引き出した 感動貯金 5年分~第27回サロマ湖100kmウルトラマラソン完走記8 | 神社仏閣旅歩き そして時には食べ歩き

神社仏閣旅歩き そして時には食べ歩き

還暦を過ぎて体にトラブルが出始めて、ランニングを楽しめなくなりました。近ごろはウォーキングに軸足を移して道内の神社仏閣を巡り、御朱印を拝受したり霊場巡礼を楽しんでいます。いつかは四国八十八ヶ所巡礼や熊野詣をすることが夢です。by おがまん@小笠原章仁

(8)頑張るところはここじゃない


 あれはどのあたりだったでしょうか。左側の歩道に、スタッフジャンパーを着たカメラマンがいます。スタート前に写真を撮っていただいたランナーズのカメラマンの方でした。そういえば、取材したランナーのレース中の写真を撮るって言ってたな。そう思って、手を振って合図をします。やはりカメラマンさんは私の写真を撮ってくれました。


 他に取材を受けたランナーはどういう走力の方かわかりませんが、きっと私が1番最後だったことでしょう。寒い中を待たせてしまって申し訳なく思いました。


 やがてコースはサロマ湖を離れ、内陸の畑地帯に入っていきます。ここは私にとって前半最大の鬼門です。距離にして30km前後。疲れも出てきます。そんなときに数キロにわたって走る単調な農村地帯。気持ちが折れやすい地点です。06年も10年も、ここを抜けたて35km地点に達したときにはかなり精神的なダメージを受けていました。


 でもコース変更によりここを走る距離は短くなっています。これは私にとって幸運でした。


 Chamaさんたちに再び追いついてしまったのはどのあたりだったでしょうか。30kmの手前だったことは間違いありませんが、畑地帯に入る前だったか後だったかよく覚えていません。でも三里浜ではけっこう離れていたのに、あれから10kmあまりで追いついてしまったのはちょっと速かったかもしれません。もちろん、Chamaさんにも速いんじゃないか?と指摘されました。


 今までの私ならこのまま我が道を行くで抜いていったかもしれませんが、調子に乗らないためにここは集団に加わります。


 前方には見覚えのある麦わら帽子が見えます。なべちゃんでした。以前は紋別にいたなべちゃんですが、今は福島県で看護師として頑張っています。7年ぶりのサロマ挑戦ということでしたが、7年前というと私が初挑戦した年です。あの年もなべちゃんとは抜きつ抜かれつで走り、最後はともに12時間50分台で初完走をしました。徐々になべちゃんとの距離が詰まってきていますが、ばててペースダウンしているのでなければいいのですが・・・。


 やがて30km地点を通過しました。3時間33分13秒でした。この間の5kmは35分35秒と、ちょっと遅くなりました。Chamaさんたちに追いついてその集団に入ったおかげでペースが落ち着いたのでしょうか。この間の10kmも1時間09分52秒ですから思い通りのペースです。


 それから私たちはなべちゃんを追いかけるような形になりました。でもしばらくは一定の間隔で進みます。私たちもなべちゃんを吸収しようとしているわけではありませんし、しばらくそのままの間隔で走りました。


 それでも徐々に間隔は詰まり始め、やがてなべちゃんをも吸収し、しばらくは一緒に走りました。


 鬼門の畑地帯を抜け、国道238号に出ます。ここまでは極めて順調です。足は若干疲労を感じています。膝の痛みは徐々に増してきていますし、左足首も痛くなっています。でもまだまだ十分に走れます。ここからゴールまで70km近くあると思うと気が遠くなりますが、今回は70kmのレースと思って走っています。残り40kmを切っていますから、十分走れる状態だと思います。


 しばらくはChamaさん、Iさん、なべちゃんと話をしながら走ります。


 「頑張るところはまだここじゃありませんよ。まだまだ先に来ますから」


 完走経験の乏しい私となべちゃんにChamaさんがアドバイスをくれました。このアドバイスの意味を、このあと私は身をもって知ることとなります。


 35km地点を通過します。4時間07分51秒です。やはりなべちゃんの背中を見ながら走っていた分、どうしても追いかけてしまっていたのかもしれません。34分38秒と若干ペースが上がっていました。とはいえ極端にペースが変わっているわけではありません。おおむねイーブンペースを保っています。


 Chamaさんによると、このペースでいくとフルマラソン地点をほぼ5時間程度で通過する予定とのことです。私としてはフル地点は4時間台で通過すると思っていましたから、そう聞くと「いくらなんでも遅すぎたのではないか?」と若干不安になります。もしも1人で走っていたら不安に負けてペースを上げてしまったかもしれません。でも完走経験豊富なChamaさんが大丈夫というのですから間違いありません。ビクビクしないことに決めました。


 ここまではほぼ平坦でしたが、このあたりから徐々にアップダウンが出始めます。私はこれまで同様に、上りでは歩きを挟みながら行くことにしました。


 歩いているとChamaさんを中心とする集団からは若干の遅れをとります。でもだからといって慌てて追いつこうとはしません。あくまでもマイペース、自然体で走っていると少しずつ間隔が詰まっていきます。そして追いついたら私もそのまま集団の中に位置をします。


 やがて芭露の市街地に差しかかりました。このあたり、何カ所かトイレもあります。そろそろ尿意を感じつつあるところ。トイレに寄るかどうか迷いましたが、まだ寄るほどのことではなさそうです。そのまま通過しました。40km手前のエイドでひと息ついて、私たちはまた走り出しました。(つづく)


(9)手ごたえへ



(1)完走しなければならない理由

(2)応援FAX

(3)旅の始まり

(4)作戦

(5)予定通り

(6)消えた折り返し点

(7)後方待機