最難関、巨大脳動脈瘤手術  未破裂脳動脈瘤について⑥ 再編版 | ある脳外科医のぼやき

ある脳外科医のぼやき

脳や脳外科にまつわる話や、内側から見た日本の医療の現状をぼやきます。独断と偏見に満ちているかもしれませんが、病院に通っている人、これから医療の世界に入る人、ここに書いてある知識が多少なりと参考になればと思います。
*旧題「ある脳外科医のダークなぼやき」

さてさて、


これまで、未破裂脳動脈瘤の治療の話を続けてきました。




最後に、巨大脳動脈瘤の話をしようと思います。




といっても、その治療戦略は完全にオーダーメイドというか、


物によってさまざまに変わってくるので、大まかな話になります。




脳外科にはさまざまな手術がありますが、


その難易度からいって巨大脳動脈瘤は最難関の部類に入ります。




ところで、


脳外科で他に最難関の物はというと、


かつて no mans land と呼ばれていた頭蓋底の手術でしょう。




頭蓋底というのは、文字の表すとおり、


頭蓋の底です。




脳幹などの重要構造物がめじろ押しの場所で、


なおかつ最深部にあるため、


アプローチは困難を極めます。




頭蓋底の腫瘍の場合など、


その腫瘍に到達するまでが大変なのです。




頭の横の、耳の近くの骨をドリルで削っていって、などなど、


一般の方からすれば想像もつかないような場所から脳の最深部にアプローチします。




そして、腫瘍に到達してからも、


周囲の重要な神経や血管を傷つけると致命的な障害となるため、細心の注意を要します。




基本的には大学などの専門施設でしか手に負えないような部類の手術なわけです。




頭蓋底にスムーズにアプローチできる脳外科医はおそらく数えるほどしかいないでしょうし、


その難易度から考えて頭蓋底外科医の技術は紛れもなく 神の手 と言っていいレベルでしょう。




さて、やや方向性は違いますが、


その頭蓋底手術と同じくらいの技術を要すると考えられるのがこの巨大脳動脈瘤の手術です。




あまり、巨大脳動脈瘤とばかりいってもイメージがわかないと思います。


具体的には2.5センチ以上のものです。





画像でいくと↓のようなものになります。




ある脳外科医のダークなぼやき



また、ネットで福井大学医学部さんから借りてきました。




化け物のような動脈瘤がすぐにわかると思います。




この巨大動脈瘤の自然経過は極めて不良です。




1/3はクモ膜下出血、1/3は圧排による神経症状、1/3は瘤内にできた血栓による脳梗塞




で発症します。


破裂率も高く、年間10%以上とも言われています。




普通の動脈瘤を小型爆弾とすると、


この巨大動脈瘤は大型爆弾です。




破裂すると、まず致命的。しかし、除去は極めて困難です。





まず、


コイルでの治療はほぼ、無理です。




あれだけの体積をうまくコイルでつめることはできませんし、


動脈瘤から出ていることの多い枝の温存ができません。




コイルをやったとしても、


その後に動脈瘤が拡大し、結局破裂する、なんてケースが多いです。




治療はやはり、手術です。





しかし、


普通のクリッピングの手術とは異なり、さまざまな技を組み合わせる必要があります。




クリッピングのみで治療できるものもありますが、


普通の動脈瘤のようにクリップできるものは稀です。




まさに、ある意味で


脳外科医の奥義を尽くすような手術になります。




その奥義の一つが、脳血行再建と呼ばれる技術です。




この技術もやはり、使いこなせる人間は


最近ありふれた言葉で言えば、神の手 といっていいものだと思います。




また、ある意味とてもスリリングな技術で、見る者を魅了する技術であるとも思います。





次回に続きます。


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