罪悪感の罠から抜け出す道
こんにちは。カウンセリングサービスの山根しんいちです。
毎週月曜日に、山田耕治カウンセラーと隔週交代で、「仕事の心理学」をテーマにお届けしています。
今回のテーマは、「罪悪感の罠から抜け出す道」です。
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男性がいて女性がいる職場では、恋愛に発展するようなこともよくありますね。
カウンセリングでお話しをお聴きしていくなかで、最初は仕事に関するご相談でお話しをお聴きしていくのですが、そのうちにふと恋愛や夫婦関係のお話しに変わっていくこともあります。
恋愛も仕事もわたしたちにとって大きな関心事ですから、それももっともなこと。
また、どちらも大きな関心事だけに、恋愛や夫婦関係がうまくいかないと、仕事もどこかうまくいかなくなるということもあります。わたしたちにとって、こころは1つしかないのですから、それももっともなことでしょう。
職場での恋愛。これもどちらもシングルの身であれば、職場恋愛から職場結婚への進んでいくハッピーストーリーもあり、けっこうなことです。
ところが、どちらか、あるいは両方ともが既婚同士の恋愛となると、そこにはさまざまな問題がはらまれています。
一般的には、既婚でありながら恋愛してしまった人、あるいは相手が既婚であることを知りながら恋愛してしまった人のことを悪いとされます。ところが、その人のこころの中で起こっていることに思いを馳せると、単純にいい/悪いなどという二元論で片付けられない複雑な問題が横たわっています。
奥さんがいながら職場の女性と恋愛関係になってしまった男性を仮にAさんとします。
Aさんのこころの中には、奥さんとの間になにか満たされない思いがあり、それでもなんとかしようとがんばってきたところに、ふとある女性が現れます。Aさんの前で無邪気にふるまうその女性は、どちらもが気づかない間にAさんのこころの中に生じていた満たされない部分を満たしていました。
すると、ふとしたきっかけから、どちらともなく距離が近づき、恋愛関係へと発展してしまいます。
この時にAさんのこころの中には、ずっと満たされなかった部分が満たされた満足感とともに、罪悪感というのがうずきはじめます。この罪悪感というのが、なんとも嫌な感情なのですね。
そして、いったんそういう関係ができてしまったAさんにとっては、家に帰って奥さんの顔を見ることで再びその罪悪感を強く感じてしまいます。でも、ここはその罪悪感をなんとかやり過ごしたいところですね。その緊張感を感じながら、なんとかうまくごまかしている。すると罪悪感と緊張感という二重のストレスを感じるわけです。
そうすると、かすかな罪悪感は感じるけれども、一方で満たされなかったこころの隙間を満たしてくれる彼女という存在にますますはまっていくということになってしまいます。
ところが、Aさんにとっての彼女は麻薬のようなものなのですね。一時的に心地よさは感じるものの、はまればはまるほどAさんにとっての罪悪感が強くなっていってしまう。Aさんにとって、ここはあり地獄のようなところになってしまいます。
さらに悪いことに、Aさんの罪悪感は、家に帰って奥さんと顔を合わせるときにより強く感じてしまうわけです。
ここから抜け出せずに進んでいってしまうと、最悪の罪悪感から抜け出したいAさんにとっては、より罪悪感を強く感じる奥さんとの関係をなんとか終わらせたいという発想をしてしまうことになります。
一方、奥さんは奥さんで、Aさんが奥さんと接する時に感じる罪悪感を、奥さんも共鳴して同じように感じるということが起きてきます。すると、Aさんの浮気が発覚した時に、どこかで「わたしが悪い?」という発想が奥さんの中に生まれるきっかけとなります。
それも辛くてしかたないために、その感情を感じたくないという奥さんのこころの中では、代わりに「怒り」という感情がわき上がってくることがあります。すると、奥さんの怒りの矛先はAさんということになります。
かくして、奥さんから怒りを向けられたAさんのこころの中の罪悪感はさらに強くなり、これに耐えられなくなったAさんは、逆切れという形で奥さんに向けて怒りをぶつけるということも起こってきたりします。
一般的には悪いとされるAさんです。でも、Aさんのこころの中はかなりボロボロになっているということ。そして、Aさんに救いがないということがわかるでしょうか。そして、ここまではまっていまうのは、根がまじめな人なのです。
Aさんにとっての救われる道は、勇気を持って奥さんのところに戻ることです。過ちを認め、(すでに発覚していた場合は)奥さんに謝ることです。これが、Aさんにとって、罪悪感に向き合う必要がある困難な道ですが、罪悪感から楽になる1番の近道です。もし、まだ発覚していなかった場合は、何も言わずにこころの中で奥さんに謝罪する方がいいでしょう。
間違えて犯してしまった過ちは、それを認めて謝罪することが、罪悪感から抜け出す道なのです。
では、また次回をお楽しみに。
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