今回は、点滴信仰について何回か書こうかと思います。
点滴信仰という言葉は今、僕が作った言葉ですので、
あまり気にしないでください。
「なんだか体調が悪いなぁ、点滴してもらえばとりあえずよくなるんじゃないか?」
というような考えを表したくて、
点滴信仰という言葉にしました。
点滴信仰のある人を点滴信者と言ってもいいかもしれません。
救急外来なんかで、風邪の診察をしていたりすると、
かならず何人かに1人はいます。
「先生、なんか、点滴だけしてくれませんかね?そうすれば良くなるように思います」
とおっしゃる方が。
僕はたいていの場合、
「口から水分がとれれば、点滴は必要ありませんよ」
と答えます。
そう言うと患者さんは結構不満な顔をされることが多いです。
なので、どうしてもと言われれば点滴をすることはありますけれど、
基本的にはお断りしてしまいます。
では、
果たして点滴をすれば本当に体調は良くなるのか??
ということになります。
僕の考えでは、
状況によってはイエスですが、大抵の場合はノーであると思います。
なんだかあたりまえの事を言ってますね。
そもそも、
普段使われる点滴の成分を考えると、
点滴がどういったものなのかが分かります。
点滴はいくつかの種類に分かれます。
ある程度濃い特殊な点滴を除いては、どの点滴も基本的には、
溶けている物の合計、ある意味での濃さが体液と同じようになっています。
これは、一言で言うと、浸透圧が同じということになります。
なぜ浸透圧が同じでなければいけないか?
というと、それは細胞を障害しないためです。
ちなみに、濃い特殊な点滴というのは、
アミノ酸や糖が沢山入っていて栄養のある高カロリー輸液といわれる部類のものですが、
それはとりあえず置いておきましょう。
最も真水に近い物からいくと、
5%ブドウ糖液というものがあります。 その名の通り、真水に5%のブドウ糖が溶けているだけのものです。
そして、ヒトの体液に似せて作っているものの代表は、
生理食塩水です。これは具体的には0.9%のただの食塩水です。
あとはこの二つのハーフのようなものだとか、1:2くらいのものだったり、
カリウムが入っていたりいなかったり、カロリーとして糖分が入っているかいないか、
などのブレンドの違いがあるだけです。
体の中に入ってしまうと糖はすぐに分解されてしまうので、
5%ブドウ糖に近いものほど、体の中ではただの真水に近くなります。
要は、薄い点滴なんです。
逆に生理食塩水に近いものは、糖に浸透圧を頼っていないので体の中で濃いままでいるということです。
通常、
とりあえず点滴してほしいと言う患者さんには、
このいずれかを点滴するだけです。
では、それによって得られる効果はなんでしょうか?
簡単です。
体液が増えるということです。
ただ、体液といってもいくつかの種類があります。
大きく3つに分けると、
血液と、細胞の外にある細胞外液と、細胞の中にある細胞内液です。
水分量としては、血液が最も量が少なくて、細胞外液、細胞内液がメインです。
5%ブドウ糖液は体内に入ると、
ほとんど真水になってしまうので、浸透圧のない薄い真水は、
体の隅々にまで染みて広がってしまいます。
つまり、ほとんどが細胞内液や細胞外液にしみこんでしまって、
血管の中にはほとんど残りません。
一方、
生理食塩水は濃いので、細胞の中には入りません。
そのため、血管と細胞外に分布しますが、
量として3分の一くらいは血管の中に残ります。
ここから分かることは何か、
というと、
頭を打ってダラダラと血を流してしまって、血液が足らなくてマズイ!
という状態の時に、
頑張って5%ブドウ糖液を入れてもほとんどなんにもならんということです。
そういうとき必要なのは比較的血管の中にのこって血液の量を増やしてくれる生理食塩水なわけです。
基本的な点滴の分類について書きましたが、
この辺りで元の話に戻ってみます。
普通の点滴では体液を増やすことが主な目的であるとしました。
では、
体調が悪いときに点滴で体液を増やしてどういうメリットがあるか?
ということになります。
まず、
上の出血の例と同じように、
体調不良時でも5%ブドウ糖液を点滴することによる効果はあまりないように思います。
それでは、
どのような理由で体調がわるくて、
そういった時にどういったものを点滴すると効果がありそうでしょうか?
ちょっと長くなってきたので
その辺りの僕の考えについては、次回に続くことにします。
僕の理解が間違っている可能性もあります。
ここまでで、
「おかしくないか?」と思う方は是非教えてください。
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