脳に出来た腫瘍の生検術 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

生検という言葉を聞いた事がありますか?

生検自体は、
脳外科に限った話ではなく、

腫瘍を扱う科であればどこでも行います。

これだけ画像診断と採血などの化学検査の発展しつつある医療においても、
結局診断をつけるには実物が必要になる事が多いです。

腫瘍の実物を持ってきて、
顕微鏡で見る!


というのが昔からのゴールデンスタンダードなのです。

顕微鏡で腫瘍を見て、
診断をつけるのは病理の医者です。

病理学の医者というと、
みなさんほとんど馴染みがないかもしれません。

一般的には表にでない仕事かな?とは思います。

しかし、
この仕事、

医療の中では相当重要なポジションを占めます。

というのも、
今も昔も結局診断をつけるのはこの病理学の先生の「眼」なのです。

以前にテレビのスーパードクター特集で、
救急の先生が診断をつけるのを「神の眼」とか言ってましたけれど、

こっちも負けず劣らず、
プロフェッショナルの仕事です。

経験と知識を元に、
病理の先生が自分の眼で顕微鏡を見て、

診断をつけます。

病理の先生が「悪性腫瘍」と言えば、悪性腫瘍になりますし、
「良性の腫瘍」と言えば良性腫瘍になります。

まさに、鶴の一声なのです。

この診断によって、
治療方針も、なにもかもが決まってしまいます。

特に、
我々外科医は「術中迅速診断」をよく行います。

これは手術中に摘出した検体を、
即病理検査に回して、診断をつけてもらうものです。

だいたい30分もしないで病理の先生の返事が返ってきますが、
この返答次第でその後の手術の方針が変わることもあります。

たいていは十分に予測をつけて手術に入るので、
大きく予想とずれることはそうありませんが、

時にはなんだか分からない腫瘍に対して手術をするということもあります。

こういうときは本当に病理診断次第で、
その後の全てが変わるんです。

医者のドラマはいくらでもありますが、
今まで病理医がクローズアップされたことはほとんどないように思います。

「白い巨塔」のドラマの中で、
とても清廉潔白で印象的な病理学の教授が出てきましたが、

他に病理の医者が出てきた印象ってほとんどないですよね。

さて、
ここまで、病理医と病理検査の重要性ばかり書いてきましたが、

脳外科でも生検手術はしばしば行います。

といっても、
もちろんこれも我々は検体を取ってくるだけで、

肝心の診断をつけるのは病理の先生なのですけれども。

ただ、
体の他の部分と違って、

脳というのは生検を行うのも大変な場所です。
脳の手術となるので、それなりにリスクも高いです。

生検が必要になるということは、
脳になんらかの腫瘍が出来た場合で、

しかも画像診断や採血などの検査で正体がつかめない場合です。

しかし、
診断をつけるために脳の手術っていうのも、

あまりに大変だと思いますよね。

「そんな診断をつけるためだけに頭の手術なんて受けたくない」

というのが普通だと思います。

おそらく、
もっと様々な検査が進歩すれば、この生検はいずれ減っていくかもしれません。

ただ、現時点ではこの生検は未だに不可欠なのです。

さて、

今回は病理検査の重要性をメインとした記事になりましたが、
次回は具体的に脳の生検について書こうと思います。



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