでの不安めいたものを一掃してくれたのが


最初で最後の万華鏡を我が銀座ヴィヴァンで選んでいただいたこのお客様。


万華鏡を紹介し続けてきて、、、、良かった。。。改めて教えていただいたと思うのです。


本当に感謝してもしきれないほどです。    


お客様と自分 という立場でなく、やはりそこに


存在し、大切にしていかなければならないこと、


それは「心」だと思います。

 


大切なお客様は、お亡くなりになりましたが   僕の心の中では、一生生き続けていきます。



万華鏡&イベントプロデューサー・ゴーがGO!


Look of the sky  


母の最愛の息子たちへ願うこと・・・


空を見ては


思い出す。  僕も母であるお客様と同じく、一生強く願うことをここに誓います。。。


ご冥福をお祈りします。


本当に、ありがとうございます。