「やがて君になる」 | 樹海のリュケイオン

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関西のフリーナレーター・樹リューリのブログです。

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仲谷鳰さん著。現在2巻まで。鳰は「にお」と読みます。

なんだかもう、最近のマンガって絵がうますぎやしませんか。
新人、特に女性作家にえげつない画力の持ち主がちらほら(どころではない)。線が美しい。ホンマに人間の手が描いてんのかと信じられませんが、じゃあデジタルなら出せるのかというとそれもそれだけではないような。島本和彦さんが故みず谷なおきさんの原稿を見て「人間が描いた線とは思えなかった」と言ったエピソードが思い浮かびます。

今は「新人」といっても、「雑誌に載るのが初めて」なだけであって、発表の場はいくらでもあって、そういうとこで十分に研鑽を積んだ挙句のデビューだからなのでしょうね。

SNSの発達がプロの仕事を素人レベルに引き下げているという意見に、一理あると首肯する立場ですが、マンガだけは逆を行ってんじゃなかろうかと思うのです。いやいや閑話休題。

いわゆる百合モノ。題材+透明なピュア感が、おっさんに二重の背徳感を味わわせますが(笑)。
最近は商業誌でもBL、百合など、同性愛を扱った作品が珍しくなくなりました。それだけに、ただただ「女の子が女の子に恋する」だけではなんちゅうことないわけです。

「やがて君になる」の秀逸な点は、やはり主人公の性格と状況設定、「まだ恋愛ができない」主人公が「好かれる・想われる」、というとこです。だと思うのですw
恋愛至上主義といいますか、恋はいいもの、みんながみんな恋したいみたいな風潮、いやもはや常識というレベルの不文律がありますが、実際はそうでもないでしょ。恋なんてそんなキラキラしたことばっかりじゃないし、恋ゆえの悲劇もあるし、決して「しなきゃいけない」もんではない。

好きになる人にめぐりあう確率って、思ってるより低いと思うのです。

だから「恋しない」主人公というのは、ある種現代のスタンダードな人物像なのではないでしょうか。恋愛モノの主役にすえる性格設定として非常に面白いと思います。

繊細なものは危うくて、その危うさは残酷さをはらんでいて。
だからこその目の離せなさもあります。結末が楽しみなマンガです。

余談ながら、読後、主人公を演じるならどの声優さんかなとボンヤリ考えていたところ(すぐアニメ化されそうなのですw)、実際単行本販売促進のPVが作られてて、そこで主人公の声を思った通りの声優さんが演じてました。わしの読みドンピシャやで(ドヤ顔)w