良かった本二冊 | 本とロックな日々

本とロックな日々

Come al solito いつものように

本とロックな日々

小説を二つ読みました。

 市井豊さんのデビュー作『聴き屋の芸術学部祭』(東京創元社 ミステリ・フロンティア67)はスカイエマさんの絵が素敵で手に取りました。T大芸術学部二年の柏木君は「聴き屋体質」で、話を聞いてもらいたい人が周りにたくさん集まってきます。個性的な友人たちとのコミカルな会話を楽しめる軽いミステリ短編集。「からくりツィスカの余命」は特に面白かった。作者の市井さんは日大芸術学部卒業とのこと。日藝の雰囲気がこんななのかな? 「先輩」みたいな人もいるのかなぁー。

 誉田哲也さん『幸せの条件』(中央公論新社)も良かった。バイオエタノール用の米を作れる農家を探して来い!という業務命令で、24歳の梢恵は長野県の農村へ。まるで相手にされず、成り行きで農業法人に住み込みで農業実習をすることに。投げやりな性格で会社からも彼氏からも愛想をつかされる梢恵には、読み始めの頃はイライラさせられる。でも経験することに恵まれなかっただけなんだと思う。農家での生活を通して自分の人生を掴むことができてよかった~。
 作品の中で東日本大震災が起こります。東京のアパートでテレビの実況で津波の様子を見ていた梢恵が、震災を受け止めていく姿に共感しました。日本の農業問題、新エネルギーの開発なども絡んでタイトルも真面目だけど、登場人物が楽しく生き生きとしてるのですらすらと読めました。