農家の「戸別所得補償」は「プロ農家」の力を削ぐ「ばら撒き」だ | 尾張エクセルの「日々精進ブログ」

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 デヴィッド・リカード(David Ricardo)は、「自由貿易擁護の理論」を唱えた

イギリスの経済学者である。彼は「各国が比較優位に立つ産品を重点的に

輸出することで経済厚生は高まる」とする「比較生産費説、比較優位理論」

を主張した。


 このリカードの「比較優位理論」は、貿易自由化論議の基礎となっている。

日本は、国家戦略として当然のことだが、「得意な分野に資源を集中する」

べきである。貿易自由化をすれば「農業から工業への資源移動」が起きて

日本経済が全体として得る利益は大きい筈である。これが「比較優位」の

考え方そのものである。この考え方によって、貿易自由化を進めていけば

日本の農業の未来はいっそう厳しいことになる。


 ところが最近の国際経済学の世界では、リカードが打出した「もう一つの

理論」が注目されているという。それが「差額地代」という考え方だ。日本の

農業に即してこの理論を説明すれば、日本の農家の中には潜在的に高い

生産力を保有している;「プロ農家(=農業を主たる収入源としている)」と、

各種の保護政策の中で、かろうじて農業活動を行っている生産性の極めて

低い「兼業農家」がいる。


 日本の農業が国際競争に晒されれば、「農家の間での再編」が起こって、

より競争力のある「プロ農家」の方へと、生産が集中していくというのである。

当然であろう。「市場開放や競争激化」は、日本の農業を弱体化させるもの

ではなく、むしろ強化させるというものである。


 菅民主党政府が進めている農家の「戸別所得補償政策」は、日本の農業を

ますます弱体化させる結果となりかねない。その問題点は、農家に所得補償

をするということではなく、兼業農家まで対象に含めて意味のない「ばら撒き」

を行っているということである。

 一方では、日本の農業を、いきなり「グローバル競争」に晒すことはできない

いう議論がある。それなら「戸別所得補償」というハンディをつけて国際競争

晒せばよいのである。


 補助金で守られていれば、農業が、「自由貿易協定(経済連携協定)締結の

障害」となることもないだろう。また、補助金が出ているとはいっても、海外との

競争に晒されれば、日本の農業の生産性や競争力強化も進むはずである。

 ただ全ての農家に補助金を出すのでは、補助金の効果を半減させるだけで

なくて、プロ農家を不利にさせる結果になる。政治家が、全ての農家に対して

補助金を配りたいのは分かる気もする。何故ならば、兼業農家の方が多くの

票を持っているからである。しかし、「それでは農業を守ることにはならない」と

いうことを国民は理解すべきである。また「プロの農家」は、ばら撒きによって

自分たちの機会が制限されることに対して批判の声を上げるべきであろう。