アフリカの寄生虫は、人も動物もゆっくり殺す。 | 日本のお姉さん

アフリカの寄生虫は、人も動物もゆっくり殺す。

アフリカには、怖い風土病が
まだまだある。以前にもブログに
書いたが、また書かせてもらう。

スーダン南部で、内臓リーシュマニア症(カラアザール)が8年ぶりに大流行している。
吸血性のサシチョウバエによる寄生虫リーシュマニアが原因の病気だが、
ツェツェ蝿も、吸血性で、
アフリカトリパノソーマ症(ヒトのアフリカ睡眠病・家畜のナガナ病)の病原体となるトリパノソーマである、ガンビアトリパノソーマやローデシアトリパノソーマなどの媒介種として知られる。

サシチョウバエは、日本にいる羽だけがやけに大きな便所バエ(チョウバエ)によく似ている。チョウバエは、お風呂場や便所で
排水管にたまったコケ等を食べている。日本のチョウバエは、羽が大きいがサシチョウバは、小さめの羽がついていて、
長くて大きい吸血用の口がついています。

ツェツェ蝿は、蝿にそっくりだが、口が
吸血用の形をしている。

サシチョウバエとツェツェ蝿は、あまり
似ていない。

トリパノソーマ Trypanosoma はトリパノソーマ症(アフリカ睡眠病、シャーガス病)
を、リーシュマニア Leishmania はリーシュマニア症を引き起こす。内臓リーシュマニア症は、
発熱、肝臓や脾臓の腫大と貧血といった症状が出て、放置すれば死に至る。脾臓の肥大は極めて特徴的。皮膚リーシュマニア症は、顔に黒い穴ができる。とにかく、トリパノソーマも
リーシュマニア も恐ろしい寄生虫。

二宿主性
Trypanosoma(トリパノソーマ)
Leishmania(リーシュマニア)

アフリカ人の友人に聞いた話だが、
ツェツェ蝿に吸血されると、
眠り病になって、
眠ったまま
おならを出しながら死んでしまうのだそうだ。
そのおならの音が「ツェツェ、ツェツェ」と
いう音なので、そういう名前がついたのだと
いうことです。ウソみたいな名前だが、
真顔で言っていたから本当でしょう。
おならが出るのは内臓がやられているから。
眠るのは、脳がやられているからです。
予防法なんてないし、治療も困難らしい。
その蝿に吸血されないよう頑張るだけ。
死ぬのはゆっくりだそうです。

おもしろくない場所は飛ばして読んでね。↓
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1) 内臓リーシュマニア症:サシチョウバエ
(カラアザール)

症状 : 発熱、肝機能障害、脾臓腫大、重症になると全身の衰弱を起こし死亡します。

潜伏期 : 数週間から数か月と長期間にわたります。

分布 : ア ジ ア : 中国南部、インド、バングラデシュ
アフリカ : ガボン、ナイジェリア、シエラレオネ、サウジアラビア、スーダン、ケニア、モロッコ、アルジェリア、チャド、
南  米 : ブラジル北東部沿岸、アルゼンチン中央部

予防法 : 予防接種はない。サシチョウバエに吸血されないように防虫スプレーや服装で防御。
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ツェツェバエ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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ツェツェバエ科 Glossinidae

分類
界 : 動物界 Animalia
門 : 節足動物門 Arthropoda
綱 : 昆虫綱 Insecta
目 : ハエ目(双翅目) Diptera
亜目 : ハエ亜目(短角亜目) Brachycera
下目 : ハエ下目 Muscomorpha
上科 : シラミバエ上科 Hippoboscoidea
科 : ツェツェバエ科 Glossinidae
Theobald, 1903

a.. Glossina


ツェツェバエは、ハエ目(双翅目)・ハエ亜目(短角亜目)・環縫短角群・ハエ下目・ツェツェバエ科(Glossinidae)に属する昆虫の総称である。2001年現在、23種8亜種が記載されており、Glossina 1属のみで1科を構成する。

吸血性で、アフリカトリパノソーマ症(ヒトのアフリカ睡眠病・家畜のナガナ病)の病原体となるトリパノソーマである、ガンビアトリパノソーマやローデシアトリパノソーマなどの媒介種として知られる。
形態 [編集]
体長は5~10mm。他の蛹生類(#生態の節で詳述)のハエと異なり、典型的なハエらしいハエの姿をしている。口吻はハエで一般的な唇状ではなく、イエバエ科のサシバエなど他の吸血性のハエと同様に硬化して針状となり、吸血に適した形状となっている。触角の第3節の端棘は枝分かれしており、静止時には翅を鋏の刃のように重ねる。

分布 [編集]
アフリカ大陸の北緯15度から南緯20度の範囲のうち約1,500km2の範囲にのみ分布する。そのため、この緯度の範囲はツェツェベルト地帯と呼ばれている。化石はアメリカ合衆国コロラド州の漸新世の頁岩から得られており、かつては現在よりはるかに広い範囲に分布していたと考えられている。

生息環境は種ごとに好適な環境が異なっており、熱帯雨林、乾燥地、マングローブなど多種多様である。

生態 [編集]
雌雄ともに哺乳類や鳥類から吸血し、血液を栄養源として生活しており、一度の吸血で40~150mgの血液を摂取する。この点が、雌のみ卵巣発育のための栄養源として吸血する、カやアブ、ブユなどと異なっている。宿主の選好性は環境や野生動物相などによって変化する傾向はあるもの、種特異的な傾向はあり、特定の哺乳類を好むものや機会的な吸血をするものが知られている。

ツェツェバエの生態で非常にユニークな点はその繁殖方法にある。雌は産卵するのではなく、胎内の子宮で一度に1個の卵を保持し、孵化した幼虫は6~7日かけて雌の分泌する栄養物質を子宮内で摂取し、老熟幼虫にまで発育してから産出される。幼虫は速やかに植物の陰など直射日光の当たらないところで土中に潜って蛹となり、30~40日後に羽化する。1個体の雌は羽化後80日齢まで産仔可能であり、生涯に6~8回の産仔を繰り返すといわれている。

こうした繁殖方法は、同じハエ類の中では、ツェツェバエ同様に哺乳類や鳥類の吸血者として特殊化したシラミバエ科やコウモリバエ科でも知られており、産仔後すぐに蛹になることから蛹生類と総称されている。

分類 [編集]
2001年現在で1属23種8亜種に分類されており、大きく3つのグループに分かれる。

a.. Morsitansグループ(ローデシアトリパノソーマを媒介する)
a.. G. morsitans submorsitans Newstaed
b.. G. morsitans centralis Machado
c.. G. morsitans morsitans Westwood
d.. G. austeni Newstead
e.. G. pallidipes Austen
f.. G. swynnertoni Austen
g.. G. longipalpis Wiedemann
b.. Palpalisグループ(ガンビアトリパノソーマを媒介する)
a.. G. palpalis palpalis Rob.-Desvoidy
b.. G. palpalis gambiensis Vanderplank
c.. G. fuscipes fuscipes Newstead
d.. G. fuscipes quanzensis Pires
e.. G. tachinoides Westwood
f.. G. pallicera pallicera Bigot
g.. G. pallicera newstead Austen
h.. G. caliginea Austen
c.. Fuscaグループ
a.. G. fusca fusca Walker
b.. G. fusca congolensis Newstead & Evans
c.. G. nigrofusca nigrofusca Newstead
d.. G. nigrofusca hopkinsi van Emden
e.. G. medicorum Austen
f.. G. tabaniformis Westwood
g.. G. brevipalpis Newstead
h.. G. longipennis Corti
i.. G. frezili Couteux
j.. G. severini Newstead
k.. G. schwetzi Newstead & Evans
l.. G. haningtoni Newstead & Evans
m.. G. fuscipleuris Austen
n.. G. vanhoofi Henrard
o.. G. nashi Potts
予防法 [編集]
ツェツェバエの媒介するアフリカトリパノソーマ症に対する予防接種はなく、吸血されないように防虫スプレーや衣服等で予防するしかない。 治療薬には最近、エフロルニチンという新薬が開発さ
れている。

駆除 [編集]
雌のツェツェバエは生涯に数個体しか幼虫を産まないため増殖速度はそれほど大きくない。そのため、ツェツェバエの駆除はアフリカトリパノソーマ症の蔓延を阻止の上で有効性が高い。ツェツェバエの蛹化場所である藪や茂みの伐採、地表面への殺虫剤の散布が主な駆除法として挙げられる。また、誘引剤付の罠や、家畜にもともと殺虫剤を散布しておく「生き餌」という駆除法もある。エチオピアでは不妊虫放飼による根絶策が研究されている[1]。

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致死率100%の風土病猛威=独立歓喜の陰で人道危機―スーダン南部
時事通信 1月13日(木)5時49分配信
 【ジュバ(スーダン南部)時事】スーダンからの独立の是非を問う住民投票が15日まで実施されている南部で、治療しなければ致死率がほぼ100%の風土病、内臓リーシュマニア症(カラアザール)が8年ぶりに大流行している。医療関係者は「住民投票の歓喜の陰で内戦に伴う人道危機は続いている」と警告している。
 カラアザールは、寄生虫を媒介するサシチョウバエを介して感染する熱帯病で、スーダンでは南部ナイル川沿いの州など一部地域で発症。マラリアなどとは異なり、地域的に限定された病気のため研究が不十分で、「顧みられない病気」とも呼ばれる。
 8年前の流行後、免疫のない世代が増えたほか、天候の影響もあって昨年末から大流行。南北内戦で発症地域に十分な医療施設や医師が存在せず、死者数など実態は不明だが、国際緊急医療援助団体「国境なき医師団」が昨年治療した患者数は、前年比8倍超の約2050人に上っている。 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110113-00000027-jij-int
リーシュマニア症(-しょう、leishmaniasis)とはトリパノソーマ科の原虫リーシュマニアの感染を原因とする人獣共通感染症の総称。サシチョウバエ類によって媒介される。原虫の種によって症状にかなりの差があり、ヒトでは主に内臓リーシュマニア症(カラアザール・黒熱病・ダムダム熱)と皮膚リーシュマニア症(東洋瘤腫・エスプンディア・チクレロ潰瘍)とに分類される。WHOの試算によれば、88ヶ国1200万人がリーシュマニアに感染しており、リーシュマニア症は緊急に対策を要する6つの感染症の1つとされている。犬の媒介性疾患としても注目されている。

リーシュマニア症には大きく分けて内臓型と皮膚型がある。皮膚型にはさらに散在性のものや粘膜へ拡大するものが知られている。

内臓リーシュマニア症は、感染後数ヶ月から数年たってから、発熱、肝臓や脾臓の腫大と貧血といった症状が出て、放置すれば死に至る。脾臓の肥大は極めて特徴的であり、肝臓よりも大きくなる場合がある。各地で様々な名称で呼ばれているが、おそらくカラアザール(Kala azar、黒熱病)という名が著名である。これはL. donovani、L. infantumな
どによって引き起こされる。オーストラリア大陸を除く全ての大陸の熱帯・亜熱帯地域に見られるが、なかでもバングラデシュ・ブラジル・インド・ネパール・スーダンに多い。

皮膚リーシュマニア症は皮膚を冒すもので、サシチョウバエに刺されたあと数週間から数ヶ月後に皮膚に潰瘍や結節が生じる。比較的軽症であり、自然に治癒して醜い瘢痕を残すだけの場合もある。L. major、L. tropica、L.
aethiopicaなど旧世界の種が引き起こす東洋瘤腫(Oriental sore)が有名である。新世界においてはL. mexicana、L. amazonensis、L. venezuelensisなどが皮膚型の病変(チク
レロ潰瘍)を示す。皮膚型はアフガニスタン・ブラジル・イラン・ペルー・サウジアラビア・シリアなどで良く見られる。L. (Viannia) braziliensisなどは粘膜皮膚型(エスプンディア
espundia)の症状を示し、刺された箇所から広がって粘膜にまで転移し致死的になる。粘膜皮膚型はボリビア・ブラジル・ペルーなどに多い。

疫学 [編集]
リーシュマニア症は熱帯や亜熱帯の88ヶ国で流行しており、流行地域の人口はおよそ3億5千万人におよぶ。地理的には中南米の熱帯雨林から西アジアの砂漠地帯まで幅広い。新世界では中南米を中心に、アルゼンチン南部からテキサス州南部まで蔓延しているが、ウルグアイ・チリ・カナダでは珍しい。旧世界ではヨーロッパ南部(多くはない)・アジア南部から西部・中東・アフリカ(特に東部と北部)に多く見られる。オーストラリアやオセアニアには見られない。内臓リーシュマニア症の症例の9割はインド・バングラデシュ・ネパール・スーダン・ブラジルで占められている。

感染経路 [編集]
主にサシチョウバエに刺されることで伝染するが、薬物乱用者が注射針を共有することでも引き起こされる。

治療 [編集]
5価アンチモンを含む、スチボグルコン酸ナトリウム(PentostamR)やアンチモン酸メグルミン(GlucantimR)が化学療法剤として用いられている。これらの薬剤の作用機序はよく判っていないが、原虫のエネルギー産生やトリパノチオン代謝を阻害するらしい。程度の差はあるものの、世界各地で耐性原虫が出現している[1][2]。アムホテリシン(Amphotericin)も使われる[3]が、HIVや結核との重複感染例で効かない場合がある。

最近承認されたばかりの新しい薬剤として、経口投与が可能なミルテホシン(ImpavidoR)がある[4]。第III相治験での治癒率は95%であった。特に粘膜皮膚型リーシュマニア症の場合には他の薬剤と比較して優れた効果を示した[1]。インドで2002年、ドイツで2004年、コロンビアで2005年に承認され、アメリカでは2006年に希少疾患医薬品に指定された。主な副作用は消化管機能異常だが、特に治療の効果に悪影響があるわけではない。

WHOはパロモマイシンを開発し、これも希少疾患医薬品に指定されている。DNDi(Drugs
for Neglected Disease Initiative)が新規薬剤の探索を行っている。Leishmania
majorのゲノムが解読された[5]ので、薬剤標的分子の探索に役立つと思われる。

薬剤耐性リーシュマニア症の場合、免疫療法が効く場合もある[6]。ワクチンの開発もWHO主導で進められているが、利用可能なものはない。

歴史 [編集]
紀元前7世紀のアッシュールバニパルの粘土板から、皮膚リーシュマニア症のような傷の記述が見付かっており、なかには紀元前1500年から2500年まで古記録に由来するらしきものもある。イブン=スィーナーをはじめとする10世紀ペルシアの医師たちは、バルフ潰瘍(Balkh sore)と呼んで詳しい記述をのこしている[7]。トルコ人患者を診察した
Alexander Russellは1756年に非常に詳しい記述を著している。インド亜大陸の医師たちはカラアザール(Kala-azar; ウルドゥー語・ヒンディー語・ヒンドゥスターニー語でKalaは
「黒」、azarは「発熱」「病気」の意)と呼んでいた。新世界では、エクアドルやペルーで見付かる1世紀先インカ期の陶器には皮膚リーシュマニア症と思われる顔の傷が描かれている。15~16世紀ごろのインカやスペイン人植民者の文書には"valley
sickness"・"Andean sickness"・"white leprosy"などという記述がある。

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2011年1月12日発行
 ■ 『マサイマラ・レポート』 最終回
 □ 滝田明日香 :家畜獣医(ケニア在住)

 追跡犬ユニットの将来の為に子犬を産ませて繁殖させるというゴールがあった。リンダが去る何日か前、幸運にも発情をし始めたアナ。その後、妊娠し、先月始めに子犬を10匹の元気な子犬を産み落とした。後1匹いたが、それは死産だった。初産から11匹も産むとは、ブラッドハウンドなどのハウンド系が多産で知られているとはいえ、ちょっとびっくりしてしまった。
初めての母親業なのにいきなり10匹のムニュムニュ動き回る小さな子犬を世話しないといけないのは大変だし、乳も足りるか分からなかったので最初の2週間は人口乳をサプリメントとしてあげていた。

 何事もなく過ぎた1週間だったが、2週間目にはいろいろなドラマがあった。まず最初のドラマが、アナが子犬の上に間違って寝てしまったことだった。朝方、ハンドラーから、「子犬が1匹、死にそうだ!」というせっぱつまった声で電話がかかってきた。朝起きて、犬小屋に母親と子犬の様子を見に行ったら、1匹が虫の息だったらしい。いそいでンギラーレ・レンジャーステーションに向ったが、子犬はグッタリしてヒーヒー泣き声をあげていたが、かろうじて生きていた。
しかし、触ってみるとすでにヒンヤリして冷たくなってしまっている。「トライしてみるが、たぶん助かる見
込みはない」とハンドラーに断って、子犬を引き取った。体温を暖めたりしたが、30分ほどでまだ目も開いていない小さな小さな子犬は静かに息を引き取ってしまった。

 そして、その日のうちに仕事でナイロビに向ったのだが、次の日にまたハンドラーから電話がかかって来て、「もう1匹の子犬も死にそうだ。お腹が異様に膨れていて、 弱っている」と言う。

昨日1匹死んだばかりなのに、また今日も?! 

お腹が膨れていると言うのでアナが子犬の排泄を助けてあげていないのかと思ったので、暖かい濡れ脱脂綿でお尻を拭いてみるように指示した。すると、「茶色い下痢が出てきた」と言う。血便ではないか。すぐさまナイロビに連れてくるように言ったが午前中の便が満席だったので、結局子犬は夕方6時半までナイロビに到着しなかった。出発前は生きていたと言うのだが、着いた時は子犬はケージの中で息を引き取っていた
。体はまだ暖かいので、本当に死んだ直後みたいだった。すぐに解剖してみると、血で濁った腹水が溜まっていて、すべての臓器が壊死していた。よくこんな状態で朝から夕方まで生きていたなと驚いてしまった。犬型ヘルペスウィルスかなとも思ったが、その後、 他の子犬に感染することがなかったので、心臓疾患か肝臓疾患の可能性の方が高そうだった。かわいそうだったが、労働犬としての人生を歩む子犬たちなので、弱い個体が死んでしまうのはサバンナの弱肉強食のルールと同じで自然なのかもしれない……。

 子犬の死が続いていた週、メムシはバベシア症によって体調を崩していた。

血液スライドにバベシア原虫が発見され、治療薬を投与されたのにも限らず、翌日になっても体調が改善に向わないメムシ。通常の犬は、次の日には少し体調も良くなっているのに、グッタリして犬小屋の角で寝ているばかり。

さらに翌日になると嘔吐を始め、ボーっと地面に顔を向けてまるで周りで起こっていることを把握していない様子である。どう見ても、何かが脳の障害を起こしているように見えるが、また血液スライドをチェックしてもバベシア原虫ばかりで他には何も発見出来ない。

トリパノソーマ原虫も見えないし、牛でバベシア原虫が脳内に入ることがあるのでそれかと疑ったりしたが、原因がよく分からない。点滴などのおかげで次の日には元気になり、そのまま1週間ほどは何の問題もないほど元気に走り回っていた。

 その間にナイロビに帰って来た私は、マサイマラに戻った日にハンドラーから、「昨日からメムシの調子がまたおかしくなってきた。またボーっとしている時間が多くなった」と言う。血液スライドを調べてみると、1週間前には全く見られなかったトリパノソーマ原虫が赤血球の間を泳いでいる姿が見えた。

「やっと原因が分かった!」、トリパノソーマ原虫を見つけた瞬間、私も原因が分かった安堵から叫んでし
まった。しかし、それは後になってから、すでに手遅れだったことが分かった。

トリパノソーマ原虫は、すでにメムシの脳に入り込んでいたのである。
トリパノソーマの
薬を投与したにもかわらず、熱はさがったがメムシの脳障害の症状はあまり回復してくれなかった。相変わらずボーっとしていて、犬小屋の角にうずくまってしまうメムシ。

 そして、次の日の早朝、朝トイレの為に外を歩き、犬小屋に帰って来てミルクを飲んだ後、突然倒れ込んで痙攣を起こしてしまった。すぐさま連絡を受け、私が20分後に猛スピードでンギラーレに到着した時には、ハンドラーやレンジャーが痙攣を続けるメムシの回りに驚きの表情で立ちすくんでいた。「ついさっきまでミルクを飲んでいたんだ……」と、ハンドラーがつぶやく。

痙攣を起こし、唇を噛みながらビクビク動いているメムシ。いろいろ対処してみたが、結局どの治療にも何も反応はせず昏睡状態から目が覚めることはなく、メムシはその命を落としてしまった。

トリパノソーマ原虫は脳の機能を完全に破壊してしまったらしく、まるで脳のコントロールスイッチが壊れて勝手に押されているようだった。

今まで幾度も動物の死の間際を見てきたが、その中で一番見ていて気分が悪い死に方だった。
トリパノソーマ病も今までモラニやメムシを何度も治療したが、その本当の恐ろしさを初めて知ったのかもしれない。はっきり言って、こんなにひどい脳障害を起こすとは実際にこの目で見ていなかったので把握していなかったかもしれない。

同じトリパノソーマ原虫によって起こる人間の「眠り病」も、こんなにひどい死に方をするのだろうかと怖くなってしまった。アフリカの風土病は、人間にも犬にも、そして、家畜にも容赦なくその猛威をふるっている。
そして、それにアメリカ生まれのメムシの体はもたなかった。

メムシの死により、今後追跡犬の将来は子犬の訓練以外にも、風土病の克服という膨大な壁が立ちふさがっていることを再度確信する出来事となった。

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滝田明日香(たきたあすか)
1975年神奈川県藤沢市生まれ。ナイロビ大学獣医学部で獣医に。卒業後、マサイ
マラ国立保護区の回りに住むマサイを対象にした「マサイマラ巡回家畜診療プロジェ
クト」を立ち上げ、家畜診療以外にも野生動物へのジステンパー感染などを防ぐ為、
保護区の外のマサイの犬2700匹にワクチンなどを投与している。著書に『晴れと
きどき、サバンナ』『サバンナの宝箱』(共に幻冬舎)、最新刊に『獣の女医 サバ
ンナを行く』(産経新聞出版)がある。
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ターなどを私のHP( www.asukafrica.com )に添付しています。
 ●○○JMMホームページにて、過去のすべてのアーカイブが見られます。○○●
   ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/title21_1.html )
JMM [Japan Mail Media]                  No.617 Extra-Edition
【発行】  有限会社 村上龍事務所
【編集】  村上龍
【発行部数】128,653部
【WEB】   ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )
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トリパノソーマ科(トリパノソーマか、学名:Trypanosomatidae)は、キネトプラスト綱に属し1本の鞭毛を持つ原生生物からなる分類群である。全てが寄生虫であり、基本的には昆虫を宿主としているが、生活環の中で脊椎動物や植物などの中間宿主に寄生するものが知られている。この1科をもってトリパノソーマ目 Trypanosomatida またはトリパノソーマ亜目
Trypanosomatina を構成する。

トリパノソーマ科には人間や家畜に深刻な感染症を引き起こす病原体が知られている。トリパノソーマ Trypanosoma はトリパノソーマ症(アフリカ睡眠病、シャーガス病)
を、リーシュマニア Leishmania はリーシュマニア症を引き起こす。

形態 [編集]
トリパノソーマ科の原虫の主要な形態。左上:無鞭毛型、右上:前鞭毛型、左下:上鞭毛型、右下:錐鞭毛型
トリパノソーマ科の原虫は時期によって形態を変化させるものが多く、主に鞭毛の形態(位置や波動膜の有無)によって以下の6タイプに弁別される。

無鞭毛型 (amastigote)
鞭毛が著しく縮退しているか欠失している。細胞は円形をしている。リーシュマニア型とも。
前鞭毛型 (promastigote)
鞭毛は細胞前端から生じ、波動膜を欠く。レプトモナス型とも。
上鞭毛型 (epimastigote)
鞭毛は細胞核前方から生じ、短い波動膜を作る。クリシジア型とも。
後鞭毛型 (opisthomastigote)
鞭毛は細胞核後方から生じ、細胞表面の溝に沿っている。
錐鞭毛型 (trypomastigote)
鞭毛は細胞後端から生じ、波動膜を形成しながら前端に達して遊離する。トリパノソーマ型とも。
襟鞭毛型 (choanomastigote)
鞭毛は細胞核前方から生じ、細胞が短い。
このうちいずれの形態を取りうるかは属によって異なり、属を識別する際に用いられてきた。全ての原虫に共通しているのは無鞭毛型のみである。

分類 [編集]
トリパノソーマ科 Trypanosomatidae Doflein, 1901 は早い時期から独自の科として扱われ、伝統的には鞭毛の数が少ないことによって鞭毛虫綱原鞭毛虫目に所属させられてきた。1961年にボド科とともにキネトプラスト目(のち綱に格上げ)にまとめられ、さらに1990年代になってユーグレノゾア門への所属が受け入れられるに至っている。

一方で、トリパノソーマ科の内部の分類体系は目下再検討中であり、充分に整備されているとは言い難い。長らく形態のみに着目した分類が行われていたことと、分子系統解析の導入が医学的に重要な原虫に偏っていたことが主な理由である。2006年までに分子情報があった9属のうち、単系統的なのはトリパノソーマ属、リーシュマニア属、Phytomonas 属のみであり、残り6属は全て整理を必要
とする状況である。

単一宿主性
Crithidia
Blastocrithidia
Herpetomonas
Leptomonas
Wallaceina
Endotrypanum
Sergeia[1]
二宿主性
Trypanosoma(トリパノソーマ)
Leishmania(リーシュマニア)
Phytomonas
カメムシ類によって媒介され、トウダイグサ科やガガイモ科などの植物に感染する。病害性のない場合もあるが、コーヒーノキ、アブラヤシ、ココヤシなどを病害する。前鞭毛型のみを持ち、形態的にはLeptomonasと区別できない。
学名について [編集]
古い文献ではトリパノソーマ科の学名を Trypanosomidae としているものがある。これは1901年にドフライン (de:Franz Theodor Doflein) が記載した際の綴りなのだが、学名の正書
法上の誤りがある。タイプ属である Trypanosoma はギリシャ語由来として扱われるため、後半の -soma を -somat に書き換えて(σωμαの属格はσωματο?)、その後
に統一語尾の -idae を付けなければならない。したがって現在の国際動物命名規約のもとでは Trypanosomatidae が正しい。

進化 [編集]
トリパノソーマ科の共通祖先がどのような生物だったかは長らく議論があった。例えば、魚類寄生性のCryptobia(パラボド目)のような生物から進化して昆虫へと宿主域を広げたとする説などがあった。現在得られている分子系統解析の結果によれば、逆に昆虫寄生性の原虫が吸血昆虫に媒介されて偶然脊椎動物へ宿主域を広げたと解釈される。

ミャンマー産のコハクに封入されていたサシチョウバエ類の体内からトリパノソーマ科と思われる原虫化石が観察され、Paleoleishmania proterusと命名されている[2]。コハクの産出した地層から、
少なくとも白亜紀初期にはトリパノソーマ科の原虫が昆虫を宿主としていたことが示される。

トリパノソーマ症 Trypanosomosis とは

 何種類かのトリパノソーマ原虫によって引き起こされるアフリカ・トリパノソーマ症は、20数種の吸血性のツェツェバエ(写真)によって極めて効率よく媒介されている。原虫が昆虫体内でも増えるため、ツェツェバエ Tsetse fly:
Glossina spp. は「ベクター」と呼ばれる。原虫はヒトや動物の流血中(写真)で増殖し、トリパノソーマ症 Trypanosomosis(かつては Trypaosomiasis と呼ばれていた) を起こ
し、死に至る。人畜(獣)共通伝染病のひとつであり、ヒトではガンビア・トリパノソーマ



Trpanosoma brucei gambiense による西アフリカには慢性型、東アフリカにはローデシア・トリパノソーマ Trypanosoma brucei rhodesiense 急性型の眠り病が知られている。動
物(野生生物、家畜)では慢性経過をとることが多く(そうでないと、原虫は絶滅してしまう)、著明な貧血、泌乳量・体重の減少、流産そして死に至ることが問題となっている。

 現在、サブサハラ・アフリカの37の国々において、ウシだけでも6000万頭以上が感染の危機に曝されている。年間の直接及び間接的な経済的損失だけでも、50億米ドル以上と推定されている。

 今世紀の初め、ビクトリア湖周辺部、今日のウガンダでは多数の患者が発生し、細菌学の父ロベルト・コッホも原因究明のため当地を訪れている。彼が撮影したといわれる下の写真は当時の悲惨な状況を今に伝えている。

 一方、北アフリカから中近東・南アジア・東南アジアにかけては、アブが機械的に媒介(単なる「キャリヤー」=運び屋)する T. evansi が引き起こすトリパノソーマ症が散発し、問題と
なっている。また、南米には吸血性のカメムシであるサシガメの媒介する T. cruzi
が引き起こすシャーガス病が知られているが、この原虫は細胞内寄生をするという点で、上記のトリパノソーマ症と異なる。

 また、トリパノソーマ原虫はトランス・ローケーションやトランス・スプライシングにより変異表面糖タンパク質(VSG)を次々に脱ぎ替えたり、キネトプラスト(特殊に変化したミトコンドリアの部分)では転写後のRNAが更に編集されること(RNA
editing)で、長年にわたって分子生物学者の興味の対象となってきている。

 私は、ここで今までの形態学的、生態学的比較からなされた原虫の分類が、いかに不十分で実状に合っていないかを具体的な事例としてトリパノソーマ原虫の分類の問題点を指摘し、遺伝子の比較も考慮した分類がなされるべきかについても述べたい。

 19世紀、『暗黒アフリカ大陸の探検・発見』で有名な欧米の探検家たちは、数百頭のウシを引き連れキャラバンを組んでアフリカ大陸を縦横した。と同時に、熱帯地方の限られたツェツェバエの生息地をいっきに広めたとされる。その結果、今日では、砂漠以外の赤道を挟む広大なアフリカの農業可能地域には、ツェツェバエが広く分布しツェツェ・ベルトを形成している。そして、その大部分は同時にトリパノソーマ症で汚染されている。ツェツェバエは一生のうち10匹程度しか子孫をつくらないにも関わらず、卵胎生のため、産まれた幼虫(蛆)はすぐに地中に潜り、僅か2時間ほどで黒化して蛹になる。こうして、アリや小鳥から捕食される危険の多い幼虫の時期をほとんどなくすことで、極めて効率よく繁殖している。

ツェツェバエの幼虫と蛹

 家畜(ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラクダなど)が感染した場合、アフリカでは「ナガナ」、アフリカ以外では「スーラ」と呼ばれる貧血・痩削が主徴の消耗性の感染を呈し、最後は死に至り経済価値を著しく損ねる。なかでも、アフリカでは、コンゴ・トリパノソーマ Trypanosoma congolense による被害が、最も深刻である。

ウシのトリパノソーマ症(痩削)と化学療法による治療・トラップによるツェツェのコントロール

 治療には植民地時代の35年以上も前に開発されたままの抗トリパノソーマ薬が、いまだに使われているが、近年マラリアと同様に原虫が薬剤耐性を獲得しつつある。重篤なヒトの感染のケースでは、今も毒性が強くて危険な砒素剤も治療に使われている。予防法は無きに等しく、トラップや環境への悪影響が懸念される殺虫剤でツェツェバエをある程度コントロールするくらいで、新しい化学療法剤と有効なワクチンの開発が望まれている。
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