今回の介護保険関連法改正案とは何だったのか、知ることもなく終わった感がしますので、手遅れとは存じますがおさらい的に僕の味付けが悪くなると評判のトッピングを盛り込みながら解説してみます。
 
虚偽や語弊がいっぱいあると思うので、正しくはこちらからどうぞ熱心に読み込んでいただけると宜しいでしょう。
 
第193回国会(常会)提出法律案(厚生労働省)
 
ちなみに今回の介護保険関連法案ってのは、上から二番目の「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」が正しい名称って事です。
 
 
さて、その「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」ですが、一部のマスコミが取り上げていた「2割負担の方の一部を3割に引き上げ」っていうのはごくごく一部、むしろカムフラージュでして。主に5つを変更するよって話でした。
 
 
1  自立支援・重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組の推進(介護保険法)
 
2 医療・介護の連携の推進等(介護保険法、医療法)
 
3 地域共生社会の実現に向けた取組の推進等(社会福祉法、介護保険法、障害者総合支援法、児童福祉法)
 
4  2割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3割とする(介護保険法)
 
5 介護納付金への総報酬割の導入(介護保険法)
 
 
個人的に見た場合には結構な問題や波乱を招く危険性てんこ盛りの出たとこ勝負な法案なんです。
 
いかにも「現状を見ていない人物が数字だけ見て『こうすりゃいいんじゃん』的にしました」感満載なんですが、少なくとも今回マスコミに注目されていた「3割引き上げ」は全くメインではないことをまずお知りおきください。
 
「2」「3」については、絵に描いた餅的法案内容に感じてますし、「4」についてはご承知の通り。で、「5」はこの時代まで先送りしてきてたし、やむを得ないんじゃないかなって僕は思ってます。
 
 
暴論カテゴリ設置前の暴論でも触れましたけど、僕が一番心配しているのは、実は「1」です。
 
保険者機能の強化、という表現になっていますが、裏を返せば財政を人質にとった保険財政削減の矢面に立て、という意味に見えます。
 
認定率の低下や保険料の上昇抑制に成功した自治体の取り組みを全国に広めようぜ♪…という、知らない人が見ると「おお!介護される人が減って介護保険財政が浮くなら良い仕組みじゃん!」と思えるでしょう。
 
これを言い換えると「要支援・要介護者が減ったよ!」という実績を持てば介護保険財政維持に貢献したというボーナスを与えます(さらに言えば達成できなければ金はやらん、ってことです)。
 
 
この権限をチェックできる機関が存在しないままで、全権限を自治体に預けることは、自治体にとってなんとでもできる数字のマジックの範囲内って事がヤバいと思うんです。
 
保険者って誰?って言ったら「各自治体」な訳ですよ。
 
じゃ、認定すんのって誰?って言ったら「各自治体」なんですね。
 
で、保険料払うのって誰?ってやっぱり「各自治体」ってことです。
 
 
この仕組みの危うさを学校的に当てはめてみましょう。
 
合格者を低下させれば良くて、奨学補助金を減らせば、補助金を出しますよって仕組みと考えてみたらどうでしょうか。
 
簡単すぎません?要するに試験を難しくして、奨学金該当者を減らせばいいんですから、ちょっと倫理性が掛けただけで「保険料の上昇は抑制できる」ってことです。
 
要するに、認定調査を厳しめにして、保険料の上昇を抑えれば助成金が出る。そんな仕組みです。
 
もちろん本来の狙いは「お年寄りがなるべく元気になる仕組みを作って認定該当者者を減らし、保険料を抑制しなさい」って話です。が、それは基本的には僕たちが血と汗をにじませても歳は取っていきますし、ますます長生きできる時代にあってはそうそううまくはいかないものです。
 
が、手元に「認定率を下げる方法」があって、「保険料上昇を抑制する手段」が同じく手元にあります。恐ろしさが分かりますでしょうか。
 
 
もちろん「認定切りしてインセンティブを受けよう」などとあからさまに考える方はいないでしょう(いないと信じることは大事です(笑))。が、しかし、地域行政と言えど「組織」です。
 
このままでは財政的インセンティブが受けられない恐れがあると通告を受けた役職者は、部下にどうしろというでしょうか。もちろん、「認定を厳しくしろ」なんてことは言いますまい。こんな感じで言うんじゃないでしょうか。
 
「現在の認定者の増加状況では財政的インセンティブは受けられない。そうなれば市の財政に大打撃が出る。どうにか認定者を減らす努力をするように…」
 
これを受けたその部下は、その部下にどう伝えるでしょう?では、その下の現場サイドにはどのように伝わっていくでしょうか。ノルマがある訳ではないかもしれないけれど、プレッシャーや何らかのハラスメント的要素は孕むであろうことは容易に想像が付きませんか?
 
 
魔法のように認定率を低下させる方法が手元にあったら。しかも、認定率を下げた人は上司に褒められるばかりか優秀とみられ、上への道のりが開けそうな雰囲気です…10年経ったらその人が上司でしょう。部下になんと伝えるでしょうね。
 
いやいや、基準はちゃんと国で定められていて、どこでも一律です!目の前に認定が必要な人がいて、そんなささやかな私情に流されるような公務員などいない!…と、言われて、森友学園のようなケースがあったのに信じろと?この場合、責任はどこに行くのかって・・・これを今国会で成立させた国会議員になりますよ?で、その国会議員を選んだ国民の責任に来ます。
 
森友学園の土地の問題とまるっきり無関係じゃないんですよ。公務員のモラルがどれほど高いのか知りませんけどね。悪夢のような出来事が起きないと良いですね。「認定切り」。
 
 
で、皆様的にはいかがですか。この法案の盛り合わせ。いかにもおなかを壊しそうな感じ、伝わりましたでしょうか。
 
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