当会メンバーの有馬さんが、特殊ミルクをつくる工場を見学されました! | 全国尿素サイクル異常症患者と家族の会

全国尿素サイクル異常症患者と家族の会

尿素サイクル異常症には、尿素サイクルに関係する10種の疾患があります。
様々な疾患の方、肝臓移植をされた方、赤ちゃんから成人の方まで全国に患者さんとご家族の仲間がいます。
どうぞ患者家族会にお気軽にご連絡ください。

有馬さんご家族は、イソ吉草酸血症を闘病しているお子さんを支えて頑張っていらっしゃいます。
イソ吉草酸血症も私たちと同じ代謝疾患の1種で、たんぱく制限をしたり、特殊ミルク(発症当初は無たんぱくミルクのS-23、その後ロイシン除去ミルクに)を利用したりなど、患者さんが必要とすることは私たちの場合と似ています。

患者さんの数がとっても少なくて(私たちよりもさらに少ないそうです)、お仲間に巡り合えない・・・(私たちも、この会が発足する前はそうでした)、同じ代謝疾患で日々心がけることは似ている・・・ので、この会のメンバーになって下さっています。

有馬さんは、12月13日開催予定の「治療用ミルク安定供給のためのワークショップ」*の中で、患者さんがいかに治療用のミルクを必要としているかをお話して下さる予定です!

* ~「治療用ミルク安定供給のためのワークショップ」~
日時:平成27年12月13日(日)13:00~17:00
場所:フクランシア東京(JR東京駅すぐそば)
参加費:無料(事前登録必要)

有馬さんが特殊ミルクをつくって下さっている方たちとお会いになった、感動のレポートを
お届けします!!

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イソ吉草酸血症(有機酸代謝異常症)の6歳男児の母、有馬です。
イソ吉草酸血症では、アミノ酸の1種であるロイシンの代謝経路に問題があり、高アンモニア血症、低血糖、代謝性アシドーシスなどが起きてしまいます。

そこで特殊ミルクの 「ロイシン除去フォーミュラ」(株式会社明治さん製造)を、生まれてからずっと毎日利用させていただいています。
息子には中度の発達遅滞と摂食障害もあり、3歳までは鼻チューブ、今は胃ろうのお世話になっています。
最近は少しずつ白いご飯など食べてくれるようになりましたが、それだけではまだまだ栄養が足りません。
1日3回胃ろうから注入するたっぷりのミルクは、息子の元気の源です。

その元気っぷりには私が毎日ヘトヘトになるほどで(笑)、学校の授業では体育が大好きですし、習い事ではヒップホップダンス教室に通うぐらい活気にあふれています。
これも毎日の特殊ミルクでバッチリ栄養補給出来ているおかげだと思っています。

息子が欠かすことのできないミルク、これを数少ない患者や家族のために作ってくださる方たちがいることに、いつも感謝していました。

先日、株式会社明治研究本部 小田原工場の特殊ミルク製造プラントを見学させていただく機会がありました。
毎日ミルクに助けられている感謝の気持ちを、作ってくださっている方たちに直接お伝えしたいと思って、見学会に参加してきました。

工場に着くと、髙橋工場長さんやスタッフの皆さまが暖かく迎えてくださいました
まずはミーティングルームで、特殊ミルクの基礎知識や工場内部の様子、工程などを分かりやすく説明していただきました。

そしていよいよ工場内部へ!

特殊ミルクは、一般の乳児粉乳とは完全に分けられた小規模の専用ラインで作られていました。
まずビックリしたのが、多くの部分を手作業で行っていることです!
噴霧乾燥したミルクが滞らないようにハンマーでタンクを叩き続ける方、ミルクを計量してひとつづつ缶に詰める方、その缶にフタをする方、ラベルを巻く方、ミルクに異常がないか検査する方、在庫管理、発送に至るまで、ほとんど人の手で行われているのです。

さらには万が一にもヒューマンエラーが無いよう、二重三重のチェックをしてくださっていることにも、とても安心できました。
放射線検査も、市販されている一般のミルクと同様に厳しく見てくださっています

明治さんが製造してくださる特殊ミルクは全部で21種類ありますが、1度に1種類しか作れず、ひとつのミルクを作り終えた後は、2日間かけて製造ラインを徹底的に洗浄してくださっているそうです。
きっと工場というものはベルトコンベアなどの機械であふれていて、かなりオートマチック化されているんだろうなと想像していたので、こんなにも愛情込めてひと缶ひと缶大切に作られていることに衝撃を受けました。
生産量が少ないため自動化が難しいことも、人の手で作られる理由のひとつだそうです。

私たちユーザーがミルクをつくって下さっている方たちにお会いする機会がなかったのと同じように、特殊ミルクをつくって下さっている工場の皆さんも、今まで患者家族と接する機会は無かったとのことで、今回の交流をとても喜んでくださいました。
「お会いできて嬉しい」「お子さんの体調はどうですか」「ミルクはお役に立っていますか」と患者家族のことも気遣ってくださいました。

このミルクがなかったら患者さんがどんなに困るだろう…と、顔も見えない私たちのために、信念と誇りを持って作ってくださっているのです。

今まで以上の感謝の気持ちでいっぱいになりました。いろんなことをお伝えしたかったのに、私の口からやっと出た言葉は「あじがどぅございま……うぇっ」と声にならない涙声…(T△T)
製造して下さっている皆さんの私たちに対するあたたかい気持ち……それを知った感動と感謝の想いで……最後まで言葉になりませんでした。

もうひとつ、メーカーさんの想いがあらわれているエピソードがあります。
実は、特殊ミルクには使用原材料を精製する段階で、意図せずに失われてしまう成分があるそうです。
そのひとつが「ビオチン」(注1)なのですが、ビオチンを製品に添加することは国の規定で許可されていなかったそうです。

息子は2歳の頃まで身体中ひどい皮膚炎に悩まされ、あちこち血が滲んで真っ赤に熱をもっていました。
髪の毛や眉毛もほとんど生えず、大学病院で検査しても、原因不明と言われました。
一時期は代謝異常症のこと以上に、重症の皮膚炎や毛が生えないことに悩んでいたほどです。

このような症状はビオチンが足りていないことが原因でした!

現在は、カルニチンとビオチンの添加が一部の特殊ミルクから始まっているそうです。
これは、明治さんの特殊ミルク事業部の皆さまが、ユーザーのためにと厚労省に何度も特別許可を願い出てくださって
やっと実現したのです。国の規定を覆すことはとても大変だったと聞いています。

私たちが無償でいただいている特殊ミルクは、これほどの手間ひまと莫大なコスト、そしてメーカーの皆さまの心からの応援と思いやりの気持ちで作られていることを、あらためて痛感しました。

「どんなに大変でも、必要としてくれる患者さんたちがいる限り、私たちは特殊ミルクを作り続けたい」とおっしゃってくださったことに心を打たれました。
実際、息子にとっては「ミルク=命の源」といっても大げさではありません。このミルクがなかったら……と考えると、とても不安になります。

この工場見学は、私に大切な方たちの存在を気づかせてくれた、貴重な体験となりました。
そして息子の毎日のミルクタイムは、応援してくださっている方たちへの感謝の時間となっています。

ミルクメーカーの皆さま、いつも本当にありがとうございます!これからも大切に使わせていただきます!!

(注1:ビオチンはビタミンB群の1種。糖新生, 脂肪酸の合成,アミノ酸の代謝に関与しています。
また、ビオチンは皮膚炎予防因子として発見された経緯があり,栄養機能表示でも『ビオチンは,皮膚や粘膜の健康維持を助ける栄養素です』と言われるように、皮膚形成には重要な物質です。

ビオチンが不足すると,皮膚形成に影響が出るため,皮膚炎や湿疹,脱毛,白髪といった症状が出てくると言われています。
ビオチンは,穀類,種実類,鶏卵に多く含まれ,特に卵黄やレバーはビオチン含量の豊富な食品です。(出典:財団法人日本食品分析センター))

有馬さん!読んでいる私たちも、有馬さんと一緒にその場にいたような気持ちになりました。ありがとうございます!!



【写真の説明】
❶ハンマーでタンクを叩きながら、噴霧乾燥され落ちてくるミルクを袋に充填しています
❷ミルク缶に1枚づつラベルを巻いていきます。鮮やかな手さばき!
❸大島参与、髙橋工場長、glut1異常症患者会、ひだまりたんぽぽの皆で記念撮影
❹ミルクを缶に詰める作業の後の清掃をしています
❺放射線検査の様子です。品質に問題がないか何重にもチェックしています
ミルク利用者の顔写真とコメントを並べたポートレートをお贈りましたところ、とても喜んでくださいました


「株式会社明治」さんHP関連記事:
http://www.meiji.co.jp/csr/society/s_milk/s_milk02.html