勘七ノ沢 | 鬼川の日誌

勘七ノ沢

  丹沢、勘七ノ沢  14,6,1


  この頃の丹沢はシロヤシオの季節である。昨年は余り当たり年
 ではなく、もう一度桧洞を遡り、桧洞丸にシロヤシオを見に行く計
 画を立てたのだが、日程が可能な人がいなかったので中止。
 伝え聞くところでは今年は素晴らしかったそうだ。残念。

  日帰りならということで、恒例の勘七ノ沢に行くことにした。
 県民の森ゲートまでタクシーで入り、二俣までは直ぐである。
 二俣で装備を着ける。今日は5人。
 沢に降りて最初に大きな堰堤を越える。ここにはお助け紐が
 ぶら下がっている。9:40頃。



  9:50前にはF1に着いたのだが、先行組みが登攀準備をして登り
 始めたので待つ。トップもかなり慎重で、フォロワーたちは一人一人
 タイブロックを使い登っている。フリクションノットよりは確実かも知れ
 ないがテンションが掛かるとロープを傷めるので、沢で使うのは余り
 見ない。フォロワーは見たところあまり沢慣れない人たちのようで、
 テンションも掛かりかなり時間が掛かった。


  そんなわけで私が登りロープをセットしたのが10:15頃となった。
 皆にはフリクションノットで登ってもらう。


  ここは最初の取り付きだけだが立っているしホールド細かいので
 それなりに難しい。

  F2には10:30頃。先行Gの最後が取り付くところだった。
 それに続き登り一応ロープを固定する。ここは高さがあるし、岩が
 脆いので要注意だが、ホールド豊富でロープは補助程度。




  皆も問題なく登ってくる。この上は大きな堰堤である。




  堰堤を越えてF3に着くと、先行Gはその手前の丘に上がり、早くも
 休憩しているようである。
 ここは右手をヘツってもいいし、左の崖を登ってもいい。今日は右手
 淵をヘツる。お助け紐もあるが結構微妙。いいトラバース訓練。
 しかし落ちても濡れるだけで問題ない。 


  その先は滝右手のつるつるの壁を登る。10:55頃。


  私たちがF3を登り終えても、休憩していた先行Gはどうしたのか
 取り付いてくる様子もなく、その後追いついてくることもなかった。
 F3を終えて、5分ほども歩くとF4が見えてくる。
 なかなか迫力ある2段滝で、一見しただけでは上部は登れそうに
 は見えない。上部右手にチムニーがあるのだが。


  一段目は易しく、チムニーに取り付くまで滝つぼ横をヘツル。
 チムニーは3mほどで難しくはないがいつも濡れていて滑りやすい。
 上にトラロープのお助け紐がぶら下がっているが、余り信用出来
 そうにない。これを登ったところで昼飯休憩。11:20頃。



  この先F5まで堰堤をいくつも越えていく。堰堤を直登するのは
 ホールド細かく結構難しいが、余り高くないところは練習で登って見る。



  12:05頃先にF5大滝が見えてくる。

  勘七ノ沢のハイライトである。12:10頃。
 ロープを出しビレイしてもらい、私が取り付く。2mほどの棚に乗ると
 最初のハーケン(近い2ヶ所にあり上にも)手が届く。さしあたり最初
 の支点にロープを掛ければ一安心。滝の登攀は何より足の置き場が
 濡れて滑るから、乾いた岩を登るようには行かない。一歩一歩確認
 しながらである。
 3ヶ所目のハーケンはよく探さないと見つからないが、慎重に行けば
 なくても行ける。ここは3級(+)くらいで難しいわけではない。


  滝を上がったところにしっかりしたボルトが打ってあり、これを支点に
 ロープをセットする。ここはちゃんと上からビレイする。ロックできる
 ビレイでないと写真は撮れない。


  皆の登攀の様子。登り終わりロープを収納したのが12:35くらい。


  F5上、小滝が続く。今日は少し水が多いようだ。


  12:50頃ゴルジュに入る。


  入って直ぐ、ちょっとした釜がある小滝越えはいつも少しだが
 水を被ることになる。ゴルジュ内はその後も小滝が続くが問題ない。





  ゴルジュの抜け口の小滝。 


  シャワーを浴びながら越える。気持ちがいい。13:00頃。


  この先がF6と壊れた石積み堰堤である。


  いつもは滝のほぼ真ん中を登っていけるが、今日は少しだが
 水が多く、苔むして滑りそうで滝右の壁際を登った。


  二俣である。13:15頃。本流は右で4mほどの小滝。
 左は大崩壊しているようだ。岩盤の上の土が根こそぎごっそり落ちて
 いる。白い岩盤がむき出しだ。昨年も崩壊していたが、規模が大きく
 なっているようだ。


  二俣の滝を越えた辺りの右手の尾根がエスケープに使えそうだ。
 この手前で1人の沢靴のフェルトが剥がれ応急で補修して登って
 いることもあり、ここで尾根に逃げることも考えたが、まだ時間も
 早く結局そのまま登る。13:20頃。


  しばらく登ると右手に湧き水がある。岩から滲みだしているので
 きれいで十分飲める。またこの沢の目印ポイントでもある。
 13:40頃。


  直ぐ上の崩壊した小滝とそれに続く小滝。


  これを越えると大規模な崩壊地となる。水は伏流している。
 この崩壊地も現在地確認の目印である。13:50頃。


  崩壊地が終わったところで沢は分かりにくいが三俣となる。本流に
 右手から2本の枝沢が合流している。(枝沢からのガレの押し出しで
 本流が堰きとめられている感じだ。)
 この左岸からの2本目の枝沢が花立への入口でいつも何か目印が
 ぶら下がっている。14時頃。


  そしてこれに入り登ると直ぐに張り出した岩があり、この裏手が溝状
 の滝となって少量の水が流れている。大体いつも苔むして上半部が
 一枚板を寝かせたようで滑る。
 この岩とその裏の小滝が、この枝沢が間違いないことの目印だ。
 ここが結構滑るので、滝を越すまで沢靴で来たほうがいい。


  私たちもこの上で休憩を兼ねて、沢靴から登山靴に履き替えた。
 14:30頃にまた歩き始める。


  枝沢を詰めていくと、沢中に根を張ったブナ系の木が立っている。
 葉を見るとイタヤカエデの木だった。そしてその先で右手から
 崩壊の激しい小沢が合流してくる。入口に浮き気味の岩を2、3本
 の木が抱いている。この沢中の木と浮き気味の岩二つが目印でこの
 枝沢が花立へ続いている。年々崩壊が進んでいる。14:40頃。


  崩壊しガレガレで踏むたびに岩が落ちるような急峻な沢をなるべく
 お互い離れないように繋がって登っていく。距離が離れると落石を
 起こした時そのスピードが上がり、打撃が大きいからだ。
 目の先に下が大きく浮いてしまった大岩が沢中に張り出している。
 今にも落ちそうでとても恐い。
 しかし今すぐ動くというわけでもなさそうで、上を気にしながら岩の下
 に行き、岩に乗りあがる。14:50過ぎ。


  上がってみると岩の上ほとんどは埋まっているようだし、中間部に
 括れがあるが、更に上の岩とつながっているようにも見える。
 上と一体ならそう簡単には落ちないだろう。


  しかし12年10月に登った時の写真があり、これを見ると落ちかかっ
 ている岩は上とは繋がってない。今よりはるかに不安定な感じだから
 もしかするとこの岩は既に落ちてしまって、その上の岩が今は露出して
 いるのかもしれない。 


  昨年の5月そういえば、この枝沢に入った下のほうで巨大な落石
 があった。この同じ場所は岩に乗りあがったところしか撮ってないが
 今回と同じである。今回この枝沢入り口近くの落石はもうなかったから、
 こんな巨大な岩がごろごろと転がって動いているのだと思われ、見る
 ことは出来ないが、恐ろしい光景だろう。こんなのが細い沢を動いたら
 逃げようもない。


  10年の岩が落ちてしまったのなら、その上の岩はそう簡単には
 落ちないと思われるが、しかしあれだけ浮いているとやはりとても恐い。
 この枝沢に入るのは大雨の後等は止めたほうがいいかも。
 (上の写真のような岩の場合、大した雨でなくとも岩の下の泥が雨に
 洗われ掘られてバランスが崩れれば、ごろりと動くし、これだけ重そうだ
 と相当転がってしまうだろう。)

  大岩を越えて急峻なガレた沢を詰める。15時頃。


  脆い小さな涸れ滝を越えて、ようやくしっかりした岩に取り付き
 これを越えれば難所は終わりである。
 これから右手方向に、グズグズの柔らかい斜面を登ると一旦
 小さな尾根に出る。上には花立山荘の建物が見える。
 15:10頃である。

  到着しました。15:15頃記念写真です。少し休みです。


  花立からの降りはいつもながら結構大変です。花立の階段を降り、
 堀山の家を過ぎる。カエデの青葉がきれいでした。


  見晴らし茶屋を16:40頃。


  大倉には17:10頃に下りつきましたから結構早かった。


  渋沢駅に出て飲み屋を探していると、開店したばかりでサービス
 しますという案内に誘われて、新しい店に入りました。とはいえここは
 ちょっと前まで丹沢に来たときは頻繁に使っていた店でした。それが
 潰れて、その後に始めたということでした。サービス業も大変です。
 この新しい店は魚介類が新鮮でおいしくいい店を見つけました。
 沢登りの後は何といってもおいしいビールでしょう。これにおいしい
 つまみが付けば何も言う事はない。

  *
  7月9日南木曽町読書(よみかき)という珍しい地名の場所で起った
 凄まじい土石流の映像を見ました。昔私も南木曽岳に登ったことが
 ある。中学生が犠牲になり何とも痛ましい。
 沢の上流2ヶ所で起ったらしい山体崩壊が合流し堰堤を遥かに越えて
 一気に押し寄せた様は恐ろしいの一言。一目でも数百どころか千本
 を越すような倒木が、当然見えないけれどもその下には大岩が無数に
 転がっているわけで、その破壊力たるや想像を絶する。
 大島町の昨年の土石流はもっと大規模だったわけだが、その瞬間を
 見ることはめったにない。
 私たちはほとんど見ることはないのだが、大雨の後沢では年中規模は
 違うとはいえ、大岩や倒木がごろごろと転がっているのだろう。