「てんかん」と「けいれん」の違い、分かりますか? | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

今回から何回かてんかんという病気について書こうと思います。

漢字だと
「癲癇」となりますが、なかなかこの字は書けませんよね。

さて、

みなさんはてんかんという病気を知っていますか??

多分、
聞いた事はある方が多いと思います。

もしかするとこのブログに興味を持っている方であれば、
ほとんどの方が知っているかもしれません。

それほど、
脳外科とてんかんという病気は関連の強い病気なのです。

てんかんと言えば、
一番イメージが強いのは、

全身をガタガタ震わせながら痙攣を起こして意識を失うことでしょうか?

実際に見た事があれば、
典型的な発作の場合、一生忘れないでしょう。

それくらい衝撃的な状態です。

昔はその特異な症状からか、

呪われた、
憑物につかれた、

などとある種の心霊現象のように思われたこともあったようです。

確かに、
てんかんという病気を知らずにその発作を見てしまうと、そう感じてもおかしくありません。

実は僕自身、
病院以外の公共の場で発作を起こした方を見た事がありますが、

周囲の人の驚きは並の物ではありませんでした。

ちなみに、

歴史上の偉人でも、てんかんを持っていた人は結構います。

たとえば、
ローマのカエサル。

ナポレオン。


さらにはジャンヌダルク。

このように、
誰でも知っているような歴史上の超有名人もてんかん持ちであったと言われています。

古くからよく知られた病気なんですね。

さて、
「てんかん」は典型的には、

意識の消失と全身の筋肉のこわばりといった「けいれん」を起こす病気です。

しかし、

「てんかん」という病気であることと、

「けいれん」を起こすということは意味が実は違います。

このあたりは最も勘違いが多いところです。

というのも、
まず、「けいれん」というのは症状のことですが、

「てんかん」は病名です。

つまり、
「けいれん」は「てんかん」という病気以外でも様々な理由で起きるのです。

血糖の異常や電解質の異常といった原因などでも起きますし、
特に脳そのものが原因で起きるものとはかぎりません。

様々な理由でその時々に脳に悪影響が及べば、
「けいれん」は起きうるのです。

一方で、
「てんかん」にはちゃんと定義があります。

一つは、
原因が脳にあることです。

たとえば脳損傷のあとであったり、
脳腫瘍のせいであったりと、目に見えるような原因が明らかな物を、

「症候性てんかん」といい、

そういった原因が明らかでないものを、

「真性てんかん」といいます。

どんどんと今後いろいろな検査が進化すれば、
原因不明の「真性てんかん」はなくなり、全て「症候性てんかん」となる日もあるかもしれません。

両方とも脳外科とのかかわりは深いのですが、
「真性てんかん」を手術で治療するような所は本当に専門的な施設です。

よって、
一般的に脳外科とかかわりが強いのは「症候性てんかん」の方なんですね。

それは、脳外科が脳の損傷と最も関わりが深い科だからです。

さて、
話を戻しててんかんの定義ですが、

もう一つは「反復性」であることです。

つまり、一回だけ「けいれん」の発作があったとしても、
それだけでは「てんかん」とはなりません。

たとえば頭部外傷で、脳にのダメージが原因で受傷直後「けいれん」が起きたとしても、
その後全く発作がなければ「てんかん」ではないのです。

繰り返して初めて、「てんかん」と診断されることになります。


今回はとりあえず、

「てんかん」と「けいれん」の違いから、
「てんかん」の定義なんかを書いてきました。

なんとなく、てんかんがどういったものか、
理解するのに役立ったでしょうか?

次回はその「てんかん」がどういった原因で起きるのか?

「脳外科」と関わりの深い「てんかん」について書いていきます。


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