原爆投下は必要だったのか --- 池田 信夫
原爆投下は必要だったのか --- 池田 信夫
アゴラ 8月6日(木)16時48分配信
暗闘(上) - スターリン、トルーマンと日本降伏 (中公文庫)
毎年この日になると、広島で「反核集会」が行なわれ、原爆が「人類の悲劇」として語られるが、これはごまかしだ。
それは人類の問題ではなく、原爆を投下したアメリカのトルーマン大統領の決定であり、ロシア(http://digital.asahi.com/articles/ASH85226LH85UHBI008.html)も指摘するように、民間人に対する無差別爆撃は国際法違反である。
トルーマンは『回想録』で「7月26日にポツダム宣言を出したのは、日本人を完全な破壊から救うためだった。彼らの指導者はこの最後通牒をただちに拒否した」と、日本が宣言を受諾していれば原爆は投下されなかったかのように書いているが、本書も指摘するようにこれは嘘である。
原爆投下はスティムソン陸軍長官によって7月25日に決定され、大統領に承認された。これはポツダム宣言の発表される前であり、会談でも議論にならなかった。逆に、ポツダム宣言は原爆投下(飛行計画は8月上旬と決まっていた)を正当化するために、急いで出されたのだ。
ポツダム宣言に対して日本政府は明確な回答をしなかったため、原爆は予定通り広島と長崎(当初の予定は小倉)に投下され、その後に日本政府はポツダム宣言を受諾した。この意味で原爆が日本の降伏を早めたことはまちがいないが、その逆は真ではない。
原爆投下がなくても、当時すでに日本の敗戦は決定的になっており、「決号作戦」と呼ばれた陸軍の本土決戦も実行不可能だった。トルーマンはのちに「広島市民6万人より(本土決戦で失われる)米兵25万人の命のほうが重要だと思った」と、広島市の人口について誤った報告を受けたと弁明している。
トルーマンがスターリンの署名を拒否してポツダム宣言を出し、ソ連参戦の前に原爆を投下したのは、その前に日本を降伏させてアメリカが占領統治の主導権を握るためだった。その意味でトルーマンにとっては原爆投下は必要であり、それは冷戦の始まりだったともいえよう。
しかし戦略的には、原爆は無駄だった。米軍の戦略爆撃調査団報告書は「原爆投下やソ連の参戦がなくても、遅くとも1945年12月31日には日本は降伏しただろう」と書き、マッカーサーは「スティムソンが原爆を使ったのは、戦争が原爆なしで終わったら、その開発に多額の予算を投じた自分の責任が問われるからだろう」とコメントした。
池田 信夫
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150806-00010007-agora-soci
原爆投下に対するアメリカ人の見方に変化が
ニューズウィーク日本版 8月6日(木)16時20分配信
広島と長崎に原爆が投下されてから70年――。
これまでアメリカでは、原爆投下は戦争を早く終わらせるために必要な「正しい」判断だったという見方が世論の大勢を占めていた。しかし70年の時を経て、その意識に変化が起こり始めている。
インターネットマーケティングリサーチ会社の「YouGov(ユーガブ)」が先月発表したアメリカ人の意識調査によると、広島と長崎に原爆を投下した判断を「正しかった」と回答した人は全体の45%で、「間違っていた」と回答した人の29%を依然として上回っていた。
しかし調査結果を年齢別に見ると、18~29歳の若年層では、45%が「間違っていた」と回答し、「正しかった」と回答した41%を上回った。また30~44歳の中年層でも、36%が「間違っていた」と回答し、「正しかった」と回答した33%をわずかに上回った。
それよりも上の年齢層では、やはり原爆投下を「正しかった」と考える人が多数を占め、45~65歳では約55%、65歳以上では65%が「正しかった」と回答した。
今回の調査では、特に29歳以下の若年層で原爆投下に関する意識が大きく変化していることがわかった。これまでアメリカでは、原爆投下を肯定する意見が世論の大半を占め、世論調査機関ギャラップが戦後50年に実施した調査では59%が、戦後60年の調査では57%が原爆投下を支持していた。
一方同じ調査で、アメリカ人全体の62%が「核兵器の発明」そのものを「悪い事」だった、と回答している。日米の戦争の記憶が薄れる中、アメリカの若い世代では、核兵器が絶対悪だという忌避感が強まり、さらに原爆投下を「間違っていた」と考える方向へ徐々に変化していることがうかがえる。
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150806-00154634-newsweek-int