欧米が中国の異質性に気づいたというところが重要です | 日本のお姉さん

欧米が中国の異質性に気づいたというところが重要です

欧米が中国の異質性に気づいたというところが重要です
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成26(2014)年4月25日(金曜日)
通巻第4216号
オバマの失策が中露関係を深化させた。悪夢の「中露同盟」は幻想ではなくなった?
プーチン大統領、五月に北京訪問。ガス代金の難題を決着へ
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いずれもウクライナ問題が契機となった。
米国はロシア制裁に中国が加わるよう、三月から「水面下で工作してきたが、失敗に終わった」(英語版プラウダ、4月24日)。
そればかりか中国はロシアとの関係をさらに緊密化させる方向へ梶を切った。
オバマ訪日で「尖閣諸島は日米安保条約の防御対象」という確約を取り付けた日本だが、これは米国が切ったカードのなかでも対中戦略の文脈からは、切りたくないカードだっただろう。これを取引条件とするかのように、TPP妥結をもくろんだホワイトハウスは、日本側の頑強な抵抗にあって、ややゲームの先行きがわからなくなった。
中国はロシアを制裁する欧米日に加わらないことで、プーチンに大きく政治的貸しをつくったが、かわりに獲得したものは何か?
第一に揉めに揉め続けているガス供給の価格で折り合いがつきそうな気配である。中国が焦る理由は大気汚染、石炭発電依存を構造的に改編し、ガスへの切り替えを急ぐという切羽詰まった理由がある。
しかし原油供給をロシアからパイプラインで輸入していても、ガスはロシア国営「ガスプロム」が値引きに応じないため、メドベージェフ首相が訪中しても、決着しなかった。ウクライナ問題で新しい顧客獲得を急ぐロシアは、米国のシェールガスの脅威も加わってきたため、価格でおりあう可能性が出てきたのだ。
第二に中国が得るのはロシアが出し渋ってきたジェット戦闘機の新技術、武器システムの向上にロシア軍事技術が欠かせないが、これも中国が有利な環境に変わりつつある。
第三はシベリア開発、とりわけ極東部の経済工業化がプーチンの喫緊の課題である。
ウラジオストックのAPEC開催以後も、期待されたほど極東部の開発は進んでいない。この隙間に中国は「農業進出」をはたしており、じつに42万ヘクタールの土地をレンタルし、農作物を栽培してきた。
これは中露双方に裨益するが、ロシアの懸念は極東シベリアにおけるロシア人の減少とは対照的に農地へ出稼ぎで入り込んだ中国人が不法滞在し、シベリアからウクライナへ流れ込んでEUへの密航ルートである。
いずれにしてもオバマの弱腰外交の付けが、おもわぬ方面で期待とは逆の反作用を産んでいる。
それにしても外交にしたたかな露西亜と中国。狐と狸の化かし合いは今後も続く。
◆書評 ◇しょひょう ▼ブックレビュー
中国の強硬突破路線は中国国内においても反対陣営を勢いづかせるが
日本はこの危機をバネとして自立の道をさぐれ
石平 vs 西村幸祐『中国を捨てよ』(イースト新書)
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副題が「反日韓国は中国にくれてやれ」と凄まじい。
外務省チャイナスクールや財界人が聞いたらびっくりする台詞である。
前号書評欄にも紹介したように反日に狂奔する韓国は、2000年の交遊あるいは敵対関係の歴史がある中国に「ついていく」ことにした。だから中国と韓国には、もはや未来はない、と言うのである。
まず石平氏が口火を切る。
「この二十数年、日本の政治を動かした政治的言説が、実は国際社会にまったく関与しない、引きこもりの独り言のように無意味なものであった」が、「これらの言葉に意味があるように囃したてた我が国のジャーナリズムや言論界は相変わらずそのままなのだ」
しかるに現状は「米中戦略経済対話とは、事実上経済破綻している米国が自らの延命を図るために、シナの覇権主義、人権弾圧に目をつむり、ドルを買い続けさせようと二つの巨大な悪の帝国が手を結んだ」。
それがG2である、と石さんは分析する。
これを受けて西村氏は次のように言う。
「そういう側面もあるけれど、米中関係が非常に揺らいできて、世界が動き始めたいまがチャンスです。これは一種の歴史的必然といって良いかもしれません。とくに欧米が中国の異質性に気づいたというところが重要です」
これを受けて石さんが主張する。
「日本自身が内なるアメリカを切り捨てて、憲法についても国防体制についても日本が自立的な状況を作らない限り、アメリカとは対等になれない。ただの子供扱いで相手にされないでしょう。アメリカを捨てる覚悟でアメリカとつきあうことが必要です」
(このあたり西尾幹二氏の主張を彷彿とさせる)
西村氏が締めくくる。
「習主席の強硬一辺倒路線はむしろ、反対勢力のよりいっそうの拡大と、政権と民衆の対立の先鋭化をもたらす」であろうが、「すでに出口のない袋小路に突入している」のであって、そうなると「国民の目を外に向かわせるため、矛先を日本に向けてくる」
だから日本は危機に備えることが喫緊の政治課題なのである。
○ ○
(読者の声1)「国益意識が希薄なグローバル企業経営者」について。今回の商船三井の中国に対する和解金支払いは、「グローバル化世界」に於ける日本国籍のグローバル企業の企業益と国益の関係を改めて考えさせてくれた。
日本国籍のグローバル企業の経営者達は自社の「グローバル化社会で通用する人材の育成」の教育に力を入れているようだが、その前にまず「グローバル世界で通用する経営者の育成」が必要ではないかと思ってしまう。
たとえば、以下の点について彼らは答えを用意しているのでしょうか。
今回の日本国政府の“意向”に反した行為で、今後は同社には日本国の「庇護」は不要だと日本社会に広く明示したこと。
つまり同社を最終的に「庇護」する国家などは世界のどこにもいなくなることの危うさを認識しているのか。
同社の対応が反日国家などから他の多くの日本企業に同様の行為を提起させる事態を誘発し、それが自社のみならず、ひいては日本全体の国益を毀損しかねないことを認識しているのか。
同社の行為は国家間取り決め(日中共同声明)に反する「違反行為」であり、結果的に同社に株価の下落や同社に対する日本国民の信頼性の消失などの損害をもたらしたとして、株主が経営陣を対象に裁判を起こすことはないか。
要するに「グローバル化とは『国籍から離脱する』こととは反対に、それが進めば進むほど、自社にとって国家観が必要になって来るのが今も昔も変わらぬ世界なのだ」といった当たり前の事を経営者は遅まきながら学ばねばならぬのだ。
(足立)
(宮崎正弘のコメント)そうですね。商船三井を株主代表訴訟にもちこむという手もありますか。
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