大神らしさ | 大神Blog

大神らしさ

京都の嵐山をぶらっと散策して、久しぶりに太陽の光を全身に浴びてきた神谷です。

昨日、イナバが疾飛丸について書いていましたね。
いきさつはあの通りなのですが、改めて読んでみて、色々と思い出しました。

前回の僕のブログで、ディレクターの仕事の醍醐味を、
「作品が、自分の想像を越えて素晴らしいものに高まっていくのを見るところにある」
と書きましたが、「大神」でもそんな場面がたくさんありました。その大きな例を、
具体的なエピソードを挙げてお話したいと思います。

※今回はネタバレを含むのでご注意下さい※

「大神」の魅力の一つに、「穏やかな世界観」があります。
「癒し/和み」をテーマにした作品ですから、グラフィックだけでなく、
登場人物の会話や、妖怪、ダンジョンのあり方に至るまで、
「やさしさ」が行き渡るように細心の注意を払いましたが、
この中でも「ダンジョン」については、実はスタッフからの提案による
強い影響がありました。

「大神」のダンジョンのあり方を強烈に印象付けたのは、妖怪である天邪鬼たちが
会話キャラクターとして登場する「十六夜の祠」です。
第一章のボス「ヤマタノオロチ」が君臨する、ゲームプレイの山場となる巨大ダンジョン
ですが、これを制作するに当たって、ダンジョンの構造原案、制作を担当してくれた
デザイナーのカタカイ君から、「ここでの攻略に生贄の前菜料理を作るという
エピソードを盛り込みたい」という提案が最初にありました。

この話を聞いた時、僕は「第一章のクライマックスのダンジョンなのに、アマテラスが
前菜作りの手伝い!?」とビックリしましたが、こんな事を提案出来るカタカイくんの
柔らかアタマに感心しつつ、その話が気に入って、すぐその方向で取り掛かって
もらうことにしました。作業を進めていくと、会話キャラクターとして天邪鬼が必要になり、
人間用のモーションに対応した天邪鬼モデルを作って画面に出してみると…
身振り手振りで会話し、アマテラスに引っ張られたり頭突きされたりする天邪鬼たちの
動きが面白い!! 会話のテキストの方向性も、トボけた感じを出そうと一発で決まりました。
他にも「料理長を出したい」「アマテラスが被る変装用(?)のお面に絵を描きたい」と
現場からのアイデアが次々と出てきて、「十六夜の祠」の完成度は、どんどん上がって
いったのです。

仕掛けに関しても、僕が指示したのは「風を使う仕掛けとして、玉を転がす場所を
用意して欲しい」という程度。後はほとんど全てカタカイ君とプログラマーのチボシさん
との手で組み上げられ、ある程度出来上がった段階で僕がチェックをした時には、
思わず「面白い!」と叫ぶほど、ほとんど修正のいらないレベルの完成度になっていました。

当時、僕はシナリオ書きに忙殺されていたので、「十六夜の祠」に自分の手で現在のような
コミカルな味わいを組み込む事が出来たかと言われると、自信がありません。
上記のエピソードは、ダンジョンのクオリティに関してスタッフに助けられたというだけでなく、
「大神」という作品のために必要な「癒し/場和み」の描写が、シナリオだけでなく、
凶悪なボスの潜むダンジョンにさえ必要だったんだと気付かされた、大きな出来事でした。

…とエラそうなことを言いつつ、第二章のクライマックスとなるダンジョン「鬼ヶ島」で、
僕はまたその余裕をサッパリ忘れて、イナバに指摘されることとなるのですが…。
でも「鬼ヶ島」自体は、テーマパークのアトラクションのような、コミカルな構造がちゃんと
出来上がっていたので、「疾飛丸」とのドラマを盛り込んだり、力の抜けた立て札
(遊戯施設の取り扱いを説明したアレです)を置くことで、急場の措置ではありましたが、
何とか「大神らしさ」を滲ませることが出来ました。

このように、色んな場面でスタッフみんなの力を借りて、
現在の大神は出来上がったワケですが、「大神らしさ」に関しては、
もう一つ「笑い」という要素についても、僕なりの強いこだわりがあります。
次回は、その辺についてお話してみようと思います。


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写真:「ミカン婆たべるー? ミカン婆」の声にエッ!?と振り向くと…