対戦国だけではないW杯の「死の組」 | 日本のお姉さん

対戦国だけではないW杯の「死の組」

気温差約25℃、総移動5500キロになることも。対戦国だけではないW杯の「死の組」
フットボールチャンネル 12月6日(金)11時52分配信
東西4336キロ、南北4320キロと広大な国土を有するブラジル。面積は日本の23倍だ。
ブラジルの気候を気にした遠藤保仁
優勝経験を持つ欧州の強豪が第4ポットに振り分けられたことでかつてない「死の組」が生まれるかもしれないブラジル大会の組み合わせ抽選会。
その他の写真付き記事『出来るだけ強豪国は避けたいところだが、それ以外にも注意すべき点がある』
ピッチ上で対峙することになる列強の顔ぶれは、もちろん各国の命運に直結する重要な要素だが、南米最大の大国で64年ぶりに行われるサッカーの祭典にはもう一つの見えない敵が待ち構えている。それは、実に日本の23倍に相当する広大な国土を持つブラジルならではの気候条件だ。
6月12日から7月13日にかけて行われるブラジル大会は暦の上では晩秋から初冬にあたるが、やっかいなのは南北で4320キロメートルに及ぶ国土ならではの気候の多様性。単純に「冬の季節」と割り切れないほど、全国各地に点在する開催都市は様々な顔を見せる。
今年開催されたコンフェデレーションズカップへの出場権を得た2001年のアジアカップの優勝直後、日本代表の大黒柱、遠藤保仁はコンフェデレーションズカップ出場の意義をこう看破していた。
「いち早く、ブラジルの気候を知る事が出来るのが大きい」。なるほど、さすがに鹿児島実業高校時代、2度のブラジル短期留学を経験している日本の司令塔だけに、ブラジルの多様な気候については当時から意識の片隅にあったわけだが、コンフェデレーションズカップではブラジルが持つ一面を体感したに過ぎないのだ。
「マウナスは避けたい」イングランド代表監督
北に行くほど暑く、南へ行くほど寒い、というのは南半球ならではの特徴ではあるがコンフェデレーションズカップの会場となったレシフェやフォルタレーザは一般的に日本人がブラジルに対して描きがちな「常夏」の地だ。
実際に6月でも最高気温は30度を超えることが珍しくなく、レシフェで行われたウルグアイ対スペインは午後7時のキックオフで気温は30度近く、湿度は70%を超えていた。
こうした会場だけでなく、本大会では赤道直下に近く熱帯に位置するマナウスやベレンが会場に加わって来る。マナウスは大会期間中、気温34度、湿度50%になることも予想されている文字通りの熱帯の地だ。
そんな開催地をめぐる一人の監督の発言が、現地で波紋を呼んでいる。イングランドを率いるホジソンは今月上旬、ガーディアン紙のインタビューで「マナウスの熱帯の気候はどのチームにとっても問題となる。マナウスは避けたい場所。アルゼンチンやブラジル、その他の優勝候補と対戦するよりも気がかりな問題だ」と話したのだ。
これに対して、マナウス市長のアルトゥール氏は「我々、アマゾネンセ(アマゾナス州の人間)もイングランドには来てもらいたくない」と反論した。
暑さが敵となる北部とは対照的に、コンフェデレーションズカップの開催地にならなかったブラジル南部の都市は、文字通りの冬が待っている。
過酷な戦い必至のE組4とD組4
 最南端の会場のポルト・アレグレや標高900メートルの町、クリチーバはドイツ系やイタリア系の移民がかつて好んで定住したように、冬には欧州さながらの冷え込みを見せる。平均気温こそ15度程度だが、午後7時のキックオフの時間帯には10度を割る事も珍しくない。クリチーバのアレーナ・バイシャーダで6月の夜に筆者は試合取材をしたことがあるが、7度という日本さながらの冷え込みに凍えたものだった。
 東西4336キロメートル、南北4320キロメートルに及ぶ国土に点在する12会場。運命の組み合わせ抽選会を前に、既に各グループの開催地は決まっている。
 A組からH組までの中で、気候条件の「死の組」となりそうなのがE組4だろう。初戦はポルト・アレグレで午後4時、第2戦目がクリチーバで午後7時と文字通り、冬さながらの冷え込みの中で試合をこなした後、グループリーグ最終節の会場となるマナウスへ。飛行機で5時間近い移動をした上で、「緑の地獄」とさえ言われるアマゾンの真っただ中で暑さと湿度とも戦う必要に迫られる。
 コンフェデレーションズカップの決勝前、イタリアを率いるプランデッリ監督は「コンディション的にはブラジルが有利」と言い切っていたが、スペインは準決勝までの4試合中3試合を北部で行い、消耗戦を強いられていた。
 シーズンを終えたばかりの欧州勢には辛いグループとなりそうなのが、A組3のナタル(しかも午後1時キックオフという殺人的な時間帯だ)、フォルタレーザ、レシフェ、C組4のレシフェ、ナタル、クイアバ、D組4のマナウス、レシフェ、ナタル、G組1のサウヴァドール、フォルタレーザ、レシフェ、G組4のナタル、マナウス、レシフェと言える。
 特にD組4は初戦を除けばいずれもキックオフは午後1時で、30度を超える灼熱のピッチで戦うことが濃厚となりそうだ。
気温差約25℃、総移動5500キロになることも。対戦国だけではないW杯の「死の組」
実力だけでなく、コンディション調整に成功した代表チームが躍進する【写真:Kenta Tazaki】
A組2は5500キロも移動することに
 一方で、気候的にも移動距離的にも恵まれる組も存在する。E組2はブラジリア、クリチーバ、リオデジャネイロと極端に暑い地域もなく、移動距離も飛行機で各一時間程度。
 リオデジャネイロ、ベロ・オリゾンテ、ポルト・アレグレで戦うF組1やベロ・オリゾンテ、リオデジャネイロ、サンパウロで戦うH組1、ベロ・オリゾンテ、ポルト・アレグレ、クリチーバで戦うH組2は暑さや湿度と無縁のグループになるだろう。
 南アフリカ大会では日本の初戦のブルームフォンテーンからダーバン、ラステンバーグの計3都市をめぐる移動は1070キロに過ぎなかったが、今大会のA組2(サンパウロ→マナウス→レシフェ)は飛行機での移動だけで実に5500キロ。
 高地と言う問題を抱えない代わりに、気温差や長距離移動という見えないファクターが「死の組」を更に過酷なものにするのは間違いない。実力だけでなく、コンディション調整に成功した代表チームが躍進するブラジル大会になるだろう。
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下薗昌記
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131206-00010001-footballc-socc&p=1