先日から書いている「需給ギャップ」について、さらに進めていきたい。


 需要が少ない市場に、供給サイドの拡大を行えば、当然のことながら競争過多になり、その結果として製品やサービスの価格は低下するであろう。

 価格破壊である。まさに現在の日本において進行していることの正体だろう。

 供給サイドが乏しければ、必要なモノやサービスを求める人々の需要が大きけれは、多少の価格が高くても購入せざるをえない。ゆえに価格は上昇する。


 大切なことは、ある程度の痛みを覚悟で、現在の過剰な供給を縮小させていくことだろう。

 それにもかかわらず、国も国民も、広くは社会までも供給サイドの拡大をとめようとしない。

 「起業」の促進なんていうのもそうだし、広義のいみで「一億総活躍社会」なんていうのも同様だ。


 確かに技術革新や社会改革によって、新たな需要が生まれるかもしれない。その期待そのものを否定するものではないが、よほどのことではないと新しい需要が大きく生まれるものではない。

 自動運転の車が開発されたとか、リニアモーターカーで東京と大阪の移動時間が短縮されたとか、その程度のことでは新しい需要などは生まれないだろう。

 「10歳以上若返る医療革新」とか「人工知能を具えたロボット」とかでもないかぎり、人々が新たに無理をしてまでお金を支払おうという需要は生まれないのではないか。


 ニッチの市場を開拓するという話も無駄だ。誰もが気づかないようなニッチな需要は、ある程度の期間はうまくいくだろうが、時間経過とともに新たに多くの資本が参入して、結局は競争過剰の状態に陥ってしまい、その市場でも価格は低下していくだろう。


 こんな状況では、誰も(どの企業も)リスクを取って、新しく事業を起こそうなどとは思わないだろう。


 この話を読んでいて、なおかつピンとこない方々(なんせ現在でも大多数の日本人は需要の拡大にこそ希望を持っているのであるから、、)は、街に繰り出してみればよい。

 いかに多くの店舗が回転率速く、出店と閉店を繰り返しているか、じっくりと観察するがよい。

 繁華街など、多くの居酒屋の店員がストリートに繰り出して客を呼び込んでいる。そもそも呼び込みのようなキャッチセールスは、怪しげな風俗店、でなくてもクラブやスナックのような呑み屋というのが定番だったのが、現在は普通の居酒屋が多くキャッチに精を出している。

 それだけ競争過剰なのだ。居酒屋の店舗数が、需要となるお客の総数を上回っているのだ。

 「東京一人勝ち」と言われる東京の街、しかも新宿の街でさえこのありさまなのだから、日本全体の状況は押して図るべし。


 そして少子化により日本の総人口は緩やかに減少していく。この事実は変えられないだろう。

 そろそろ、みんな考え方を改めた方が良いのではないだろうか。