真っ赤な夕日に船が出て行く | AFTER THE GOLD RUSH

AFTER THE GOLD RUSH

とおくまでゆくんだ ぼくらの好きな音楽よ――

AFTER THE GOLD RUSH-MAKI II ◆永田洋子が死んだ。死刑囚が獄中で病死するという、ある種不条理ともいえる結末に複雑な思いを抱く。かつて、樹村みのりは、短編漫画「贈り物」の中で“彼ら”のことを「72年の2月の暗い山で道に迷った」とリリカルに綴ったが、永田という人は、暗く寒い冬の雪山の中で40年近くも迷子になっていたのかもしれない。それはちっともリリカルではなく、極めて現実的で非情な迷路だったに違いない。

 

◆「証言 連合赤軍」という小冊子の存在を知ったのは昨年暮れのこと。発行は「連合赤軍の全体像を残す会 」。事件の当事者だけでなく、当時、運動に関わっていた人たちや、当事者の友人、さらに、運動とは無縁だった人も加わり、「何故あのような事件が起こってしまったのか」について正確な記録を残そうと、関係者へのインタビューを続けている。その成果は7冊の証言集となり、次の世代に繋ぐ重たくも真摯なバトンとなった。記録は、いまだ「72年の2月の暗い山」には到達していない。東大闘争、大菩薩峠、よど号、そして革命左派の成立。若者たちが暴走し破綻していく過程を、当事者への聞き取りで丹念に追っていく。叛乱の季節を知る上でこの上なく良質な一次資料。もっともっと多くの「若者たち」が自分の言葉で喋り出せばいい、と思う。「全体像を残す会」は、今後も「証言」の刊行を続けるという。

 

◆このところ、浅川マキばかり聴いている。朝も、昼も、夜も。素晴らしい。特に7thアルバムの「灯ともし頃」。ブルースとジャズとロックが、浅川マキというアーティストの中でミクスチャーされ、唯一無二の世界観を持った歌となって吐きだされていく。「ロング・グッドバイ」という刊行されたばかりのオフィシャル本も読んだ。彼女の意外にも陽気な人柄が伝わってくる良い本だ。読み終えた時、ぼくの中で浅川マキは完全に「生きている人」となった。そして、萩原信義というギタリストのことも気になり始めた。

 

◆「少年」という歌がいい。戦後世代への挽歌のようだ。「真っ赤な夕日に船が出て行く/わたしの心に何がある」。浅川マキの真髄を知るのが遅すぎた。ぼくはこのことを深く恥じる。

 

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