点滴の正体 続き ~ニンニク注射の正体などなど 再編版 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

またこの点滴シリーズの続きになります。


これまでに、「体調不良時の点滴は効果があるのか?」


などを書いてきました。




興味のある方は前回、前々回を参考にしてください。




今回は、前回の続きということで、


基本的な点滴に加える物について書きます。




というのも、


前回までで点滴の基本的な効果を書いたものの、


「それでも他にもビタミンとかいろいろ入れられるし、そういう効果もあるでしょ?」




という意見も実際にあるからです。


驚いたことに、


近年「点滴バー」なんてサービスもあるようですしね。。




事実、


点滴にはさまざまな物を付加することができます。




現場では俗に「点滴のおかず」とか言ったりもします。


個人的にはあんまり好きな言い方ではないですが、


このおかずには ビタミンだったりミネラルだったりカロリーだったりアミノ酸だったり が含まれます。




実際に、


入院患者さんの場合でも口から食事が摂れない時、





また、


腸管を休ませなければいけないときなどは、


ただの体液補充だけの点滴ではなくて、いろいろな栄養素を調合します。




ビタミンは基本として、長期に及ぶ場合は、


亜鉛やマンガンとかの微量元素だったり、いろんな物を点滴で補充します。




ただ、


カロリーだとかアミノ酸だとかを入れようとすると、


点滴が濃くなりすぎてしまい、細い血管をダメにしてしまうので、


以前の記事に書いたような太い中心静脈へのCVカテーテルが必要となります。




このように、点滴だけでも、


体に必要なものをとりあえず補充させることはできます。




もちろん腸から吸収するのが免疫などの面でも一番なのですが。




栄養補給目的の点滴で、


なんとなく一般的に馴染みが深いのは かの ニンニク注射でしょう。




スポーツ選手なんかでやっている方がいたり、


芸能人の方なんかでも疲れたときに点滴する人がいるのだとか。




時にはハードワークなビジネスマンの中にも、ニンニク注射の愛好家がいるようです。


しかし、


このニンニク注射。




内容はほとんど単なるビタミンです。




もっと、


細かくいうとビタミンB1という成分を若干改良したものです。




製品名で言うと、アリナミンFという薬です。




ビタミンB1はチアミンとも言いますが、


このアリナミンFの正体はフルスルチアミンといって、


ビタミンB1をより体内で長持ちにして、吸収をよくしたものです。




えっ?


ニンニクじゃないの??


と思われる方もいるかもしれません。




しかしこのアリナミンF、


医療関係者なら皆嗅いだことがあるかもしれませんが、


強烈なニンニク風の匂いがします。




いかにも効きそうな匂いなんです。




それもそのはず。


実はニンニクに含まれている栄養素もこのビタミンB1なのです。


ニンニクの中ではアリシンという成分が、ビタミンB1とくっついていてアリチアミンという物になっています。




このアリシンが強烈な匂いを持つようなんですが、




薬のアリナミンFはアリチアミンの匂いが少なくなるように合成されたものらしいのです。




だからアリナミンFも少し匂いが弱くなっているとはいえ、


同じような強烈なニンニクの匂いがするのですね。




なんだか小難しい物の名前が沢山出てきましたが、


結局、


ニンニク注射の正体は本物のニンニクではなく、


アリナミンFという薬なわけです。




そして結局の中身はビタミンB1ということなんです。




ビタミンB1は欠乏すると脚気という病気をおこし、


心不全や末梢神経不全を起こします。


また、頭にはウェルニッケ脳症という病気も起こします。





以前は栄養失調でこういう病気になる方もいたようですが、


食べ物の豊富な現代の日本では一般人でこの病気の方はほとんどいません。




カップラーメンなんかにもこのビタミンB1が入っているくらいですから。


なので、


現場でもアリナミンFが必要となるのは、


たいていはアルコール中毒者だったり、路上生活者です。




しっかり豚肉だとか豆だとかをとっていれば、


不足することは少ないでしょう。




このビタミンB1は確かに免疫を高めたり、疲労回復に必要な物質です。




しかし、


なんのことはないです。




点滴じゃなくて日常生活で口から食べてとればいいのです。




点滴で急速に補充が必要なのは上で書いたような重度の栄養失調の方に限られる気がします。




それでも、


点滴でやったほうがてっとりばやいんじゃないか?




と思われる方はいるかもしれません。




確かに、点滴でアリナミンFを100mgも入れれば急速に血中濃度が上がります。




しかし、

このアリナミンFの薬価を考えればバカらしくなります。




この薬、100mgで131円なのです




原価はたったの131円です。




それを病院でやったらどうなるのでしょうか?


ビタミン補給として保険医療でおこなったとしても、


診察代、処置代などいろいろかさんで数千円くらいにはなりそうです。




もし、


巷の自由診療のサービスでこのニンニク注射を受けると、


当然保険外となるので、もっと高いんだろうと思います。




話によれば、1万円近くとるようなところもあるみたいです




だったらビタミンの錠剤でも飲めばいいのに、、、と思ってしまいます。


もしくは、


普通にコンビにでアリナミンを買って飲んでもいいのでは?


とも思います。




結局のところ、


どんな栄養素も口からとれるのですから、


なにもお金を払って点滴する必要はないでしょう。




必要なのは一刻をあらそう緊急の場合であって、


日本で病院に通うような一般の方がそういった栄養失調となっていることはまず、ないと思います。




それでも口から栄養が取れる人にこういった治療を積極的に行うサービスがあるのは、


多分、利益のためです。




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