38.5兆円 年々高騰する医療費 その元凶とは | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

先日、厚生労働省の発表で平成23年度に使われた医療費が 38.5兆円 と、

5年連続で最多亢進していると発表されました。


経済諮問会議などでは、

後発薬の使用を半強制化するなど、医療費抑制の策がいろいろと練られているようですが、


このままではすぐに医療費は40兆円をも超えるでしょう。


そもそもの国の税収入が4,50兆円しかないのですから、

それとほとんど同額を医療費に使っている現状はあきらかに、おかしな状況です。


これでは国の財政が黒字化するなど、

ありえません。


何故こんなことになっているかの最大の理由はそもそも、

国民皆保険制度にあります


ただ、この制度自体が悪いわけではありません。

国民皆保険制度は「病気になった人の治療費を国民全員で負担する」という、

原理的には極めてすばらしい考え方に基づいています。


問題なのは、

その医療費を使っている実感が医療者側にも患者側にも、

誰しも欠如していることです。


極端に言えば、

「どんだけ医療費を使っても僕らの懐が痛むわけじゃないしねー」


という考え方がに根付いているのが問題の根幹です。


そして、その考え方を後押ししているバックグラウンドにあるものが、

誰もが子供の頃から教えられる 「命より尊いものはない」 という道徳です。


この道徳、もちろん正しい考え方なのですが、

この道徳に加えてもう一つの要素が加わると、たちまちおかしな事になります。


それは何か?


「患者が希望しているのだから」 という言葉に代表される、

医療はサービスという考え方に基づいた理念です。


医療はサービス、患者が希望している、命より尊いものはない、どんな治療をしてどれだけ医療費がかかっても誰も直接自分の懐が痛むわけではない、


これらの要素が揃うと、

本来であれば不要なはずの治療や手術が行われて医療費が浪費されたとしても何も不思議ではない、


そうは思いませんか?


そもそも、

患者は医療や医学のプロフェッショナルではありません。


何が有効で何が正しい治療かを判断できる知識を一般人はまず持ち得ないのです。


その患者に”バイアスのかかった説明”が医師からなされれば、

当然、自己の意思の弱い患者の場合、患者の希望は操作されうるのは事実です。


また、一方で自己意思の強い患者の場合、いくら医師が事実に基づいた説明を行ったとしても、

”患者と家族の強い希望”ということで患者側の希望通りの治療に押し切られることもあります。


こういった事があるので、例として、

前者では 「手術やりたがりの外科医によって不必要な手術が行われる」

後者では 「患者の誤解に基づいた希望によって不必要な治療が行われる」


というようなことが起こりうるのです。


こういった治療の中には、

手術や抗がん剤など、数十万、数百万、時には一千万を超えるような治療がありますし、


そのような特殊な治療でなくても、このようなことは日常診療にも溢れています。


現場で働く医師としての感覚的には、

「この治療、ほんとに必要あるのかね?」 と思うような物が 少なくとも2,3割はあります。


これらはまず、

ムダな医療費だと僕は思います。


医療費高騰の原因として、

医療の高度化や高齢化が挙げられていますが、


国民全員の負担となる保険で支払われるべきではない、本来であれば不要な医療。

そういった医療費がなくなれば、大きく現状は変わってくるはずです。


必要なのは、

「患者を真に助ける医療のみを保険対象とする」という政策が、

経済性と人道的な観点から行われることでしょう。


次回は、この話に続いて、

「手術適応」というものについて書きます。



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