アマテラス&イッスン | 大神Blog

アマテラス&イッスン

ちょっとご無沙汰しちゃいました。神谷です。
先週水曜の回で、ゲームに全然関係のないカールのお話をしましたが、
今回は本作の主人公アマテラスと、相棒イッスンのコンビについて
お話したいと思います。

皆さんからの応援のメッセージを読んでいると、アマテラスについて
「カッコいい!」とか「カワイイ!」といった好意的な感想が多く寄せられ、
嬉しい限りです。このアマテラス、当初は全く飾り気のない、ただの真っ白な
オオカミでした。例の「普通のオオカミがただひたすらサバイバルをするゲーム」
だった頃の話です。その後、ゲーム内容に夢と浪漫の味付けをして
アマテラスは神さまとなり、それらしいデザイン性も付け加えられましたが、
それでも僕は、アマテラスがオオカミである事にはこだわり続けました。

具体的に言うと、人間の言葉を喋ったり、人間に変身したりといった、
あからさまな擬人的表現は断固として避けたのです。どんなにゲームが
夢のある世界とは言え、この最低限のルールを破ってしまうと、このゲームの
主人公にオオカミを選んだ意味が失われてしまうと思ったからです。

しかしゲームの形が鮮明になってくると、「主人公が喋らない」という事が、
もったいなく思えてきました。僕らも日常、ペットに話しかけたりする事は
良くあるので、ゲームの登場人物たちがオオカミであるアマテラスに独り言を
いう会話スタイル自体には、問題はありません。それよりも、相手が喋るのを
ただ聞き続ける受身の姿勢が、物語の演出上、少々寂しくなってきたのです。
それに関連して、以前からチームの中では、「ナビゲーションキャラを
入れよう」という声があがっていました。僕はそれに反対ではありませんでしたが、
それがゲーム的な説明をさせるためだけのキャラになるのは避けたいと思って、
慎重になっていました。しかし丁度タイミングも良かったので、この時、
ナビゲーションキャラの導入を真剣に考えて見る事にしました。

雑談のような雰囲気で、どんなキャラがアマテラスのお供をするのかを、
何人かのスタッフと話してみたのですが…「犬にくっ付いてるノミのようなヤツ」
という話から、なぜか「虫のように小さいくせに、やたらと口が悪くてエロいヤツ」
という方向に盛り上がり… 僕はそれが非常に気に入って、
その方向で本格的にキャラ立てをしました。
小さいから、名前はイッスン!

そして、イッスンが実際にゲームに入ったロム第一号が出来上がり、
チーム間でプレーした感想を募ってみると… イッスン大不評
「ムカつく」「ゲームのキャラにお前呼ばわりされたくない」など、
散々な言われようで、スタッフの意見が二分しました。
しかしそれは、イッスンが如何に個性的であるかの証明。
僕は益々イッスンが気に入り、
それ以降も更にイッスンを暴走させて行きました。

アマテラスの方も、最初は無口なだけのヤツだったのですが、イベントシーンを
制作していく過程で、必死で威嚇する敵を相手にまるで無視だったり、
つまらない事に喜んで尻尾を振ったりと、勝手気ままな態度を演出していくうちに、
彼(彼女?)の強烈な個性が段々出来上がっていきました。
言葉を喋らないからこそ、嫌味がなく、見る側のイマジネーションを刺激して、
見るのも作るのも楽しいキャラクターになっていったのです。

シナリオは、最初に骨組みを決めてから、ゲーム制作に合わせて細部を
作り込んでいくという手法を取っています。その作り込みの時、場当たり的に
登場人物とアマテラス&イッスンの掛け合いを考えているのですが…
上に説明したような二人なので、描いていて楽しくて仕方がありません。
昔話風の世界観ですから、笑いあり、涙あり、そしてほんわかムードの
シナリオになるよう気を付け、ゲーム共々、心癒される雰囲気作りを心がけて
いますので、是非そこも楽しみにして頂きたいと思います。

…ちなみに直接「大神」に関係する話ではありませんが、11年前、僕が
カプコンへの内定が決まり、入社までの数ヶ月の間にゲームの企画書を提出する
という課題が与えられた時、作成した企画書の一つが「オオカミゲーム(仮題)」
でした。
僕はこの企画書を作成するために、オオカミの写真集を買ったり、オオカミに
関する本を読んだりしたのですが、出来上がったのは、オオカミがシベリアトラや
ヘラジカ、グリズリーなどのボス(?)と戦う横スクロールアクション
…とは言え、この中にも、野に咲く花と戯れたり、ヒラヒラと舞う蝶を追ったりする
遊びが盛り込まれ、「自然」というものを強く意識した内容になっていました。
そしてこれを、「ビューティフルジョー」制作中に、合間を見て纏めたのが
例の「普通のオオカミがただひたすらサバイバルをするゲーム」の企画書なのです。
「自然」…そこには、僕の強い思い入れがあります。またいずれ機会があれば、
その自然についてもお話してみたいと思います。

…実は、課題で提出したゲームの一つには「3Dシューティング」もありました。
しかしその後「スターフォックス64」を遊び、「お…おもしろ過ぎる…
満足満足!」となって、3Dシューティング作りたい指数が激減したのでした。

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