信濃諏訪を訪ねて その20 「試したらバッテン!縄文時代の復原住居」
考古学の分野の1つに実験考古学というものがあります。
実験考古学では、出土した遺物や遺構の持つ性質を探るため、その作製方法や使用方法を復元し、実際にそれを使って本当に機能するかどうかを確かめたり、考古学上の仮説を実証するために行われるものです。
つまり、発掘で得られた「物(目に見える情報)」から、「精神や心(目に見えない行動や時間など)」を想定し、当時の生活を復元することで、太古の昔が身近に感じられる考古学の1分野で、私はとても興味を持っています。
前回のブログで、縄文時代の復原住居は入母屋造だと書きましたが、それは古代の資料や中世の家屋を参考にしたもので、あくまで仮説です。
実験考古学では、それが本当に当時の技術で作られ、かつ住むことが可能かどうかを確かめたりします。
真冬、復原住居に宿泊実験した事例がありますが、どんでもない寒さに見舞われたそうです。
外気が氷点下となり、寒いからということで薪をどんどん焚いたそうですが、入母屋造の上部に開いた大きな換気口から暖気が逃げ、変わりに外から冷気が流れ込んだそうです。
薪を焚けば焚くほどに冷気が入ってくるとなれば、寒冷地では生活できません。
暖地であれば快適に過ごしたり、タタラ場では作業しやすくなるはずです。
結局、宿泊実験された方は、上部の換気口を塞いで対処したとのことです。
そうなると、入母屋造である必要性は低くなります。
次に、復原された入母屋造の屋根の素材を考えてみると、面白いことが分かります。
素材はチガヤ(茅)で、イネ科でススキなどの仲間です。
ススキで手を切った経験をお持ちの方もいらっしゃるかも知れませんが、イネ科はケイ素(元素記号Si)を多く含む植物で、鎧をまとったような丈夫さを備えています。
そのために、素手で茎などを千切ろうとすると、切り傷を負うことになるのです。
ここになって、チガヤを刈り取る鎌のような道具が必要であることに気付きますが、当然ながら縄文時代には鉄器は無かったとされていますので、それ以外の素材で作られた鎌のような機能を持つ道具を遺跡から掘り出する必要がありますが、あいにくまだ見つかっていません。
ちなみに、黒曜石などで鏃(やじり)がつくられていることから、黒曜石をナイフのように加工すれば、鎌のように用いることができるのではないか…と、そのくらいのことであれば私でも思いつきます(笑)。
思いついたことは実験考古学などで試される対象となるわけです。
カミソリの刃のような石器でチガヤを1本ずつ刈り取ることはできるようですが、まとめて刈り取ることは不可能だったようです。
これは、専門家のご意見なのですが、1本ずつ刈り取るような作業を繰り返して茅葺の屋根を作るのは、現実的に不可能とのことです。
どうやら、下の画像のように与助尾根遺跡に復原されている縄文時代の住居は、豪華な茅葺の入母屋造ではなさそうです。
【与助尾根遺跡に復原された入母屋造の住居】
それでは、この遺跡にはどのような住居が建築されていたのか…。
逆に言えば、この当時、どのような道具と技術があって、それを駆使することでどこまで良い家屋が作れるものなのか…。
一万年にわたる長い縄文時代ですので、試行錯誤が繰り返され、もっとも安全で少しでも快適に過ごせる建築スタイルが出来上がっていたはずです。
古代エジプトの神殿建築や中世ヨーロッパに突如現れたゴシック建築もさることながら、縄文時代の住居の謎にも興味津々です!!
つづく
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