脳の大きさと、頭のよさ | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

今回は脳の大きさと頭のよさについて、です。




やっぱり、


頭が大きければ、脳も大きいわけですし、




知能も高い!




と思いますよね。




これが正しいことなのか?


ということを今回は書こうと思います。




脳の大きさと、知能のレベルを考える時に、


よくたとえられるのが象とネズミの話です。




象のほうが圧倒的にネズミより脳が大きく、


重量でいえば実に500万倍にもなります。




そうすると500万倍、象の方がネズミより賢いのか??




ということになりますが、


そうでないことは明らかですよね。




この例は脳の大きさが単純に知能と比例しないということを表しています。




しかし、人間はネズミより脳が大きく、賢いということを考えると、


脳の大きさはやはり知能に影響すると考えたくなります。




そこで、


脳の大きさと知能を考えたときに、




単純に脳の重さで比べるのではなく、


体重のうちの脳の重さの割合を比べたらどうでしょうか?




これを熱心に調べた生物学者の先人で、




脳の大きさは体重の3/4乗に比例するという関連性を見つけた人がいます。




そして、


この体重から計算される脳の重さと、どの程度その生き物の脳の重さが離れているかで、




その種族の知能が推定できるというのです。




この計算をした場合、


ネズミや象はいずれも体重からの推定値とほぼ同じくらいという結果がでます。




一方で イルカ、サルなどの哺乳類は体重よりも脳の重さが重く、




霊長類で最も脳が進化したとされるヒトの場合は、


なんと体重からの推定値の7.5倍もの脳の重さとなるようです。




次点はバンドウイルカの5.3倍、


サルは4.8倍のようです。




やはりこういった意味では、


脳の大きさは知能に影響するのでしょう。




体重が重くなればなるほど脳が重くならざるをえないというのは、


どうやら体が大きくなればなるほど、それだけ体の維持のための脳の仕事量も増えるからだそうです。




また、


脳は大きくなればなるほど、


脳内の神経回路の長さも長くなってしまうので、




それだけ神経伝達にかかる速度が遅くなります。




神経伝達のスピード自体はイオンチャネルを使ったシステムで、ある程度一定なので、


基本的には長ければ長いほど時間がかかるのです。




大きくなることによるデメリットといえます。




また、大きくなればなるほど、


エネルギーも多量に使うようになります。




そういった理由もあって、


大きくなればなるほど無駄も多くなりデメリットもあるのですが、




ヒトの場合はそれでも体の維持に必要な以上に脳の大きさがあるので知能が高いということなんでしょう。




あとは、


霊長類の場合、個々の神経細胞が体の大きさ割には他の生物よりも小さく、




さらに中身が詰まっているということが知能の高い理由のようです。




しかし、


先ほどの神経伝達と距離の話であったり、


エネルギーの問題などもあって、




これ以上劇的に、


種の違いを生むくらい脳の性能が今後進化によって上がるか?




というと、


現在のヒトの脳はかなり物理的限界に近付きつつあるという考えがあるようです。




小説「ジェノサイド」に書いてあったような、


劇的に知能の進化した新人類は生まれないのでしょうか。



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