Kと嘘とビデオテープ | DRIFTER

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~漂流者の日々徒然~

それは突然の出来事だった。車を停めて食事休憩しようとしていた時にいきなり車のドアをドンドン叩く音がしたのだ。

見ると車の横に黒いスポーツシャツ、黒いスラックス、白いベルトに白い靴、金のネックレスをしたイカニモダンディな男(つまりヤ○ザ)が僕にニッコリ微笑みかけていた。。。

そのダンディは僕の車のドアを勝手に開けて中に乗り込んできた。

な、な、何する気?

僕は男が手に持っている〈タオルを被せた白い手提げ紙袋〉に気が付いた。ま、まさか僕にやばいブツでも運ばせる気なのか???


すると男は広島弁で言った。

「大将!わしゃあ取立ての金の代わりにこげぇなモン掴まされちまってのぉ!悪いけんど助けるち思て一本買うてくれんかのぉ!?」

男がタオルを取って中身を僕に見せた。案の定大量のえろビデオ・・・


僕は「いや、そんなの観る場所も時間も無いから結構です・・」と断ると男はしつこく食い下がってきた。

「観る時間くらいはナンボでも作れるじゃろぉ?」

む・・しぶといな・・

「いや、実はウチにはビデオデッキ無いんです・・」←大嘘

「むぅ?DVDかの?DVDも扱ってはおるんじゃが・・でもまぁビデオでも友達んトコでも行って観ればええやろが?w」

くうぅ・・笑顔が逆にコワイよ!・・何とか穏便に済まさねば!

男は僕の食べかけの弁当を見て言った。

「うん?鮭の皮がよけてあるのぉ?大将は鮭の皮は嫌いなんかの?」

「えぇ、まぁ何となく・・」

「皮はコリコリして香ばしゅうてわしゃ好きじゃがのぉ!」

んなことどーでもいい!

「とにかくビデオは・・ウチには嫁さんもいるので観る機会が無くて・・」と断ると男はこう言った。

「大将もその嫁さんと一生添い遂げるわけやなかろ?一人になってからジックリ観ればええがよ♪」

ほっとけ!!!

「とにかく急いで仕事に戻らなくてはいけないので」と半ば懇願してやっと車を降りてもらったのだが、男は車のドアを閉める直前、僕にこう告げた。


「わしゃのう・・大将みたいな冷たい男は嫌いじゃけぇ。。。」


「・・・・・・・」

男が停まっている別の車に売り込みに行くのをミラーで確認してやっと安心した僕だったがそこでハタと気付いた。


「えろビデオなんて興味無いからいりません!」と言えばよかったのだと。


やっぱり我ながらそこまで激しい嘘はつけなかったのだなぁ・・